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LNJ Logo 木下昌明の映画の部屋 : 『21世紀の資本』
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●木下昌明の映画の部屋 第266回 : ジャスティン・ペンバートン監督『21世紀の資本』

トマ・ピケティの『21世紀の資本』が映画に〜親よりも貧しくなる社会

 トマ・ピケティの著書『21世紀の資本』が、ジャスティン・ペンバートン監督によって映画になった。700余ページにおよぶこの経済書は世界中で300万部のベストセラーになったという。日本でも書店に山積みにされていたが、まさか映画になるなど信じられなかった。それも上映時間102分で、ピケティが主演・監修もして手ごろな作品に仕上げている。彼以外にも何人かの経済学者が登場し、劇映画も何本か挿入している。たとえば『レ・ミゼラブル』『怒りの葡萄(ぶどう)』『プライドと偏見』等々、時代のある典型を表すのに引用されている。

 といって、この映画、人間が主人公なのではない。「資本」が主人公なのだ。特に資本が本領を発揮する18〜19世紀と、戦争の時代の20世紀に資本がどう変化していったか、スピーディーに描いている。歴史といえば人間が中心だったが、実は近現代史は資本の変遷であり、人間は資本の手ごまなのだと教えてくれる。

 トップシーンは、ベルリンの壁崩壊からはじまる。このときピケティは18歳で、ソ連や東欧を旅して、歴史は19世紀に逆戻りするのではないかと危惧したという。その時代を描いた映画のなかに、農民が飢え死ににしたとの報告を受けた貴族が「家賃も払わなかったのか」と憤慨するシーンが出てくる。ピケティはこの時代がいかに冷酷無残だったかを伝える。また、20世紀末の映画『ウォール街』では、投資家が「貪欲はいいこと、正しいこと」とスピーチして喝采をあびている。

 ピケティは「資本の収益率は経済成長率よりも高い」、このままでは持つものと持たざるものとの格差は広がるばかりで、「万人にとって悲惨な結果になる」と警告している。若い労働者は自営業者にさせられ、親よりも貧しくなる、と。

 若者が自転車で走り抜けるデリバリー(配達)のシーンをみて、身につまされた。この社会とどうたちむかうか、と彼は問うている。(『サンデー毎日』2020年3月22日号)

※3月20日より新宿シネマカリテほか全国順次公開


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