本文の先頭へ
アリの一言〜「慰安婦」日韓合意を追及するのは日本人の責任
Home 検索

「慰安婦」日韓合意を追及するのは日本人の責任

2020年06月08日 | 日本軍「慰安婦」・性奴隷問題

    
 韓国では、日本軍性奴隷(「慰安婦」)のサバイバーを永年支援してきた市民団体をめぐる問題が引き続き大きく取り上げられています。その根本は日本(政府・国民)の問題であることは先に書きましたが(5月16日のブログ参照)、日本メディアの報道の中には(たとえば6月4日のテレビ朝日系「大下容子のワイドスクランブル」)、「慰安婦」問題の「日韓合意」(2015年12月28日、以下「合意」)を正当化し、その視点から韓国の支援団体を非難する論調があります。

 とんでもないことです。このさい、「合意」とは何だったのか、その問題点をあらためて明らかにする必要があります。

 日本の岸田文雄外相と韓国の尹外交部長官が共同会見(写真左)で発表した「合意」は次のような内容でした。

 「韓国政府が元慰安婦の支援を目的とした財団を設立し、日本が資金(10億円―引用者)を一括で拠出し、名誉と尊厳回復、心の傷を癒す事業を行う」
 「今回の発表で、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する
 「日本政府は韓国政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える
 「韓国政府は日本政府が日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても適切に解決されるよう努力する」(外務省HPより)

 そもそもこの「合意」は公的文書にすらなっていません。安倍政権と韓国・朴槿恵政権の政治的談合の産物です(写真中)。

 その問題点を阿部浩己神奈川大教授(国際法)は国際法の視点からこう指摘しました。

 「今回の日韓の『合意・談合的手打ち』の決定的過誤は…両政府のあまりに性急で政治的は思惑によって事が進められたことだ。現代的な国際法の潮流では、『慰安婦』問題は、二国間の外交問題に収斂されるようなものではない。
 国際法にとっての日本軍『慰安婦』問題とは、人間の尊厳の無視であり、女性に対する暴力であり、人種差別が生み出した違法行為である。したがって、これを是正するということは、当事者に対する直接的な賠償とともに、人間の尊厳を大切にし、ジェンダーに対する差別を撤廃し、人種主義・植民地主義を廃絶する取り組みでなくてはならない」(在日本朝鮮人人権協会発行「人権と生活」2016年6月号、要約)

 日韓両政府の政治的思惑から、サバイバー本人を無視し、謝罪もなく、賠償でもないはした金で、「慰安婦」問題を「最終的かつ不可逆的に」なきものにしようとし、運動の象徴である「少女像」を撤去しようとした―それが「合意」の本質です。

 サバイバーの1人、金福童さんは「合意」に対し、こう怒りをぶつけました。

 「私たちはお金がほしくて(解決策を)求めているわけではない。(日本が)犯罪国家として罪を犯したことを認めよということだ。(少女像は)過去のつらい歴史を子孫に教えることで、再びそのようなことがないように建てたものなのに、なぜ撤去しろというのか、理解できない」(ハンギョレ新聞電子版、2015年12月27日付)

 韓国では「合意」に対しサバイバーや支援団体だけでなく広範な批判が噴出しました。そして朴槿恵政権から文在寅政権に替わり、「合意」の抜本的見直しが進んでいます。

 ところが日本では、安倍政権がいまも「合意」をタテに「慰安婦」問題をないものにしようとし、大手メディアは例外なく「合意」を評価して安倍政権を後押ししています。さらに韓国と決定的に違うのは、日本市民の多くが「合意」の存在すら知らず、関心を持つことさえしようとしていないことです。

 今回の韓国内の支援団体をめぐる動きの底流には、こうした日本(政府・メディア・市民)の無責任で理不尽な実態があることを私たちは銘記しなければなりません。
 問われているのは、「人間の尊厳・ジェンダー差別・人種主義・植民地主義」に対する日本人の姿勢です。


Created by sasaki. Last modified on 2020-06-08 07:32:43 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について