本文の先頭へ
LNJ Logo レイバーネットTV第151号 放送報告 : 水道民営化問題、東京美々卯争議を特集
Home 検索
 


●レイバーネットTV第151号 放送報告(2020年7月15日(水)放送)

お金がかかるから民営化 コロナだから閉店解雇 違うようで共通する時代の臭い

アーカイブ録画(1時間50分)

 今回の特集は、蛇口をひねればきれいな水が出るという当たり前のことが脅かされるかもしれない話。いま政府は何でも「民営化」をしようとしているが、それでいいのか。特に「水」という命に直接かかわるインフラを民間に委託するとは、どういうことなのか考えてみた。一方コロナ不況を理由に全店閉店、会社を整理して、従業員を解雇した労働争議の当事者に聞いた。(報告:笠原眞弓)

・司会は 北 健一・北穂さゆりコンビです。

<動画ニュース>

今回は2本。
.スプレイはいらない!自衛隊所有オスプレイの初配備に千葉県で市民が抗議
 千葉県木更津駐屯地に初めての自衛隊所有オスプレイが暫定配備されることになり、千葉県市民の配備反対の抗議行動が活発化した。7月4日の津田沼駅前の抗議行動、7月10日の岩国から飛んできたオスプレイを抗議行動で迎える人々の様子が伝えられた。

共謀罪が施行されてから3年。実際にどんな形で表れているのか、7月12日、新宿でリレートークがあった。京都大学の学生や職員組合が設置していた立て看板、関西生コンの労働争議弾圧、安倍のコロナ対策の真の目的は?「闘いと川柳」ということで参加したのは乱鬼龍さん。
(皆さんからの、特に地方や海外からの動画ニュースの投稿を待ってます)

◆ザ争議:うどんすき「東京美々卯」の「コロナ切り」

*動画ココカラ

 まず旗艦店舗の京橋店の周辺をウオッチング。入口には張り紙が。「昭和48年から営業を続けてきたが、コロナウイルスによる感染拡大と諸般の事情で…」と、閉店のお知らせが張ってある。近辺は再開発のラッシュで、そのうちこのあたりもという話に、何かが臭う。 

 「東京美々卯」の労働組合のメンバー3人は、それぞれ26年から32年勤続の各店長たち。看板商品の「うどんすき」など少し高級ではあっても、東京・日本橋界隈のサラリーマンたちには人気のお店だったとか。

 5月20日に急に閉店になった直接の原因はコロナと言っているが、お店の経理を見られる立場からは、無借金経営で急いで東京の6店舗全部を閉店する必要は感じなかったという。しかも閉店が決まる少し前から、組合つぶしを画策していたという。それでも裁判に訴えてまで頑張ろうとしたのは、こういう形で終わるのが悔しかったし、少しでも自分の育ってきた企業が成長するようにとの思いが、会社に届けばということからだという。

 ここで2冊の本が紹介された。1冊はうどんすきを考案した方(現代表の祖父)の「うどんすき物語」もう一冊はそのお子さんの戦後に苦労して再開させた「美々卯のこころ」。ためになる本だと、愛社心を披露してくれた。

 再開の署名活動をしているが、それに「最後に食べたいのは美々卯のうどんすきだ」などの言葉を添えてくれているという。
 視聴者に伝えたいこととして、「半世紀弱続けてきたが、伝統ある味を残せたら…」「関西のお出汁の味を東京に広げ、そういう文化を残していきたい」「お客様のためにも再開してくれたら」とこもごもに言う。
 この問題は、労使問題を超えて店は誰のものか、お客のものでもあるのでは、と結んだ。

◆休憩タイム

*動画ココカラ

 ジョニーHさんの歌は、特集のためにオリジナルソング「私の人生を盗まないでね」。水は命と歌い上げる。続いて、乱鬼龍さんの川柳は「民営化水道うまい汁に化け」。

◆特集 : 水に流せない水道の話

*動画ココカラ

 スタジオには、ゲストに村上彰一さん(全日本水道労働組合 書記長)と内田聖子さん(アジア太平洋資料センター共同代表)を迎え、久しぶりの土屋トカチさんが進行だ。土屋さんは、水道のDVD『どうする?日本の水道』(アジア太平洋資料センター制作)の監督でもある。今回はその作品の中から映像を一部拝借した。

 たまたま九州地方の大雨による災害と重なり、災害で大事なのは「命の水」の確保と話し始める。今回の球磨川の被害はコロナ対策もあり、九州地方内だけでの対応になるため、大変だとか。

◇日本の水道行政は公衆衛生の観点からはじまった

 最初に日本の水道の歴史を振り返る。1887年、外国からの伝染病を防ぐために港湾都市の横浜からはじまり、徐々に全国に広がった。1890年には水道条例が公布され、今でいう自治体が経営することになり普及した。

◇憲法25条の生存権の補償に基づいた日本の水道行政

 戦時中の空襲で被害を受け、1950年の普及率は26%にまで下がったものの1957年には水道法が制定された。現在の水道の普及率は99%で、その根底には、憲法25条の生存権の補償に基づくものであったと内田さん。
 日本の水道水は蛇口から飲める水質だが、市民がそれを求めていたからと村上さん。1980年代まではカルキ臭があったが、川がきれいになったことと浄化技術の向上から水質はよくなっている。
 東京の漏水率3.6%という世界から驚かれる(先進国の平均漏水率20%)優秀な水道行政の国である。漏水率の低さは「意識の違い」とさらりと言う村上さん。他国は「漏れた分だけ余計に送る方が修理するより安上がり」という考えではという。日本では、市民がすぐに通報し、水道局も事故につながったら…と対応。予算的裏付けがあったことの他、計画的に古い管を取り換えてきたことも寄与しているという。

◇日本の水道行政の問題点

/邑減による自治体の財政

 水道料金のトップは夕張市の6841円(上位4位まで北海道)。安いのは赤穂市の853円。この差は水道料金の算出法が、かかった費用を人口で割った「総括原価方式」だから。すると人口の少ないところや北海道のように冬季の凍結対策が必要なところなどは高くなるし、水の豊かな地域、富士山の近くなどは安くなる。
 この差は、すでに憲法違反だと内田さんは指摘する。

∀卦牴修靴真綟惨匹覆匹離ぅ鵐侫

 まず見せられた老朽水道管の内部はスケールがたまり、ボコボコだ。以前は鉄管なので錆の塊がつく。今は初期の施設を順次交換している時期で、地方の人口が(トル)減もあり、そうなると公営、民営にかかわらず値上がりはやむを得ない。民営化でコストが減らせるとすれば、人件費くらいではないかと村上さんはいう。要・不要のダムをたくさん作ってしまった東京都は、建設費の負担が年間100億円くらいになっていて、これは払い終わるまで減らせない。

職員の高齢化・減少

 減らせるのは人件費だけ。ということで、職員の削減がどんどん進み、80年代の7万6000人が現在は4万5000人以下。小泉構造改革の流れで人減らしは続き、委託が増えていく。人減らしが進むと退職者の補充がなくなり、20年後には中間層がいなくなると村上さんは心配する。

◇20018年の水道法改正は水道民営化法と呼ばれる

 2018年12月に水道法が改正された。コンセッション方式の推進が含まれていたので、後に水道民営化法案と呼ばれるようになった法案だ。この国会で自民公明維新以外は民営化に反対したが、強行採決された。

 水道のコンセッション方式とは、自治体が浄水場などの施設の所有権を持ったまま民間企業に運営権を売却する方法。水道の運営にかかわるすべての権限が、企業に移行する。企業は水道の事業認可をとらなくても運営ができ、災害時や更新の費用の掛かる部分の責任は自治体にあるという小リスクの契約なのだ。そのうえ、運営権は譲渡可能だという。

 内田さんはさらに詳しく説明する。空港、鉄道、区民センターの運営などに取り入れているPFI方式(プライベート ファイナンス イニシアチブ)、つまり民間の資金活用に上下水道も入れようというのだ。安倍・竹中の方針である。これの何が問題か。自治体がインフラを持ち続けるということは、リスク部分を自治体が持つということなのだ。

◇浜松の下水道はコンセッション方式

 浜松の下水道はすでにコンセッション方式で「浜松ウォターシンフォニー社」が行っている。ここは、ヴェオリア(フランスの企業)、東急建設、オリックス(竹中平蔵が社外取締役)などが参入しているが、地元企業は1社のみ。

 宮城型というのもある。昨年から水道、工業用水、下水道の3つをセットにして建屋と処理場と運営のみをコンセッション方式にした。水道管の維持管理は県がする。つまり、儲かるところだけコンセッション方式にするということ。

 内田さんは、宮城県は村井知事の指図で「とにかく民間業者のやりやすいようにすること」が事業推進の要で、県民にとっての視点が全くないと指摘。

◇東京も宮城方式を導入?東京水道株式会社?

 そして驚くなかれ、村井知事と小池知事とのツーショット写真が登場。都と宮城県が政策協力していこうというのも⇒もの。水道の民営化の条例が通ったころで、「東京水道株式会社 2020年4月」のWEBページの写真が語るように、東京都もそれを目指しているからなのだ。

 内田さんは、まるで都の水道が民営化したように思ってしまうが、今はまだそこまでいっていないという。もともと60〜70年代から都がほぼ100%株主の水道関係の企業が2つあった。それが合併して、1つになったことだ。しかし、社長は東京維新の会の野田数氏。小池知事が議員の時代からの秘書で、知事になってからは特別政策秘書だった。野田氏は、ヴェオリアやイギリスのテムズ・ウォーターのような日本の水企業にしていきたいということで、都の水道の民営化への野心が丸見えだ。

◇世界の現状は再公営化へ

 ヨーロッパで一旦民営化した水道が2000年以降、公共に戻った自治体は311件。ではなぜ戻ったか。村上さんはヨーロッパでの会議に出席したときに、企業があまりにも収益を上げることばかりで、漏水の修理に3日間も水が止まったままだったなどがあり、市民の手に公共サービスを取り戻そうという動きが起きたことや、収益が上がらなかったからと払いきれない高額の賠償金を委託先の企業に自治体が請求された例もあり、市民が気づいてきたと内田さん。
 パリでは、2010年に再公営化する時、多方面にわたる大幅な市民参加が行われたという。

◇岩手県の場合

 公営の「岩手中部水道企業団」の紹介があった。14年に発足した紫波町、花巻市、北上市の水道事業を統合したことで、コストを下げることができた事例だ。こだわったのはダウンサイジング(規模の縮小)とサービスの確保、職員の育成だという。
 内田さんは、規模縮小するところは職員を切るところがほとんどの中で、8万の人口で職員100人の比率は東京都と比べてもすごいこと。働いている人が生き生きしていたという。

◇各地で市民は

 民営化に反対する活動をしているお二人に電話とZoomで参加していただいた。
 ハシモトカズキさん(さいたま市の水道民営化を考える市民ネットワーク)は、さいたま市の10の行政区すべてで『どうする?日本の水道』の上映会を行う計画で残り5か所という。下水道の民営化の阻止には間に合わなかったものの、上水の民営化を現在も止めている浜松市の池谷たか子さん(浜松市の水道民営化を考える市民ネットワーク)は、毎週水曜と日曜日の駅前での署名とスタンディングをしていて、今止まっている上水道の民営化案を廃案にしたいとのこと。池谷さんたちは、9月13日に大きな集会を計画しているとか。

 フロアーからは、民営化の傾向は全国的なのかとの質問が。
 日本政府は全国に広げたいが、東京は危ないが、宮城に続く自治体は浜松も頑張って止めているので、新たには出てきていない。自治体側は命の水の民営化に躊躇している。ダウンサイジングにしても、民営化しなくてもできることはいっぱいあるとのこと。

◇最後に

 「蛇口から水が出ていれば民・公、同じではないか」という考えは危険。議会のコントロールがきかなくなる、気がついたら所有者が誰も知らない投資家だったなどの問題も起きた。自分たちのことは自分たちで決めるということが求められているのではないかが、お二人のメッセージだった。
 次回のレイバーネットTVは、9月16日の予定。

*写真撮影=小林未来


Created by staff01. Last modified on 2020-07-20 16:48:31 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について