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LNJ Logo 山口正紀のコラム : 続報 : 大阪高裁が日野町事件再審のトンデモ人事を撤回
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●山口正紀の「言いたいことは山ほどある」(2020/6/27不定期コラム)

続報 : 大阪高裁が日野町事件再審のトンデモ人事を撤回

 2018年に大津地裁で再審開始決定が出た「日野町事件」第二次再審請求の即時抗告審で、大阪高裁は第一次再審請求を棄却した長井秀典判事を再び裁判長に据える人事を進めようとしていたが、弁護団や支援者の強い抗議を受け、6月26日、この人事を撤回した。

 即時抗告審の係属部を、長井判事が総括判事を務める高裁第2刑事部から第3刑事部に変更したもの。即時抗告審は第3刑事部の岩倉広修判事が担当することになり、「予断を持った裁判長」による不公正裁判は回避された。ただ現在の再審制度には、裁判官が同一事件の審理に関わることを禁じる規定がなく、再審法の不備も浮き彫りになった。

 この裁判官人事をめぐっては、弁護団(伊賀興一団長)が6月18日、「審理及び判断の公平性に対し、重大な疑問を抱かざるを得ず、裁判所あるいは再審手続きに対する社会的な信頼を大きく損なうことにもなりかねない」として、長井判事に審理関与の回避を求める要請書を出した。また日弁連(荒中会長)も25日、「裁判の公正さが疑われる」などとして撤回を求める会長声明を発表。同日夜には支援者が大阪市内で緊急集会を開き、故・阪原弘さん(2011年死去)の再審請求を引き継いだ遺族らが長井裁判長の交代を訴えるなど、不当な裁判長人事の撤回を求める声が高まっていた。

 27日付『京都新聞』(WEB版)によると、裁判長交代は、《長井裁判官の辞退ではなく、高裁内で協議した結果》で、《同課は「事案を総合的に考慮した」としている》。であれば、最初から「総合的に考慮」して同一裁判長による審理を回避すべきだった。

 刑事訴訟法(第20条、21条)は、前審に関与した裁判官が上級審の審理に関わることを禁じているが、再審に関してはこの規定を対象外とする最高裁判例(1959年)がある。それが今回のようなトンデモ人事の背景にあり、再審法の改正がぜひとも必要だ。

 再審手続きをめぐっては近年、証拠開示の制度化、再審開始決定に対する検察官の不服申し立ての禁止など、再審法改正を求める声が大きく高まっている。

 冤罪事件では、検察が被告人に有利な「無罪証拠」を隠し続け、再審請求でもそれが大きな壁になってきた。一方、布川事件、松橋事件など、再審が実現した事件では、弁護側の粘り強い活動と裁判官の訴訟指揮によって、検察が長年隠してきた証拠が開示され、それが決定打になって無実が立証されるケースがある。

 また、地裁・高裁でようやく再審開始決定が出ても、検察側が不服を申し立てて審理を上級審に持ち込み、審理が長期化して、高齢化する冤罪被害者を苦しめてきた。再審開始決定は、確定判決の判断に重大な疑問のあることが明らかになって出されるのであり、冤罪被害の早期救済のためには、検察の反論は再審を開いてから行うべきだ。

 そのうえ許し難いことに、袴田事件、大崎事件など、検察の不服申し立ての結果、ようやくかちとった再審開始決定が、高裁・最高裁で覆される事例も少なくない。

 それら冤罪被害者を苦しめてきた大きな原因が、再審手続法の不備だ。現行再審法の規定はわずか19条しかなく、訴訟指揮などの判断が裁判官の裁量に任されており、その判断の公正さが制度的に保障されていない。

 そうした再審法の根本的な見直し・改正を求め、「再審法改正をめざす市民の会」が2019年5月に結成された。布川事件の桜井昌司さん、東住吉事件の青木惠子さんら冤罪被害者と家族、弁護士や元裁判官など法曹関係者や学者、それに映画監督の周防正行さんやジャーナリストなどが集まり、再審法改正案の早期国会提出を目標に活動に取り組んでいる。 また、日弁連も同年10月の日弁連大会で「冤罪被害者を一刻も早く救済するために再審法の速やかな改正を求める決議」を採択し、再審法改正の運動を本格化した。

 冤罪は、警察・検察・裁判所の三者が一体となって犯す国家権力犯罪であり、それを監視・告発するのがジャーナリズムの仕事だ。メディアは再審開始決定で「よかった」報道をするだけではなく、再審法改正へ世論を喚起する報道にも力を注いでほしい。(了)


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