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天皇即位「賀詞」に賛成した共産党・志位会見3つの矛盾

2019年05月13日 | 天皇制と憲法

     

 衆議院は9日の本会議で、徳仁天皇即位に対する「賀詞」を全会一致で議決しました。明仁天皇即位の際の「賀詞」(1990年11月6日)には反対した日本共産党も今回は賛成しました。

  「賀詞」(全文)は次の通りです。
 「天皇陛下におかせられましては、この度、風薫るよき日に、ご即位になりましたことは、まことに慶賀に堪えないところであります。天皇皇后両陛下のいよいよのご清祥と、令和の御代の末永き弥栄をお祈り申し上げます。ここに衆議院は、国民を代表して、謹んで慶祝の意を表します」

 この「賀詞」に賛成したことについて、共産党の志位和夫委員長は9日記者会見し、記者の質問に答えました。
 天皇の即位に対し共産党(志位談話)が「祝意」を表したことの問題についてはすでに述べましたが(9日のブログ参照)、「賀詞」に賛成した後のこの会見には重大な矛盾があり、見過ごせません。記者会見の「一問一答」(10日付「しんぶん赤旗」、以下、引用はすべて同紙より)によって検証します。

  第1の矛盾:「御代」に反対しながら、それが盛り込まれた「賀詞」に賛成

  「賀詞」は「即位後朝見の儀」で安倍首相が述べた「国民代表の辞」をほぼ踏襲したものです。その中にも含まれていた「令和の御代」という言葉の問題性についてはすでに述べました(4日のブログ参照)。

  これについて志位氏はこう述べました。「『御代』には『天皇の治世』という意味もありますから、日本国憲法の国民主権の原則になじまないという態度を、(賀詞)起草委員会でわが党として表明しました」「今回の賀詞の決議そのものについては、賛成しうるが、さきほど言った点(「御代」―引用者)が問題として残ったということで、その点は意見表明をしたということです」

  共産党は「御代」という言葉には反対しながら、それが盛り込まれた「賀詞」には賛成したのです。それはすなわち、「日本国憲法の国民主権の原則になじまない」国会決議に賛成したということです。これが「現行憲法のすべての条項を順守する立場」とどう整合するのでしょうか。

  第2の矛盾:「憲法順守」といいながら、憲法に反する「生前退位」に賛成

  「賀詞」に賛成した理由について志位氏は、「天皇の制度というのは憲法上の制度です。この制度に基づいて新しい方が天皇に即位したのですから、祝意を示すことは当然」とし、前回反対しながら今回は賛成したことについては、「2004年の綱領改定のさいに…天皇条項も含めて現行憲法のすべての条項を順守する立場を綱領に明記」したからだと述べました。
 「現行憲法のすべての条項を順守する」以上、「憲法上の制度」である天皇の即位を祝うのは「当然」という論理です。

 一方志位氏は、今回「退位特例法」で強行された「生前退位」についてこう答えました。
 「1人の方がどんなに高齢になっても仕事を続けるというのは、日本国憲法の根本的な考え方である個人の尊厳にてらし問題があるのではないかと考え、退位に賛成する対応をしました。いまいえるのは、この立場は理にかなっていたということです」

  しかし、明仁天皇(当時)の「ビデオメッセージ」(2016年8月8日)に始まる「生前退位」は、天皇の政治的発言を禁じた憲法第4条、皇位継承は「皇室典範(皇位継承は天皇が死去した場合と明記―引用者)の定めるところにより」とする憲法第2条、「摂政」制度を定めた憲法第5条に違反する明白な違憲行為であり、「退位特例法」は違憲立法です。このことに正面から異論を唱えている憲法学者はみられません。「1人の方が高齢になっても…個人の尊厳にてらして問題がある」はその通りですが、そうした「問題がある」のが現行憲法の天皇制なのです。

 「憲法のすべての条項を順守する」と言いながら、数々の条項に反している違憲の「生前退位」に賛成したことは「理にかなっていた」。矛盾ではありませんか?

  第3の矛盾:「民主共和制の実現をはかる」としながら、それに向かう「運動はしない」

  志位氏は2004年の「綱領改定」について、こう述べました。
 「私たちの綱領では、将来の問題としては、天皇の制度は『民主主義および人間の平等の原則と両立するものではない』として、『民主共和制の政治体制の実現をはかるべきだとの立場に立つ』と明記しています。同時に、天皇の制度は憲法上の制度ですから、その『存廃』は『将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきもの』だということを綱領では書いています」
 「つまり将来的にこの制度の存廃が問題になったときには、そういう立場に立ちますと表明していますが、同時に、わが党として、この問題で、たとえば運動を起こしたりするというものではないということです」

  現行天皇制は「民主主義および人間の平等の原則」に反するから「民主共和制」を目指す。しかしそれは「将来、情勢が熟したとき」であり、党としてそのための「運動を起こしたり」はしないというのです。

 ではその「情勢」はどうすれば「熟す」のでしょうか。座して自然発生を待つということですか?「民主主義および人間の平等の原則」に反する制度なら、それを廃止するための活動(運動)を行うのが政党、とりわけ「前衛党」の役割ではないのでしょうか。 

 「将来、機が熟した時、国民の総意で…」は、天皇制に限らず、自衛隊解散、日米安保条約廃棄についても同党が使う常とう句ですが、それは「国民の総意」に名を借りた党の責任放棄ではないでしょうか。


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