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LNJ Logo 「在位三十年記念式典」を前に行う彼の言動の検証・その2
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投稿者 : 高井弘之 

みなさんへ
高井です。
以下、先日、送らせていただいた【「在位三十年記念式典」を前に行う彼の言動の検証】
の「その2」です。 読んでいただければ嬉しく思います。

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明仁天皇は、「護憲」主義者として、メディアでも、「護憲」運動に携わる多くの人びと
の間でも評価されているようである。たしかに、彼は機会あるごとに「憲法を守り」とい
うような言葉を述べて来たが、彼の「護憲」の程度や状況は、彼の具体的言動によって判
断されなければならないと思う。

 彼の「護憲性」に対する「護憲派」知識人らの評価は、彼が「天皇の地位」に就いたとき に「皆さんとともに日本国憲法を守り」(「即位後朝見の儀」での「おことば」)という 言葉を発したときから既に始まっていたが、しかし実際は、その言葉自体、憲法上、大き な問題を持っているものであった。

 ここでいう「皆さんとともに」は「国民(の皆さん)とともに」という意味であろうが、 現憲法の原理上、主権者たる国民・人民は天皇とともに「憲法を守る」立場にはない。憲 法99条にも明記されているように、憲法を守らなければならないのは、国民ではなくて 、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員」である。

 そもそも人民主権(国民主権)原理においては、国王を含む国家機関は、「(人民の共同 意思としての)憲法によってつくられた権力」である。「憲法をつくるちから―憲法制定 権力」を有しているのは人民であって、国家機関―国家権力はその「憲法によってつくら れた―規定された機関・権力」なのである。

 そして、人民主権―立憲主義においては、それら国王・国家機関は、「人民の意思」であ る憲法に従うことを大前提に創設されたものであり、それらは「主権者人民の意思」たる 憲法によって縛られ、統制される存在である。

 憲法99条に天皇・大臣等の国家機関が記され、そこに国民の名がないのは、国民―人民 はその憲法をつくった〈主体〉―「憲法制定権力」であり、天皇・大臣らは、その憲法に よって、それに従うものとしてつくられた〈客体〉であることをも示しているものである 。「憲法によって国家権力を統制する」ものとよく説明される立憲主義の前提には、この ような、憲法制定権力についての原理が存在しているのである。

 したがって、憲法をつくり、それを国家機関に守らせる立場にある国民―人民が、その憲 法の統制を受け、それに従わなければならない立場の天皇とともに「憲法を守る」などと いうことは、現憲法上、ありえないことであり、憲法に真向から反することなのである。 たとえば、フランス革命(初期)においても、それまで人民を支配・統制していた絶対主 義的国王は、人民・国民の革命によって―人民の定めた憲法によって、逆に、人民―国民 に統制される存在へと変えられた。

 このとき、その革命初期を先導したシェイエス(シィエス)は、高野敏樹によれば、「『 国王をふくむ国家の諸機関は憲法によって作られた権力であるにすぎない。したがってそ れら自身では制度的体系のなかでのみずからの位置を定めることはできない。その位置を 指定したのは憲法制定権力である』と述べ、このような憲法制定権力の意思を「憲法によ って作られた権力」にすぎない国王が拒否することの論理矛盾を指摘したのである」(高 野『革命期シェイエスにおける憲法制定権力論』)という。ここには、憲法と国王との関 係、つまりは、憲法と天皇との関係が明快に示されている。

 以上のように、現憲法の人民主権原理及び立憲主義に依拠して上の天皇の「おことば」を 見れば、それは完全に憲法に反するものなのである。したがって、このときの「護憲派」 メディア・識者らの明仁天皇に対する「護憲」評価も、この現憲法の原理をまったく踏ま えないところからのものだったのである。

 付加すれば、明仁天皇がこの「おことば」を発したのは「即位後朝見の儀」という、新天 皇に対する臣下の服属儀式においてであった(「朝見」とは、「臣下が天子に拝謁する」 という意味の言葉)。

 そしてそれは、「三種の神器」を新天皇へと「承継」することによって、「葦原中国―日 本」を支配する天皇の地位を新天皇が「承継」したことを表す「剣璽等承継の儀」とセッ トの形で行われたものだったのである。

 つまり、明仁天皇の即位関係儀式は、憲法ではなく、「天皇による日本支配」神話に基づ いて行われたのだが、このことの詳細は次回に書きたい。 (拙著『民主主義にとって象徴天皇制とは何か―天皇制大讃美を目の前にして―』より構 成・抜粋)→お申し込みは高井弘之さん taka_omoshiro@yahoo.co.jp

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