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とにかく圧倒された『東京干潟』〜レイバーフェスタで観て

    柴田武男
*映画の一シーン

レイバーフェスタで『東京干潟』を見ました。簡単に表現できない。とにかく圧倒された。

戦後日本の歩みを85歳の老人の人生にまとめて直球で投げつけてくるような映画でした。 淡々と干潟でシジミをとるだけの老人の姿から目を離せないのはなぜか。20数匹の猫の世 話をしている老人の小屋に野鳥のトンビが飛び込んで懐いている、奇跡のようなシーンが。

なんで猫の世話をという監督の問いに、こいつらだって生きる権利がある、老人が自分に 言い聞かせるように何度もつぶやく言葉です。

大牟田炭鉱の街で未婚の母と暮らして、父が沖縄にいると知ってバスポートで父の元に。 基地に勤めMPとして働く。大阪に辿り着いて結婚。妻は子宮癌で若くして亡くなる。大手 工務店から独立して20数名を雇う建設会社の社長。孫請けなので片目を失明するほどの事 故でも労災は申請せず。 なんで労災申請をしないのかと問われて、孫請けだからできないんだ、そんなことをすれ ば仕事がなくなり若い者が困るだろうと少し怒った口調に。

小屋の外に子猫が段ボールで捨てられていて、慌てて牛乳を買いに行ってストローを貰い 、眼も開かない子猫を必死で育てる。寝不足で大変だったと笑顔で語るこの老人は、今が 一番幸福だと言う。この言葉を聞いて、月並みに幸せとは何かと自問する。

炭鉱があり、沖縄があり、基地があり、大手建設会社、孫請け、労災、妻の病死、このシ ジミ取りの老人から漏れてくる話はすべてが絡み合い、戦後日本を形作っていく。そして 、そのシジミがオリンピックのための橋梁建築で激減、さらに築地の仲買人からは買いた たかれる。ダブルパンチ。 昨年の台風で小屋は大きく揺すられる。本当の危機は台風が去ってから。水かさが増し、 上流でダムが放流でさらに水かさは増し、小屋の間際まで水が押し寄せる、老人の生活の 拠点が危機にというところで映画は終わる。

凄い映画だった。何が凄いかもよく分からないけど、圧倒され続けた。83分間、一瞬たり とも目が離せない。終わってしまうのが惜しい。もっと東京干潟の側に居続けたかった。 私も邪魔にならないようにして、シジミを掘りたい、と強く思ったが、監督は一日で腱鞘 炎となり一ヶ月痛みがあったという。そっと、見るだけにしておく。


Created by staff01. Last modified on 2019-12-24 18:04:23 Copyright: Default

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