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〔解説〕レイバー・ノーツ誌の11月号は「ストライキをどう打ち、勝つか?」と題する特集号で、32ページがすべて実践的なストの手引きとなっている。10月25日には40日にわたったGMのストライキが終結して新協約が締結された。一方、シカゴ教員労組は10月17日からストライキに入った。こちらも11日のストを打ち抜いて10月31日に終了した。ストライキの初日を報じたレイバー・ノーツ誌の報告を翻訳した。(レイバーネット日本国際部 山崎精一) *毎月1日前後に「レイバー・ノーツ」誌の最新記事を紹介します。

シカゴ教員労組再びストに

   バーバラ・マデローニ

*CTUの組合員たち「アメリカは公教育を必要としている」

 2012年にシカゴ教員労組CTUはストライキに勝利して全国の教職員を目覚めさせた。その後2年間の各州での教員のストライキの波を経てCTUは再びストライキに入っている。

 本日(10/17)職場放棄が行われているが、2012年の光景と似ている。ストライキ権投票は高率の94パーセントの賛成率で確立し、市長はストライキの要求を無視し、ストが生徒を傷つけていると批判している。しかし、大きな違いもある。

 今回はCTUの25,000人の組合員はSEIUサービス従業員労組ローカル73の7,500人の組合員と一緒にストライキに参加している。ローカル73は補助教員、バス運転手、警備員その他の職員で組織されている。

 さらに今回は要求が広がり、ホームレスの生徒たちの住宅問題や貧しい市民のための低廉な住宅確保と取り扱っている。そして今回新しい市長と対決しており、その市長はシカゴの公教育を守ると公約している。しかし、新市長ロリ・ライトフットは前市長ラーム・エマニュエルと同じ交渉担当者を任命して、同じように組合要求を拒んでいる。

 前回の2012年にはSEIUローカル73はCTUストの前に協約交渉で譲歩して妥結していて、CTUのストライキのピケを踏み越えて就業した。補助教員は両労組が組織していたが、SEIUの組合員の一部がCTU組合員より給与が高く設定されており、両労組の間にはわだかまりと対立があったのだ。しかし、SEIUローカル73の現在の指導部になって対立は緩和され、両労組の指導部間の話し合いが進んでいた。SEIUローカル73の協約交渉にCTU組合員が参加して、歓迎されるようになっていた。

過重労働、低賃金、過密クラス

 SEIU組合員の多くは発達障害や学習障害を抱えた特別支援教育の生徒を支える仕事をしている。用務員の平均年収は35,000ドルで特別支援教育の補助教員の年収は36,000ドルで住宅都市開発省の基準では「非常に低い賃金」以下である。特別支援教育の補助教員の代理のアイザック・クランツパールマンはある仲間の生活を紹介している。その仲間は学校で一日働き、その後ウーバーのタクシー運転手をやり、夜は学校の庁舎清掃をやり、それから自宅で高齢の母親の世話をしてから眠り、翌日学校に来て生徒を教えている。「教員の労働条件は生徒の学習条件である」と組合が言っているのはこのことだとクランツパールマンは言う、生徒には十分な休息を取った教員が必要なのだ。

 SEIUローカル73の要求は賃上げ、健康保険と年休の獲得、外部委託の廃止、問題を抱える生徒を教える教員の研修の充実である。CTUの中心的な要求はクラス人数の制限と制限を超えた場合のクラスの新設である。さらにカウンセラーとソーシャルワーカーの増員と担当生徒数の削減と全校への看護師の配置も要求している。

 ライトフット市長は協約期間中の5年間に16パーセントの賃上げを提案しているが、組合側は賃金だけではなく、教員と生徒の教育環境の改善の方に力を入れており、市長と対立している。

住宅要求

 シカゴ市ではホームレスの生徒が16,000人おり、高い住宅費の一番の犠牲者である。シカゴ市は職員が市内に住むことを義務付けており、組合員も高い住宅費、賃料の被害者である。

 交渉委員のロリ・トレスさんは市内で生まれ育ち、今も住んでいるが、その地域が住みづらくなってきていると言う。「黒人やラテン系の人たちが住めなくなって脱出しつつある。その生活体験から住宅問題がCTUとSEIU組合員の要求事項となった。その要求内容は、授業期間中の強制立ち退きの禁止、州による家賃規制、持続可能な住宅のための市の政策、初めて住宅購入する教職員に3万ドル無利子住宅ローン、「仮住居」住まいの生徒に対する学用品、制服、通学費、校外授業への援助費の増額、その援助担当の職員の配置などである。

 このような要求項目を労働協約の中で認めることを市長に要求している。さらにそのために必要な財源を50人以上の従業員を雇う企業に人頭税(注1)を課税し、税収積立金会計TIF(注2)を教育や住宅に使用し、100万ドル以上の金持ちへの所得税を増額することも併せて要求している。

 市長は住宅問題や職員人数は協約事項ではないと主張している。1995年の州法によって交渉事項は賃金、付加給付と授業日数に制限されているのがその根拠である。しかし、CTU副委員長のステイシー・デイビス・ゲイツは「労働協約の力」を使ってシカゴ市民が住みやすいシカゴ市にすることが労働組合の責任である、とインタビューで答えている。

労働組合の力を教え、学ぶ教職員たち

 CTUとSEIUは合同でストライキ準備訓練を行い、生徒や保護者と一緒にポスターなどを作る美術活動も行っている。スト突入直前の10月14日にはCTUの赤とSEIUの紫の組合Tシャツを着た1000人が市中心部でデモを行った。

 ストライキが始まって両労組の団結の力が試されている。組合員たちは住宅要求などの高いレベルの要求を市に対して掲げ続けることができるだろうか?

 クランツパールマンによると学校ごとに両労組の間の関係は違っている。しかし、お互いから学び合っていると言う。「SEIUの方はこのストにより、鍛えられ、次の協約交渉に向けて強くなるでしょう。運動を活発化し、ストライキも打てると自覚するようになりました。今回は多くの間違いを犯すでしょうが、それも役に立つでしょう。」

 2012年にストでエマニュエル市長を打ち負かしたCTUは他の労働組合にストライキの力を教えた。お互いに教え合う関係は続いており、2018年にはウェスト・バージニア、オクラホマ、アリゾナまでの赤い州(注3)での教員ストが続き、さらにワシントンとコロラド州と続いた。今年に入り、オークランドとロサンゼルスの教員がストに入り、ロサンゼルス教員組合UTLAはクラス人数と移民労働者の権利で勝利した。今回は前とは違い、シカゴの教員が他の教員から学んでいる。小学校教員のクラスティン・ドゥソールトは言う、「UTLAは看護師の全校配置を勝ち取った。我々だってできる、と自分たちに言い聞かせている。」

注(1)自治体が企業に課す従業員人数に応じた法人税
注(2)固定資産税の増収分を積み立てた資金で、市長の裁量で「荒廃」した地域の開発事業に使える
注(3)民主党より共和党を支持する傾向の強い南部などの州


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