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「撮り続けてくれてありがとう」〜11AM劇場で『原発の町を追われて』を上映

堀切さとみ(制作者/写真左)

 アップリンク渋谷で7月13日から一週間にわたり開催されている「11AM劇場−名画発見!」。南京虐殺や慰安婦など、「不都合な真実」をえぐり出す作品が上映されているが、三日目の15日は「フクシマ」。『原発の町を追われて−避難民 双葉町の記録』には、50人が来場した。旧友、恩師、騎西高校で出会った人。そして予期しなかった人との再会もあり、今までで一番濃密な客層であったことは間違いない。ひとり一人とゆっくり話がしたかった。誰に向けて話したらいいんだろう・・・いろいろなことが頭をよぎった。

 ずいぶん前に第一部、第二部を観てくださった人が、6年ぶりに三部作を観てくださり「ずっと撮り続けるという約束を守ってくれてありがとう」。その言葉にちょっと救われた思いだ。

 双葉町の前副町長、井上一芳氏がこう話してくれたことがある。「原発が立地することによって、双葉町は自分で考える必要がなくなってしまったのだ」と。住民自治など必要ない、欲しいものがあれば黙っていても東電が与えてくれる。その結果として3・11後も、自分の行く末を誰かに委ね、他人のせいにし、他力本願のままの状況が続いていると。

 暮らしを奪われ根無し草になった状態で、それを自覚するのは相当難しいことだ。避難先で遠慮がちになる人が多い中、鵜沼久江さん(写真右)は異彩を放っていた。2014年の夏。1、2部の上映会の後、鵜沼さんは「堀切さん、私のことを記録してくれないかなあ」と言ってくれ、そのおかげで3部作が出来た。

 上映後のトークで鵜沼さんは、双葉町の「今」を語った。「福島の野菜が売れないのは風評被害によるものだ」と福島県はさかんにキャンペーンしている。福島で営農することは安全なのか、そうでないのか。そこには福島県内と県外での明確な温度差がある。

 中間貯蔵施設には汚染土が溢れ、福島第一原発はいつまた爆発するか分からない、そんな双葉町で農業再生事業が始まっているのだ。これが果たして安全なのかどうか。

 鵜沼さんは農業委員会の一員として、福島県内の双葉町民と胸元開いて話すようにしている。今は平行線を辿ったとしても意見を言い合うべきだ。自分で実践して答えを得たいと。2011年当初から、賠償金の有無をめぐる対立や、県内避難者と県外避難者との価値観の齟齬など、住民どおしの対立ばかりがクローズアップされてきた。でもいい加減そんな不毛なことはやめるべきだ。実はそれこそが鵜沼さんだけでなく、すべての福島県民の願いなのではないだろうか。

 2020年で「復興庁」もなくなる。問題は山積みなのに、フクシマは復興済みだということになっていく。区域外避難者は家賃が倍になり、双葉町や大熊町の人たちには、帰ることのできない我が家に膨大な固定資産税がのしかかる。あまりに理不尽なことに対し、世間は無関心だ。そういうことに対して、福島はもっと力を合わせる必要があるのだ。

 8年の歳月。それは、誰にとっても共通のものではない。幼少期に被災し、思春期を避難生活に翻弄された世代の中には「双葉町出身」ということを隠す人も多いと聞く。彼らに何を残していけるか。大人たちはそろそろ、本気になって考えなければいけないと思う。

『原発の町を追われて』HPアップリンクHP「11AM劇場 名画発見!」


Created by staff01. Last modified on 2019-07-18 13:48:18 Copyright: Default

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