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戦争で奪われた人権を自らの手で取り戻す〜映画『バハールの涙』『ナディアの誓い』の女性たち

    笠原眞弓

 この2本の映画は、イラク北部のヤジディ教徒の住む街をISISが襲い、老人と男性は殺さ れ、女性は性奴隷とされた事実を描いている。

 『バハールの涙』(写真)は、事実に則した劇映画である。監督はこれまで見たことのある戦争映 画の場面の焼き直しではなく、寝る時銃はどうしていたかという些細なことから、たとえ ば恐怖の感情や現場の空気を実感として感じられるまで、たくさんの被害者や戦場記者、 元兵士にとことん話を聞いたという。そのためか、すべての場面がリアリティーを持って 迫ってくる。

 映画は眼帯をした女性戦場記者が夢でうなされるところからはじまる。彼女も戦争の被害 者なのである。やっと入れた前線で出会ったのが女性部隊の隊長をしているバハール。彼 女に関心を持った記者に心を開いたバハールによって、これまでのいきさつが語られてい く。

 ISISに襲われて性奴隷とされているある日、バハールは、捕われている女性たちに救助の 呼びかけをしているテレビ放送を見る。伝えられた手順通りに、臨月の同僚ラミンと共に 脱出に成功する。その後ラミンの「被害者でいるより戦いたい」という言葉で、兵士養成 学校に入れられている息子を取り戻したい彼女も兵士になる。 こう着状態が続く中、総攻撃を迫るバハールに犠牲が大きいと渋る男性隊長。その時の一 言が忘れられない。「女は失うものがもうない」。

 『ナディアの誓い』(写真)はドキュメンタリーである。昨年ノーベル平和賞を受けたナディア・ ムラドがテレビなどのメディアのインタビューを受けたり、政治家にISISのやり口、情況 を話していき、国連で演説するまでを描いている。この演説によって国連のプログラムと して訴えが受け入れられ、国連大使になる。しかし考えてもほしい。性的屈辱を受けた本 人が、その被害について人前で語ることの辛さを。 カメラはその気持ちをある時は手や指で、または服装やその目の光、目の動きでとらえる 。健気に彼らの要求にこたえる彼女。しかし、そんな話はしたくない。だが、まだとらわ れている3000人の同胞のために振り絞る勇気。「有名になって変わったか?」ではなくて 「どんなに今も若い子たちが苦しんでいるか」「女が戦争で犠牲にならずに済むにはどう すればいいか」と聞かれたいという。

 この映画を見ながらどうしても思い浮かぶのは、日本軍によって性被害を受けた「慰安婦 」のこと。1991年8月に金学順さんが名乗り出て以来、国際社会に取り組むべき課題とし て認識された。しかしいまだに女性の犠牲者は続いているのである。こうしてナディアが 心身の傷を人前で訴えていかなければならない、その活動がノーベル平和賞を受ける事実 が厳然としてある社会なのだ。

 レイバーネット川柳班が昨年暮れに著した『反戦川柳句集〜「戦争したくない」を贈りま す』の中に、このような句が収録されている。「ハルモニは夢の中さえ恨あふれ」(乱鬼龍)

●バハールの涙
監督:エブァ・ウッソン 110分
1月19日新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座で公開後順次全国展開

●ナディアの誓い
監督:アレキサンドリア・ボンバッハ 95分
2月1日(金)アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー


Created by staff01. Last modified on 2019-01-22 10:13:21 Copyright: Default

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