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LNJ Logo 太田昌国のコラム「サザンクロス」 : 官邸主導のニュースづくりは、災害報道でも
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 ●第23回 2018年9月10日(毎月10日)

 官邸主導のニュースづくりは、災害報道でも……


*NHK日曜の番組「これでわかった!世界のいま」9月9日放送(ウェブサイトより)

 日曜日の夕方、家にいると「笑点」を観てからチャンネルをNHKに切り替え、国際ニュース解説的な番組を「ながら的に」観るのが、かつての習慣だった。いつの頃からか、後者の番組の性格が変わった。国際ニュースを扱うのは同じだが、スタジオには「無知で」「おバカな」芸能女子が(時には男子も?)いて、途中からNHKの男子「解説委員」が登場して話し始めると、女子は「なんでだろう?」「へえ、そうなんだ」と「感心する」というパターンが常套化して、嫌気がさした。何でも知っている男子が得々と解説し、無知な女子が感心して聴くというスタイルを、今時になっても採用して恥じないNHK番組制作「幹部」と「現場スタッフ」の鈍感極まりない感性と低劣な価値観に、心底、絶望した。だから、観ることを止めた。

 9月9日の同番組は、予告によると、朝鮮民主主義人民共和国建国70周年の「軍事パレード」と、難民排斥を公言する右翼政党の躍進ぶりが予想されているスウェーデン総選挙について放映するという。いわゆる「拉致」問題についての発言を続けており、世界を覆う排外主義の台頭を憂慮しながら見つめている私としては、我慢して観るしかない。この日、スタジオにいる女子タレントのひとりが、イラン生まれのサヘル・ローズだったので、いくらか救われた内容にはなった。大手メディアの報道にあっては、「小国」や難民が抱える問題が不当な扱いを受けることはありふれたことだが、サヘル・ローズの発言が引く補助線は、朝鮮の軍事パレードに関してはありきたりではあったが、問題をいくらかは重層的・複眼的にしたからである。だが、男子解説者が言うことは、相も変わらず、朝鮮国と米国の関係性を語る点において非対称的だった。彼からすれば、難航しているのは「北朝鮮の非核化」であって、韓国・駐留米国・米国と軍事同盟を結びその「核の傘」の下にある日本の「非核化」も同時に課題になっているのだという問題意識は、かけらも持たずに「解説」するのだった。

 スウェーデン総選挙については、現地駐在のNHK女子特派員が、移民の2世・3世の犯罪率が高く、それが移民に対する反感の理由の一つになっていると語っていた。日本でも「外国人」の犯罪率に関して同様の物言いを聞くことがあるが、それは事実に反していることを知る身としては、この「安易な」解説は信じまいと思った。

 この数日間は、日ごろは見聞きしないNHKラジオやテレビの報道に接する機会が多かった。知人が多い関西での豪雨被災や、北海道での地震の様子が気になるからだ。そこで、奇妙なニュースの在り方に気づいた。災害による死者の数が、警察によってではなく、首相の口からまず発表されるのだ。一瞬にして流れゆくニュースなので、文字通りの再現はできないが、「心肺停止」を奇妙な文脈で使っていた例もあった。水浸しになった関西空港の営業再開についても、北海道電力の停電からの復旧についても、国営企業でもあるまいし、本来ならば民間事業者自身が説明するところだが、首相がいち早く「明日には復旧・再開」などと断言する様子が、堂々とニュースになっていた。度重なる重大な災害を気にして、自民党は総裁選挙の広報活動を「自粛」する期間を設けたようだが、それだけに、「先頭に立って決断する首相」というイメージをなりふり構わず喚起したかったのだろう。同じ穴のムジナとはいえ石破氏はそれをやる条件を持たないから、ここでも現役首相の露出度が目立つことになる。何事につけても、首相の「やってる感」を演出することに長けた振付師のほくそ笑みが、目に浮かぶようだ。このような見え透いた意図を持つ、官邸主導のニュースづくりが、NHKを主要な舞台にして日々行なわれている。2006年、自民党総裁選挙を前に、安倍氏には必ず「国民的な人気が高い」との枕詞を付して報道したのも、NHKニュースだった。こんなニュース現場で苦闘しているかもしれない、心ある職員の生の声が聴きたい。


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