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「赤坂自民亭」に厳しい批判、エネルギー基本計画への評価は割れる〜7.13道庁前行動レポート

   黒鉄好

 7月13日(金)も、通算298回目となった道庁前行動が行われた。

 299名の死者を出した長崎水害(1982年)以来最悪の規模となった西日本水害の最中に喜々として酒宴をする安倍自民党政権。酒宴をするなというつもりはないが、問題は政権運営に責任を負わなければならない与党の政治家が、最悪のタイミングでそれをネットに投稿したことだ。政権を担当しておらず政府に責任を負わない立憲民主党の酒宴や、一般会社員の酒宴とは重みが異なるという事実をそもそも理解していない。「自分たちだけがなぜこんなに叩かれるか」が理解できないなら潔く政権を降り、政権担当に伴うさまざまな特権も返上すべきだろう。案の定、この日の金曜前行動でも無自覚な与党幹部への批判が相次いだ。

 この7月に政府が閣議決定した新エネルギー基本計画は、米国への配慮から日本が保有するプルトニウムを削減すると明記したものの、具体的な削減方法や削減時期は示さなかった。そもそも削減方法がないのだから書かないのではなく書けないのであって、当然の帰結だろう。原発比率を20〜22%とする一方、再生エネルギーも「基幹電源」に位置づけるという基本計画は、人により、立場によってどうとでも解釈できるもので、もはや計画の体を成していない。

 エネルギー基本計画がこのような内容になったのは、そもそも原発への反発が強いことに加え、自民党内でも原発推進・反対両派による凄まじい攻防があったからだ。6月20日、原発推進派の「電力安定供給推進議員連盟(細田博之会長)が世耕弘成経産相に原発新増設の申し入れをする一方、脱原発派議員で作る「再生可能エネルギー普及拡大議員連盟」も菅官房長官に宛てて再生エネルギー比率を40%に拡大するよう、6月18日に申し入れを行っている。自民党内も一枚岩でないのだ。

 常連メンバーの女性、Oさんは「すでに日本の原発54基のうち9基が再稼働する一方、22基の廃炉がすでに決まっている。政府の計画通り原発比率を20%にするには30基以上の再稼働が必要だが、新増設がなければ達成不可能だ。原発推進派があれだけ望んだ新増設をエネルギー基本計画に書き込ませなかったことに大きな意義がある」と新増設明記を阻止した闘いの成果を強調した。一方、常連メンバーの男性からは「新エネルギー基本計画は再エネの比率の目標を7%としたが、2016年現在でもすでに6%ある。一方で2016年現在、1%しかない原発の比率を20%に上げようと政府はもくろんでいる。再エネを1%しか引き上げず、原発は2割近くも引き上げようというのだから、新エネルギー基本計画は“原発大復活計画”そのものだ」とこの計画を厳しく批判する声があがる。新エネルギー基本計画への評価は真っ二つに割れた。

 これは新エネルギー基本計画を「どちらの側面から読み取るか」の違いだけで、結論からいうとどちらも正しい。新増設がこのまま進まず、福島原発事故後の新基準による「40年廃炉ルール」が厳格に守られ延長が認められなければ、Oさんの指摘通りに自然と脱原発は実現する。一方で、なし崩し的に40年ルールが崩され既存原発の運転延長が進んでいけば、男性の懸念するとおり新増設がなくても「原発大復活」になる危険性がある。

 しかし私は、この男性の懸念する「原発大復活」にはならないと予想しており、Oさんに軍配を上げる。なぜなら原発から出る核のごみの処分方法も処分場所もいまだ決まる気配さえないからだ。このまま再稼働した原発で使用済み燃料プールがいっぱいになり、持ち出し先の六ヶ所村の再処理工場も稼働失敗を続けた場合、どうやって原発の運転を続けるのか。それ以上に、米朝会談で朝鮮半島の非核化が進んだ場合、原爆を5500発も作れる47トンものプルトニウム保管を国際社会が日本だけに許し続けるとも思えない。

 この他、「北の鉄路を守る会」メンバーからは、北海道民が切実に望むJR北海道の鉄道維持には涙金しか出さない政府が原発やカジノのために巨額の税金を使い続けていることにも批判の声が上がった。常連メンバーのインド人、ラトリさんは、「JR北海道は利益が出ないから路線を廃止すると言っている。利益が出ないから廃止というなら、人を殺すだけで何の利益も生み出さない軍備こそ真っ先に廃止すべきだ」と訴えた。

 最後に私、黒鉄のスピーチ全文をご紹介する。検察審査会による「強制起訴」決定を受けて東京地裁で続いている刑事裁判が20回を迎え、ほぼ半分を終えたところで、ちょうど中間報告が必要な時期と考えていた。今回はこの刑事裁判を取り上げている。

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 みなさんこんにちは。

 東京電力の勝俣恒久元会長ら、経営陣3人の強制起訴決定からまもなく3年になります。今年に入ってから急ピッチで進んできた刑事裁判も、おととい水曜日に行われた公判で20回を数えました。福島の地元新聞、福島民報は、検察官役の指定弁護士によって年内にも論告求刑が行われると伝えています。裁判全体の半分をすでに終え、そろそろ中間報告が必要な時期だと思います。

 この裁判の争点は、福島第1原発への津波の襲来を事前に予測できたかどうか、そして「三陸沖北部から房総沖の海溝寄りのどこでもマグニチュード8.2前後の地震が発生する可能性がある」とした、2002年の国の地震調査研究推進本部の「長期評価」をどう見るか、この2点に事実上絞られたといえます。

 20回の裁判のうち、前半は長期評価を巡る証言が中心になりました。長期評価を巡っては、地震学者の間にほとんど異論らしい異論はなく信頼に値するとの内容で、裁判に出廷した地震学者の証言が一致しました。同時に見えてきたのは、できるだけ福島第1原発の追加的津波対策を行わなくてすむようにするため、地震本部の中では確立しているはずの長期評価を一貫して貶めようとする動きでした。こうした動きが中央防災会議や電力会社など、政権中枢と原子力ムラ内部から一貫して執拗に続けられていたことも次第に明らかになっています。

 5月9日の第11回公判では、元原子力規制委員会委員長代理の島崎邦彦さんが証人として出廷しました。島崎さんは、「長期評価をきちんと取り入れて東電が津波対策を行っていれば事故は防げ、もっと多くの命を救えた」と涙ながらに訴えました。地震学の世界で頭脳といわれている人が集まっているのがいまの地震本部です。その地震本部に集まる学者にとって、自分たちが取りまとめた長期評価を貶めようとする政権中枢と原子力ムラのあり方は、まさに自分たちの存在を否定し、誇りを踏みにじる許しがたいものでした。

 地震の観測、得られた地震波の解析、古文書から歴史地震を読み解く、GPSを使った測地学、地質学、地形学、津波などの領域の研究者たちが関わる中で、独自性を尊ぶ研究者たちの異なる考え方や意見を最大公約数的にとりまとめ、「最も起きやすそうな地震を評価してきた」と島崎氏は述べました。このことは、地震本部が取り上げていない地震だからといって危険性がないわけではないということをも意味しています。地震の影響を評価するに当たって、難しい理論よりも過去の文書の記録や経験則に基づいた知恵の方が役立つ局面もあるということも次第にわかってきました。その一方で「数値にできない尺度は無視してなかったことにする」硬直的で傲慢な原子力ムラ系学者がはびこり、次第に津波対策は後退させられていくことになったのです。

 20回の裁判の後半は、東電内部における津波対策の検討・実施状況に関する証言が続きました。現役の東電社員の多くは、「福島第1原発に15.7mの津波が到達する恐れがある」との内容の報告書を、2008年、子会社の東電設計がまとめたことを受けて、津波対策は必要と考えていました。「当然、津波対策をやれという話があると思っていたのに、突然、対策先送りの話をされ、頭が真っ白になった」と、津波対策担当の東電社員は証言しました。津波の危険は、少なくとも東電の現場レベルでは当然の認識として共有されていたとみるべきでしょう。

 強制起訴された3人の役員、とりわけ武藤栄元副社長が、土木の業界団体であり「身内」である土木学会への調査依頼という形で対策先送りを決めたのはなぜなのか、残る裁判はこの部分が焦点になると思います。長期評価を取り入れた形での安全対策を実施した場合、福島第1原発の原子炉が一定期間、止まるのは避けられない状況でした。原子炉を止めて安全対策をすれば、その間、金がかかるばかりで収入は途絶えてしまいます。そうでなくても、東電は、2002年に福島原発での事故隠しが原因で佐藤栄佐久・福島県知事(当時)を怒らせ、長期間原子炉を停止させられる事態を招いています。ようやくそこから立ち直り、動き出したばかりの原子炉をすぐにまた止められるのだけは勘弁してほしい。どんな手を使ってでも原子炉を動かしたままにしたい――それが「対策先送り」の真の原因であることは疑いない事実です。残る裁判で、検察官役の指定弁護士側がどこまでその事実を具体的に立証できるかが判決の行方を左右することになるでしょう。

 おととい水曜日の報道ステーションでは、この刑事裁判が特集され、これまでの経過が明らかにされました。来週火曜、17日午後4時から「ラジオカロスサッポロ」で放送される「つながるコトバ つたえるミライ」では、この刑事裁判の裏方を担っている福島原発告訴団の事務局長が出演し、刑事裁判のこれまでとこれからについて話をする予定になっています。17日はぜひラジオカロスサッポロのほうも聴いていただければと思います。私も、福島県民だけで行った2012年の第1次告訴からずっとこの刑事裁判を見守っている者のひとりとして、最後までこの刑事裁判の行方に関心を持ち、皆さまにもお伝えする予定です。

 さて、この道庁前行動もこの7月で6周年、そして再来週、7月27日にはいよいよ300回となります。残念ながら、私はその記念すべき300回には参加できません。そこで来週のこの時間、6周年&300回記念特別企画「原発問題、なるほど!そうだったのかスペシャル」として、皆さんに驚くべき事実をお伝えしたいと思います。どうぞ楽しみにお待ちください。

 今日は以上で終わります。ありがとうございました。


Created by staff01. Last modified on 2018-07-15 13:31:13 Copyright: Default

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