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LNJ Logo 〔週刊 本の発見〕『朝日ぎらい一よりよい世界のためのリベラル進化論』
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毎木曜掲載・第64回(2018/7/5)

なぜそんなに嫌われるのか?

●『朝日ぎらい一よりよい世界のためのリベラル進化論』(橘玲 著、朝日新聞出版、810円)/評者:大西赤人

 『朝日新聞』といえば、1971年に起きた「アカイ アカイ アサヒ アサヒ」問題――『朝日ジャーナル』に連載中だった赤瀬川原平の漫画「櫻画報」が物議を醸し、自主回収、編集長更迭、二週の休刊などに至った――をはじめ、要するにいわゆる犧固畢甅犧鹸鵑雖瓩い辰獣偲には爛▲瓩離泪后Ε瓮妊アと見做されているであろう。しかし、上記の「アカイ アカイ」にせよ、当時でさえ『朝日』上層部は、同誌の左偏重を憂慮していたからこそ、厳しい処分に踏み切ったと考えられる。相対的には『朝日』の読者もまた犧固畢瓩多く、近年の日本の右傾化に伴い、その発行部数が落ち込んだという図式の想定は容易だ(新聞全般の退潮が基礎にあるとはいえ、2012年の約760万部から2017年には約610万部にまで減った『朝日』の落ち込みは際立つ)。

 もちろん、『朝日』を読んでいた犧固畢瓩凌祐屬あえて購読を打ち切るとすれば、それは理屈としては、同紙の紙面=論調が彼ら犧固畢瓩離法璽困鯔たさなくなったからのはずだが、未だに『朝日』が犧固畢瓩梁緝重メディアと目されている状況とは必ずしもそぐわない。むしろそこには、吉田調書、慰安婦「強制連行」報道、池上彰コラム問題、「押し紙」問題等々、近年相次いだ『朝日』のメディアとしての構造的な不備が大きく影響を及ぼしたのであろう。

 そんな中、『朝日ぎらい』という本書のタイトルを見かけ、またそれが朝日新聞出版から出ていることを知り、大いに興味をそそられた。帯の「私たち、そんなに嫌われてますか?」なる吹き出しなど、今どきの自虐めいた作りから、むしろ実は『朝日新聞』側の反撃が試みられているのかと思ったのである。だが、その期待は、「まえがき」で早々にはぐらかされた。

 「『買って損した』と文句をいわれないように最初に断っておくと、本書は朝日新聞を批判したり擁護したりするものではない。私の関心は、インターネットを中心に急速に広がる狡日ぎらい瓩箸いΩ従櫃鮓桐的に分析してみることにある」

 著者は、「本書のテーマは『リベラル化』と『アイデンティティ化』だ」と述べ、「リベラル」と「保守」とを対立項として提示しつつ、「世界でも日本でもひとびとの価値観は確実にリベラルになっている」と述べる。そして、「民進党の分裂・消滅によって、日本では『リベラル』と『保守』の定義をめぐる喧喧囂囂の論争が起きている」とする。たしかに55年体制の崩壊後、旧来のイデオロギー的左右対立は散漫になっているものの、著者の「リベラル」の定義自体、「(革新)」とカッコ書きされる程度で、確定的には示されない。2017年の世論調査における政党観に基づき、十代、二十代男性の安倍政権支持率が高く、その彼らは公明党、共産党、民進党を「保守(的)」と位置づけ、自民党は「中道」、維新を「リベラル」と評価しているとして、「驚くべきことに、いまの若者は共産党を『右派』、維新を『左派』と見なしているのだ」「若者はむかしもいまも一貫して『リベラル』なのだ」と分析し、「かつて『リベラル』とされていた政党が『右傾化』したのだ」と述べる。しかし、この保守=硬直=右派、リベラル=柔軟=左派という定義は、あまりに乱暴に思われる。

 本書は、時おり思い出したように『朝日』に触れるものの、大きな流れとしては、人が必然的に――もしかしたら生物的遺伝レベルで――リベラルへ向かうありようと、それが必然的に知性主義やグローバリズムにつながる弊害を指摘する。そこには、現在の日本を単純に「右傾化」と評することの誤りに気づかされる面も様々あったものの、『朝日ぎらい』というタイトルの狒世辰伸甦兇篭く残る。

*「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美・佐藤灯・金塚荒夫ほかです。


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