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〔週刊 本の発見〕『台湾人の歌舞伎町―新宿、もうひとつの戦後史』 | ||||||
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猥雑で塵芥が混在する街●『台湾人の歌舞伎町―新宿、もうひとつの戦後史』(稲葉佳子・青池憲司 紀伊国屋書店)/評者:渡辺照子
新宿は私の生まれ故郷であり、今も住む場所だ。自然豊かな場所へのバス旅行の帰途に新宿の高層ビルや不夜城の歌舞伎町のネオンを見ると、ホームに帰ってきた思いでホッとする。幼い頃は、父に連れられて新宿に行った。今はアルタになっている「二幸(にこう)」という食料品専門店で、晩のおかず用に最も単価の低いハムの切れ端を買い、三平食堂(これは今も健在)でハンバーグランチを食べさせてもらい、西口の思い出横丁の表通りに面した古本屋で絵本を買ってもらうのがお決まりのコースだった。古本屋の隣は魚の干物や佃煮の専門店であり、絵本には佃煮の匂いが染みついているようだった。歌舞伎町は、年に一回、父が車掌として勤務していた京王電鉄(当時は京王帝都電鉄)の福利厚生とされた観劇で、コマ劇場に両親と連れ立って行くのがとても楽しみだった記憶と共にある。出し物はドリフターズのトタバタ喜劇だった。ドリフターズの劇場でのパフォーマンス力はその後、TBSの「8時だよ、全員集合」で花開く。しかし、幼い私にも歌舞伎町の危うさはうっすら感じ取れた。父は私に怪しげな看板を極力見せないように、実に急いで私をコマ劇場に連れて行ったからだ。
新宿は、子どもの頃は親にデパートに連れて行ってもらう場所、若いときは恋人と映画鑑賞等で遊びに行く場所。親になると、また子どもを連れて行く場所になる、といった具合に家族構成が変わっても生涯遊びに行ける繁華街だという定説めいたものがある。銀座のような富裕層の街ではない。代官山や原宿のような若者のあこがれの街でもない。長寿番組の「笑っていいとも」が終わった時、タモリが「もう、新宿に来ることはないだろう」とコメントしていた。それほど庶民的な街なのだ。 本書の副題に「新宿、もうひとつの戦後史」とあるのは意味がある。新宿の行政や新宿の既存の商店会の歩みが新宿の歴史の「メイン」だからだ。だが、「台湾人」の営みも新宿の喧騒を生んだことは間違いないと思った。そして、本書の版元が新宿に本店を構える業界一位の紀伊国屋書店であることも意味深い。 *「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美・佐藤灯・金塚荒夫ほかです。 Created by staff01. Last modified on 2018-04-12 12:07:20 Copyright: Default |