太田昌国のコラム「サザンクロス」 : 「時事」だけに拘らず、「想像力」を伸ばしたい | |
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「時事」だけに拘らず、「想像力」を伸ばしたいこのようなコラムを書いていると、「時事」に即して対応する言論が必要だと思いがちだ。それはその通りで、私も及ばずながら、そのようにしたいと考えている。だが、現在、一般に流通している「時事」的言論は驚くほどに劣化している。メディアへの露出頻度が高い政治家の――とりわけ日米の――言葉をみれば、一目瞭然だ。メディア自体もそうだ。心の奥底では、こんな言動に逐一対応できるものかという憤怒が、本音となって渦巻いている。
私の気持ちはここから離れ、この会合に参加した20ヵ国とはどこだろうという方向へ動く。招待国である日・韓など4ヵ国以外は、米・英・伊・仏・豪・加など朝鮮戦争時の国連軍派兵国16ヵ国であると知れる。その中で、フィリピン、コロンビアの国名が目立つ。コロンビアと言えば、この国が生んだノーベル文学賞受賞作家、ガルシア=マルケス(写真下)が新聞記者時代に、朝鮮戦争からの帰還兵の話を書いていたな、と思い出す。この天賦の才を持つ物語作家の場合、1950年代に新聞記者として社会面・政治面・芸能面に書いていた記事ですら今もって面白いとの評判を得て、幾冊もの本にまとめられている。日本でもその一部が、『幸福な無名時代』(筑摩書房、1991年)と『ジャーナリズム作品集』(現代企画室、1991年)として刊行されている。
いずれにせよ、「英雄」として受け入れられることを期待した帰還兵が、或る疎外感をもって追いつめられてゆく過程が見事に写し出されている。それは、韓国の優れた作家、黄皙暎が、ベトナムに出兵して「ひと儲けした」韓国軍の帰還兵が祖国で味わう疎外感を描いた「駱駝の目玉」(中上健次編『韓国現代短編小説』、新潮社、1972年)に通じる世界である。 休戦協定締結後60余年経って開催された国際会合で、政治家たちは、日本国外相の先の発言に象徴的な、虚しい言葉を吐いて悦に入っている。過去の戦争も、現在の戦争も、「来るべき」戦争も、この政治家たちの目線で捉えてはならぬ。朝鮮半島で生まれた無数の犠牲者たち、国連軍と中国人民解放軍の名の下に派遣された、これを機に「ひと儲け」を企んだかもしれない下層兵士たちが受けた傷口からしか見えてこない戦争の実相がある。そこへ向かって「想像力」を伸ばすことのほうが、「時事」だけに拘るよりは得るところが多い、と私は思う。 〔著者プロフィール〕 Created by staff01. Last modified on 2018-01-25 15:34:49 Copyright: Default |