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労働の本質を実感から鋭く〜プレカリアート・コミック『働く、働かない、働けば』

●巳年キリン著 (三一書房)1300円+税 評者=壱花花

 アベノミクス? 好景気? 就活の売り手市場? どこの世界の話だろう。著者はもうすぐ不惑の年を迎える就職氷河期世代。カギカッコ付きの好景気の恩恵に、かすりもしない。派遣で工場へ働きに行っては、誰もいないアパートの部屋に帰る毎日。心身共にすり減らして「今週末こそ片付けよう」と思いながら、モノが散乱する部屋の中に倒れこむ。

 同世代で、日雇で糊口をしのいだこともある私にとっては共感できる「あるある話」も多々あるが、想像を超える厳しい状況に著者が置かれていることも伝わってくる。「家で過ごすと電気代かかる」「図書館あったかいかな」。そして著者の視線は、身の回りの半径数メートルから、その先へと広がって行く。職場に一人や二人はいる「がんばりたい人」「優等生でいたい人」が団結の萌芽を摘むこと。労賃の安売り競争をしている派遣業者たちを見て「何を買い叩かれているんだろう」。

 会社は労働者が労働力を提供しているから利潤を生み出せているのに、まるで「無」からお金が生まれて労働者に賃金を与えているような錯覚への疑義。

 漫画のタッチはかわいらしく、語り口はボソボソとつぶやくように控え目だ。だが、働くことの意味や労働の本質を、実感の中から鋭く突き詰めている。それはどんな研究書や解説書よりも「強い」のではないだろうか。

 「働き方改革」などという甘い言葉に惑わされそうになった時、「なぜ」「何のために」「誰のために」「誰を幸せにするのか」と原点に戻って問い続けることは、ブレない強さを培う。都合よく働かせたい人々にとっては煙たい存在かもしれないが。

 本書の後半で、セーフティネットの活用や、労働者同士の連帯の可能性を示している点も、希望を感じる。

https://31shobo.com/2017/09/170065/

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