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「堺市長選」維新が勝てば大変なことになる〜教育労働者は訴える

 大阪府堺市の市長選投票日が今週末9月24日に控えています。2年前の大阪市での住民投票で否決された「都構想」を再度企てながらも、それを隠して選挙に臨む、維新候補の元府議・永藤英機氏と、現職・竹山おさみ氏(写真)の接戦が伝えられています。以下は、大阪教育合同労組元書記長(現堺支部執行委員)・竹林隆さんによる、堺市長選に関する論考です。地方自治法改正により、政令指定都市に対する権限移譲が2017年4月に行われました。竹林さんが所属する教育合同堺支部は、権限移譲に向け、一昨年度から集中的に堺市・堺市教委と団交を重ねて来ました。だからこそ見えてくるものは何か、堺市長選で万が一維新の候補者が市政を担うことなった時に何が待ち受けているか具体的に考察されています。(O)

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堺市長選で問われていること――竹林隆

 以下のことはどこまで知られているんだろうか。

 もともと堺市立学校の教職員の服務監督権(日常業務や服務について指示・監督する権限)は堺市にあったし、堺市が政令指定都市になってから、任免権(教職員を雇用したり人事配置する権限)も大阪府から堺市に移された。けれど、それでも府費負担教職員と言って堺市立小中学校の教職員の賃金負担者・支払者は大阪府のままとなっていた。

 そのため、2008年の橋下府知事誕生以降、それ以前からあった府の教職員に適用された人事査定制度(「評価・育成システム」)を悪名高い「教育基本条例」「職員基本条例」などとリンクさせて、教職員を競争させて査定結果で大きく賃金に差をつけさせ、同一懲戒処分3回で首にするとんでもない賃金制度に縛られてきた。

 こうして、維新登場以降、府の教職員の賃金水準は大きく低下して全国最低水準となり、また、賃金の低さと現場の息苦しさを嫌ってこの数年、大阪府の教員採用試験の合格者の辞退率は急上昇だった。

 しかし、今年2017年4月以降、地方自治法の改正によって政令指定都市に対する権限移譲がおこなわれ、賃金負担も堺市となった。その結果賃金制度も堺市が独自に設計できることになった。

 そこで堺市は英断をした。府(維新)が執着していた人事査定制度(「評価・育成システム」)から離脱し、評価制度自体は残しつつも、評価と賃金とのリンクをやめた(唯一一時金とのリンクは残っている)。また、悪評高い「授業アンケート」による評価への反映もやめた。

 つまりこの結果、堺市の教職員は府立学校およびすべての府内市町村立学校の中で唯一、査定結果で賃金が左右されず、また「府職員基本条例」「府教育基本条例」「君が代強制条例」に縛られず、教育労働に打ち込むことができる環境となったのだ!

 なんといっても、堺市教育委員会は府の教育基本条例制定時に公式に反対声明を出したことがある教委だ。

 それに、今年話題になった来年度小学校で使用の「道徳」教科書の採択の教委定例会の傍聴に行ってきたが、「アベ教科書」・「道徳版育鵬社教科書」と揶揄される教育出版の教科書には目もくれず、参加した教育委員からも「光村図書の教科書には谷川俊太郎訳の世界人権宣言が掲載されていることが極めて重要。これが掲載されている教科書を推したい」「他の教科書が子どもへの発問などが掲載されたり、そのための別冊ノートがつけられているが、これはかえって子どもの自由な思考を阻害する。教員にとってもそのような発問や別冊ノートなどがない教科書のほうが評価のための授業に縛られず自主的授業が展開できる」などの声が続出して全員一致で光村図書出版の教科書が採択された。

 堺市長選挙で万一維新が市政を乗っ取るようなことがあれば、以上書いたような現在の状況が崩されることは目に見えている。

 一方、同じく権限移譲によって独自の賃金制度を構築できるようになった大阪市では、維新市政の下、なんと、37歳までに上級職の試験に合格しなければ教諭はそれ以降60歳まで昇給なし、というトンデモ賃金制度を導入しようとしている。

 労働者の立場からも、国家主義教育に反対する立場からも、今回の市長選でどちらを選んだらいいのか、もはや明らかだ。

 これらのことはもっと広められていいことだし、広められなければいけないことだと思う。


Created by staff01. Last modified on 2017-09-20 18:26:23 Copyright: Default

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