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胎動を強く感じたレイバー映画祭〜涙が止まらなかった『原発の町を追われて3』

     フクシマ陽太郎

*『原発の町を追われて3』より

 原発事故後から毎年参加して全映画を観ている。必ずすばらしい映画に出会えて、感動し感銘できる。いつも感心するのは映画を選ぶ選択眼がすばらしいということだ。企画力がある。成功が何かは定義によろうが、成功に導きたいという熱いハートがある。今年は300名も多数が参加し、若い人が多かったということを喜びたい。

 また、今年分かったことは、主催者の方々が3分間ビデオや映画を撮ることに指導的な役割を果たしていることだ。それがひいては変革の武器となって、運動の潮流を少しずつ確実に育んでいる。何か胎動を強く感じた。これは凄いことだとつくづく感心した。今年の映画で何と言っても私が最高と思う映画は『原発の町を追われて3〜双葉町・ある牛飼いの記録』だ。この監督(堀切さとみさん)の第1作にもビデオの指導が確か松原明とあった。ビデオプレスの方である。活字の専門家、映画評論家木下昌明氏がビデオカメラに持ちかえた作家となったのもビデオプレスが関わっていた。今や木下氏は『ペンとカメラ』と言う本まで出した。

 さらに映画は文学と同じく大文字の大テーマから、日常を生きるというささやかな内容まで実に幅広く深いメディアだと今回の映画祭で強く感じた。『標的の島〜風かたか』という大問題を見事に撮ったものから『中村さん』までどれもが優劣や、ベストテンなどを付けたくなくなるほど、それぞれ大事な重さを持っている。大スペクタクルではなく、さほど予算をかけなくても、『コンビニの秘密〜便利で快適な暮らしの裏で』のようにこの日本社会が寒々としたあこぎなものではないかという強い疑義を抱かせる作品が上映された。映像の可能性に大いに感じいった。

 『標的の島』を木下昌明さんがベストワンに推している。非暴力の戦いであること、だから敗れることがある。けれども何度でも闘いに立ち上がる。ここが高い評価の視点である。映画評を読んだ後に観たのだが、そこでわかったのは、批評もまたまぎれもない評者の思想の表現だということだ。

 その意味で『トゥジェン!〜韓国サンケン労組は行く』もまた素晴らしかった。闘いに立ち上がろうという強いメッセージを送ろうとするのがこの製作者の特徴だ。変革や運動を盛り上げようという熱い思いが伝わってくる。闘う人の闘う人生の中の苦しみや喜びを描く。応援歌を作っているのだ。

 製作者や出演者がたくさん登場したプログラムの構成もとてもよかった。休憩時に流された『ジョリモーム』の音楽をバックにしたダンス?はあまりにも素敵で何度でも見たかった。また創価学会を除名された青年の演説に感激して本を買って一晩で読んでしまった。この闘いも美しくて凛々しい。


*『原発の町を追われて3』制作者の堀切さとみさん(左)と鵜沼久江さん

 私は『原発の町を追われて3』の映画の間中、次の映画に変わっても涙がとまらなかった。だから、『標的の島』がかすんでしまったのかもしれない。涙の質をつまりこの映画どうして素晴らしいかが簡単に分析できないでいる。しかし、牛飼いが双葉町を原発に追われたこと、新しい町で畑作、稲作で生きていくこと、すべての艱難辛苦や深い悲しみを実にきめこまやかに低い目線で描いていく。夫の遺骸にすがる場面など撮らずに、牛の白骨を愛情込めて撫でさする場面を撮った。では怒りはどこにあるのか。鵜沼久江さんの珠玉の名言をつなげていけば感じることができる。生きることの重さがずっしりと伝わってくる。原発大事故の不条理がよくわかる。かえって、原発反対に真っ直ぐ結びつけなかったところがこの映画の素晴らしさだと考える。これは大変な映画が、凄い監督が誕生したと一人勝手に確信した。

 レイバー映画祭に感謝をしたい。ささやかでも声をあげて、これからの一年をそれなりのたたかいをして生き、来年またこの映画祭に来たい。(福島県在住)


Created by staff01. Last modified on 2017-07-26 11:33:57 Copyright: Default

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