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LNJ Logo 〔週刊 本の発見〕『スノーデン 日本への警告』(大西赤人)
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第1〜第4木曜掲載・第12回(2017/7/6)

一般市民に対する地球規模の「監視」

●『スノーデン 日本への警告』(エドワード・スノーデン他、集英社新書、720円)/評者=大西赤人

 二〇〇二年の『ボーン・アイデンティティー』に始まり、元CIAの暗殺要員だったジェイソン・ボーンを主人公とする大ヒット映画シリーズがある。最近は意匠に凝り過ぎて食傷気味の感なくもないが、特に世界中に張り巡らされたCIAを中心とする情報網の凄まじさには圧倒された。世界の一角に設置された監視カメラの映像、携帯電話の通話、パソコンへのログインなどを手がかりに、瞬時に対象者の所在を突き止める。そんな光景を観ながら犲尊櫃鵬椎修覆里世蹐Δ吻瓩抜兇犬弔帖同時に、爐任癲⊇蠢Г魯▲ション映画の虚構の中だし瓩隼廚つ召紘分もあった。しかし、本書を読むと、それらがほぼそのままリアルな日常となっている現実を突きつけられる。たとえば、個人が携帯電話やインターネットを利用した全記録はメタデータ(個々の内容の詳細ではないが、大まかな総合的概要)として保存されており、後日、何らかの必要・嫌疑が生じると、遡って利用され得る。

 「【9・11を契機に】罪を犯したという疑いがある人だけではなく、あらゆる場所であらゆる人を監視対象とするようになったのです。これが可能になったのは、テクノロジーの進化によって監視が安く、簡単にできるようになったからです」(スノーデン)

 二〇一三年六月、元米国情報局員だったスノーデンは、米国政府がテロ防止を名目に一般市民に対する地球規模の「監視」を行なっていることを暴露し、世界を驚かせた。その経緯は、先頃公開された『スノーデン』(監督=オリバー・ストーン)でも描かれていたが、そもそも彼は反米・反政府的な人間ではなく――むしろ、その逆であり――、米国の然るべき民主的な姿を再構築するため内部告発に踏み切っている。

 東西冷戦構造の崩壊後、テロ防止は大義名分・金科玉条と化した。テロ防止という目的のためには、個々の人権は阻害されても当然であり、併せて、猗蛤瓩房蠅鮴めなければ、後ろめたくなければ、人としてプライバシーの侵害を恐れる必要はないはずだ瓩箸いΔ茲Δ文誓發常に押し出される。

 「マス・サーベイランスに関与する官僚は、『隠すことがなければ恐れる必要はありません』と述べて監視を正当化します。このような説明は第二次大戦中にナチスのプロパガンダで用いられていたレトリックとまったく同じです」(スノーデン)

 本書は著者としてスノーデンを謳っているものの、彼の直接の登場部分は、第一部の二〇一六年六月に東大で開催された(ロシアとの中継による)シンポジウムの採録のみであり、第二部は当日追って行なわれたパネリストによる討論、第三部はスノーデンの法律アドバイザーであるベン・ワイズナー弁護士の本年二月時点における補足的な話。従って、スノーデン自身の言葉を期待して読むと、いささか物足りない面もある。とはいえ、他の人々の発言も大いに示唆に富んでおり、確固たる問題意識・危機感を有するそれらの見解を読んでいると、特定秘密保護法が平然と成立し、共謀罪法案もゴリ押しで通って行く日本の状況が、いっそ幻影のようにさえ感じられてくる。

 「私たちの政治制度では、すべての政治的なインセンティブが、恐怖を煽る人に見返りを与え、沈黙を推奨する人には罰を与えるように機能しています」(ワイズナー)

 たしかに米国では過剰な「監視」が実行されていたが、少なくともそこに自発的な犹止め瓩発生した。翻って日本では、そのような力が発揮され得るのか、心もとない想いに駆られる。

 ちなみに、共謀罪法案を懸念し安倍首相に公開書簡を送ったジョセフ・ケナタッチ国連特別報告者について、日本政府は猝世蕕に不適切甅犇砲瓩動箚賢瓩塙概弔掘↓犖朕佑了餝吻甅犢駭△料躇佞任呂覆き瓩緋覆瓩砲かった。しかし、その問題が出る前に発行された本書には、「二〇一五年七月、国連人権理事会は、プライバシーに関する特別報告者を新たに選任しました。特別報告者とは独立の立場から特別な人権課題を調査し報告する専門家です。初代報告者にはジョセフ・ケナタッチ教授が三年の任期で選任され」(註)などの記述がある。

*「週刊 本の発見」は毎週木曜日(第1〜第4)に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美です。


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