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よく錬られた素晴らしい放送〜レイバーネットTV「死刑制度を考える」

放送アーカイブ(74分)

 5月10日のレイバーネットTV「死刑制度を考える〜『国が人を殺す』ということ」は、よく錬られた素晴らしい放送だった。反論の余地がない正しいことが並べられていたからではない。ただでさえ死刑制度を話題にするのは難しい。「死刑囚にも人権はある」「戦争も死刑も人殺しだ」と言っても「被害者のことを考えないのか」「人を殺したんだから死刑は当たり前」と言われれば、それで話は終わってしまう。

 今回、死刑を取り上げようとしたサブ司会の笠原眞弓さん、そして死刑制度をテーマに映像制作をしてきた坂上香さんも、もともとは「何となく反対」だったに過ぎないという。そんな人たちが「どうしたら議論できるか」「どうしたら関心を持ってもらえるか」を考えぬいて作られたのがこの番組だ。メイン司会の山口正紀さんのリードが光った。


*2016年死刑執行国(アムネスティより)

 国連加盟国の三分の二が廃止。ヨーロッパでは民意で賛成派が多くても政府の力で廃止した国もあるほどだ。しかしそんなことを言ってみたところで、日本で死刑を廃止することはおそらくないだろう。でも、制度を変えることよりも大切なことがあるのかもしれないと、番組をみていて思った。死刑というのは、自分にはまったく関係ないと思う最たるものだが、この「関係ない」閉ざされた世界をオープンにし、関心をもってもらうことはできるのだ。太田昌国さんと坂上香さんが紹介するエピソードは、どれも興味深く魅力的だった。

 私自身も新聞で、弟を殺された兄が犯人との文通を通じて「死刑にしないでほしい」と訴えたという手記を読んだことがある。結局死刑は執行されてしまったが、この兄のような人がいることがとても嬉しかったのを思い出した。「死刑は犯罪の抑止力になる」とか「執行によって被害者の感情を落ち着かせることになる」といった図式が、必ずしも正しいものではないということ。凶悪犯罪を犯した人でも100%悪なのではないし、人間は変わりうる。それを垣間見ることができるのは人生における大きな喜びだし、そうでなければ小説も映画もいかなる文化も成立しないと思うのだ。

 それでも「知りたくない」という人はいるだろう。死刑問題の授業をしても「死刑賛成!」「偽善者ぶるな」と吐き捨てるように書く学生もいると、大学で教える坂上さんは言う。自分なりに考え抜かれた「賛成」なら新鮮な意見として受け止め対話できるのに、と。知りたくない国民、知らせたくない国家。福島も同じだと思う。安全かそうでないかの議論は「不安を煽るな」という圧力によって、「知りたくない」「考えたくない」が正当化されていく。伝える側もいつしか「これはタブーかも」と委縮してしまいがちだ。

 そんな中で、坂上さんは思考停止の学生にどうしたら届くのか、考え続けているという。被害者にとって良かれと思って発したある言葉を、思いきり批判された経験が彼女を鍛えたのかも知れない。私が一番希望を感じたのは坂上さんのそんな姿だった。〔有森あかね〕

↓放送終了後の記念撮影

↓冒頭に「共謀罪反対」行動のニュースを尾澤邦子さんが伝えた

*写真撮影=小林未来


Created by staff01. Last modified on 2017-05-12 09:37:14 Copyright: Default

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