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社会そのものが「ブラック化」していた!〜竹信三恵子著『正社員消滅』を読んで

      派遣労働者 渡辺照子

 安倍首相は「非正規という言葉をなくそう」と演説した。大手人材会社の会長、竹中平蔵氏は「正社員をなくせばいい」と発言した。両者は正反対のようで実は同じことを言っている。「正規・非正規」は二者間での相対的なもの。全労働者が非正規になればその二者は存在しない。労働者の生殺与奪権を掌握するキーパーソンたちは、労働者からあらゆる権利を剥ぎ取る点で一致している。その現実をつまびらかにしたのが本書だ。

 店長がパートの大手スーパー、公務員の非常勤化、正社員がいない職場での非正規同士のつぶし合い、過労自殺まで生むブラックバイト、正社員に課される人権侵害の研修、人材会社に侵食されるハローワーク、ロックアウト(締め出し)解雇、自営業のホスト、AI(人工知能)に便乗した個人事業主化、等々。一過性で報道される記事では断片的すぎてわからない。専門的に細分化された研究論文は一般的に流通していない。だが、本書は具体的事例と共にその構造、背景をも示してくれる。当事者、ユニオンの専従、研究者等々の言動を織り交ぜながら全体像を展開してくれる。だから、雇用状況全般を把握するにはうってつけなのだ。

 安倍政権が繰り出すまやかしの言葉を喝破する様が見事だ。「『同一労働同一賃金』ではなく、同一義務同一賃金だ」。「規制改革会議は『解雇しやすさ相談会』」。限定正社員は「解雇のしやすい正社員」。「雇用法制の人権条項を『既得権益』と名づけてドリルで穴をあける正社員消滅作戦」。本質を明示する鋭さは最後まで続く。

 読むと感じる。社会そのものが「ブラック化」したのだと。私たちのほとんどが働くことでしか生きる術はない労働者だ。その労働者を、政府と企業はコストとしてしかとらえていないのだと。会社がブラックなら会社を辞めればよいかもしれないが、自分が生まれて育った国、生活する社会である場合、なかなかそうはいかない。その危機的状況に敏感になるべきだと著者は警鐘を鳴らしている。「会社も大変だからわがままはいけない」という我慢、「生存権などのんきなことは言えない」というわけしりの態度、「自分だけは大丈夫」という自信、そんな錯誤を諌めているのだ。

 しかし、それだけに終わらない。生き延びる策を示し、読者を置き去りにしない。自分の法律顧問を持つこと、働き手のネットワークをつくること、働き手目線の改革を提唱すること、等々、具体的で希望の持てる方法を掲げている。

 正しく現実をみすえることで危機を打開する、「正社員消滅」というショッキングなタイトルはそれを教えてくれるのだ。

*『正社員消滅』(朝日新書・2017年3月・竹信三恵子著・821円)


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