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 第39回・2016年10月24日掲載

原子力と民主主義は共存できない〜欠陥だらけの「第3世代」原発

 去る10月1〜2日、欧州加圧水型炉(EPR)を建設中のフラマンヴィル原発(フランス北西部のコタンタン半島)付近で大規模な抗議行動が催され、各地から反原発団体や環境保護団体グリンピース、緑の党、仏左翼党、反資本主義新党などが参加した。7月に延長された「緊急事態」下にもかかわらず、地元の反原子力市民団体、労働組合、政党などが中心になって、1日に集会・デモとコンサート、2日は原発と再生可能エネルギーについての講演会が開かれた。地元ノルマンディー、北西部ブルターニュ、ロワール地方の参加者が多かったが、パリや、はるばる核廃棄物最終処分場に予定されている東部のビュールやアルザス、南仏、イギリス、ベルギーから訪れた市民もいた。1日のデモは途中、雨と強風、雹に見舞われたが、EPRを建設中の原発の入口まで約5000人が元気に歩いた。

 EPRは、原子力政策の破綻と理不尽を端的に表している。フランスの原発58基はすべて加圧水型原子炉(PWR)で、1971年〜1991年に建設が開始された。そのうち42基は今年で稼働年数が30年を超える。EPRは老朽化するこれら原子炉(第2世代)に替わる、より強力で安全な「第3世代」炉という名目で、1992 年に開発が決定された。初めは、アレヴァ社の子会社アレヴァNP社となったフラマトムと、ドイツのシーメンスの仏独共同計画だったが、シーメンスは後に撤退した。2005年からフィンランドで建設中のオルキルオト3号機も、2007年に建設が始まったフランスのフラマンヴィル3号機も、さまざまな問題が生じて建設が遅れ、費用は膨れあがり、いまだに完成していない。

 種々の問題のうち、まず技術的な欠陥がある。2015年4月、フランスの原子力安全局(ASN)は原子炉容器の蓋と底の部分に「重大な異常がある」と発表し、世論に大きな衝撃を与えた。鋼鉄中の炭素濃度が高すぎる箇所(炭素偏折)があり、耐性の欠陥(壊れやすい)が発覚したのだ。

 問題の部品は仏原子力大手アレヴァの子会社で原子炉製造を担うアレヴァNP社(旧フラマトム)系列のクルゾー・フォルジュ社により、2006年9月に製造された。EPR建設を定める政令が発布された2007年4月以前にこの部品が製造されたこと自体おかしいのだが、アレヴァはこの欠陥を知っていたはずなのに、ASNに告知されたのは2014年末だったという。その上、ASNが要求した追加検査の結果が出る前に、EPR建築・施工主のフランス電力(EDF)は蓋を今年の2月に運搬し、設置した。原子炉容器自体は2014年1月にすでに設置され、底は他の部品に溶接されている。つまり、部品を交換することになっても、蓋はともかく、溶接された底の交換は技術的・財政的に甚大な困難を伴い、可能かどうかもわからない。

 EPR部品のあまりに重大な欠陥に不安と不審を抱いたのか、ASNは2015年4月にアレヴァとEDFにクルゾー社の製造について全体的・徹底的な調査を要求した。その結果、クルゾー社と日本の鋳鍛鋼株式会社(JCFC)が生産した部品について87の「不正」が発見された、と今年の5月にASNは発表した。フランスで稼働中の原子炉18基の蒸気発生器の底などに、EPRの蓋・底と同様に炭素偏折のある部品が使われたことがわかったのである。ちなみに、日本の原子炉も13基、欠陥部品を使っていた(9月12-13日に東京で会合が開かれ、日仏両国の原子力安全当局は共同調査を行うことに同意)。

 さらに重大なことに、第三者機関による監査によって、部品テストなどの報告書に偽造があったことが発覚した。現在明確になっただけでも、1965年以来製造された400の書類(部品)に不正(悪い結果を正常値に近づけるなど)があったという。今年の7月、ASNはフェッセンハイム2号機の蒸気発生器に2012年に与えた使用許可を停止した(2号基は同年6月、EDFによって停止)が、それは2008年にアレヴァが製造させた部品が仕様書に異なる事実が発覚したからだ。これら不正部品についての追加検査は今年の末まで続けられ、文書監査はさらに長期間にわたって行われる予定だ。また、今年の3月、ノルマンディー地方にあるパリュエル原発の2号基で、老朽化した蒸気発生器が取り替え作業中に墜落するという事故が起きたが、原発業界ではこれは「想定外」の事故とされていた(フランス原子力業界ではこれを「排除の原則」と呼ぶ)。10月中旬、これら検査のために稼働停止になった原子炉を含め、フランスの原発は21基止まっていたが、10月19日にASNはさらに5基の停止を要求した。

 こうした技術的欠陥は原子力産業の技法喪失を表す、と原子炉物理学者でエネルギー効率化・節約分野の専門家、ベルナール・ラポンシュは述べる。フランスのPWRはすべてアメリカのウェスティングハウス社と合併したフラマトムが製造したが、1996年に最後の原子炉が完成して以後、この会社(シーメンスと合併後、アレヴァに吸収される)は建設中のEPR以外、一基も原子炉を製造していない。製造部門にかかわらず、EDFでも原子力分野の熟練技術者の世代は引退し、ノウハウが失われたと懸念されている。さらに、国家が筆頭株主であっても近年、原子力産業の指導陣は市場経済論理のみを優先し、技術的な知識や安全性に対する意識が後退した。

 さて、EPRについては原子炉容器の部品以外にも、種々の技術的欠陥が問題にされている。たとえば、プルトニウムを11%含むMOX燃料(現在のものより多い)を100%使う予定だったが、MOX燃料はウラン燃料より放射能汚染がひどく危険性も高いことがわかっており、EDFも乗り気でない。別タイプの低濃縮ウラン燃料のテストは、ことごとく失敗した。また、万一炉心がメルトダウンしたときのために考えられた炉心溶融物の「受け皿」についても、水蒸気爆発を起こす危険があると指摘されている。

 EPR建設の過程では、下請け労働者の安全管理(2011年に2人死亡)や、外国人労働者の不当雇用の問題も生じた。大手土木企業ブイーグと下請け3社は2008〜2012年、460人のポーランド人とルーマニア人の雇用における不正で2015年7月に有罪判決を受けた(ブイーグは控訴し、裁判が今年の11月に行われる)。

「現在、工事現場では4000人が働いていますが、何重もの下請けによる劣悪な労働条件です。外国人労働者はそのうち18%を占めます。稼働したら原発で働く人は1基で300人程度。ラ・アーグ再処理工場で最後の工事が終わってから、この地方の失業率は18%と高く、女性にはとりわけ職がない。原発が雇用を生み出すなんて嘘です。原子力産業一辺倒になってしまったから、恒常的に失業率が高いのです」と、1970年代から地元で反原子力運動を続ける市民団体クリラン(CRILAN) の代表、ディディエ・アンジェは指摘する。「最初の予算(33億ユーロ、約3800億円)を再生可能エネルギーの発展に使っていたら、地元に1万人分の雇用がつくれたのに」と、フランス脱原発全国網のメンバーも語る。

 EPR計画のもう一つの大きな破綻は、建設に膨大な費用を要して、現在の電気料金では採算がとれないことだ(現時点では稼働するかどうかもわからないが、想定では60年間稼働)。フィンランドのオルキルオト3号機の工費は当初30億ユーロだったが、稼働予定を7年超過した今では86億ユーロに見積もられ、完成は2018年と見込まれている。フラマンヴィル3号機の工費の見積もりは、3倍以上の105億ユーロ(約1兆2100億円)に膨れあがった。政令が定めた稼働開始期限が2017年4月で切れるため、EDFは3年の延長を要請している。

 アレヴァはEPR建設の遅滞だけでなく、カナダのウラニウム会社の不適切な買収スキャンダルなども起きて、2015年末には63億ユーロの赤字となった。2016年、政府が50億ユーロ出して増資、製造部門のアレヴァNPはEDFが買い取った。ところが、EDFも2015年に負債が375億ユーロ(別の計算の仕方で、その2倍以上という説もある)ある上、老朽化する原発の点検・修理・部品交換などに今後、550億ユーロ〜1兆ユーロ必要だとされている。

 そんな状況なのに、EDFの指導陣と政府は、英国のヒンクリーポイントC原発(EPR2基)の建設(中国広核集団と共同)計画を強硬に進めた。見積もり212億ユーロのうち160億ユーロをEDFが出資するこの計画が、当社の財政破綻をよぶことを怖れて、原発推進派のEDFの労働組合が初めて反対を唱えた。同じ理由で財務部長が今年の3月に辞職したが、6月末、EDFの理事会は建設を決定した(理事の一人も抗議して辞職)。そして、英国政府も去る9月、ヒンクリーポイントC原発建設を許可したのである。計画の支配権をもつEDFに対して英国が35年間保障する電気料金(1メガワット時につき92,95ポンド)は、EUの平均値や風力発電価格より高いという、英国民からみても理不尽な決定だ。

 このように、原子力推進政策は経済論理さえ通用しない国家の意志によって強行されるようだ。そして、原子力に関しては民主国家の原則や法律違反が行われても国家は目をつぶるだけでなく、自らが規則を破る。前述したEPR建設現場における安全無視や労働法違反は、ASN(原子力安全局)に属する労働視察官ふたりによって発見された。今年の10月、インターネット新聞メディアパルトは、この視察官ふたりがEDFと上司から強い圧力を受けて「燃え尽き症候群」に陥り、休職したことを暴露した。その記事には、EDFが法を犯して規則に反する設備を工事現場で使用するのを、ASNの指導部が許可したことも述べられている。原子力設備の安全監視のために「独立機関」であるはずのASNは、資金不足(人員も不十分)の問題だけでなく、メンバーは原子力推進勢力から絶大な圧力を受ける、とベルナール・ラポンシュは語る。

 ところで、EPR建設に反対する市民運動は2004年からノルマンディー、ブルターニュ、ロワール地方に広がり、共闘組織ができた。当時の政府(保守ドヴィルパン内閣)は2005年7月、エネルギー方針法の中でEPR建設を制定し、「公衆討論会」はその後の10月〜翌年2月に行われたため、反対派の多くはまやかしの討論だとボイコットした。2006年4月にシェルブールで行われた抗議デモには、全国から25000〜30 000人が参加した。しかし、同年7月後半(ヴァカンス期)に「公益調査」が行われ、EPR建設の政令は2007年4月、大統領選挙の第一次と第二次投票のあいだに発布された。ちなみに、核廃棄物最終処理場に予定されているビュールでも、国の核廃棄物処理機関(ANDRA)は付近の林を買収し、未許可で森林法に反して木の伐採を始め、反対派が訴えた行政裁判所から今年の8月、作業中止の判決を受けた。原子力分野ではこのように、国家は法律を犯してでも既成事実をつくるのである。

 EPRの重大な部品問題についても、環境省は昨年の12月30日(クリスマス休暇中)、「環境法を満足させない加圧水型炉の設置・稼働をASNは許可することができる」という条項が入った政令をつくり、今年の1月3日に発布した(クリランをはじめ市民団体が国務院に異議を提出している)。「お墨付き」を得たEDFは前述したように今年の2月、検査の結果を待たずに欠陥のある原子炉容器の蓋を設置したのである。

 「原子力と民主主義は共存できないのです。反原子力の闘いは民主主義のための闘いです。分裂して弱体化した反原子力運動を今、再建しなくてはなりません」と、40年以上コタンタン半島で運動を続ける77歳のディディエ・アンジェ(フランス緑の党の創立メンバー、欧州議会議員も務めた)は語った。(2016年10月23日・飛幡祐規/たかはたゆうき)


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