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人間は自然の一部〜『水と風と生きものと』村田チーフが魅力語る

    林田英明

 「シブい映画ですから」と照れ笑いを浮かべる。『水と風と生きものと〜中村桂子・生命誌を紡ぐ』を企画した生命誌研究館チーフの村田英克さん(53/写真)だ。8月の東田シネマ(北九州市八幡東区)にゲストとして同映画を冒頭で解説、中村ワールドの魅力を訴えた。

 研究館は1993年、大阪府高槻市にJTが社会貢献の一環として建設。館長の中村さんの構想を全面支援した。38億年前に生まれた祖先を出発点に、それぞれの生きものが進化し、現在の地球生態系はつくられている。その生命の歴史を読み解く狙いで、30人ほどのスタッフが研究に励む。自然、生命、人間を考える場である。

 映画は、研究館20周年に向けて4年前から撮り始めた。「私の50年でもありまして」と村田さんは、ちゃめっ気を見せる。先祖に弁士も含め映画関係者がいて、どうやら“DNA”が働いたようだ。1年かけて研究館を紹介する短編はできた。しかし、村田さんは長編を作りたい。東日本大震災後、宮沢賢治を読み直した中村さんが「生命誌版 セロ弾きのゴーシュ」の舞台化に踏み切った。「これで生命誌の輪を広げられる」と思い、藤原道夫監督の手腕により119分にまとめることができた。昨年9月の公開後、ミニシアターを中心に北は北海道から南は鹿児島まで、すでに25カ所以上で上映あるいは予定されている。「正直、こんなにたくさん、かけてくれるとは思わなかった」と村田さんは目を丸くする。

 どこに、人を引きつけるものがあったのだろうか。中村さんが各地を旅して、さまざまな人に会う。被災地の子どもたちに絵本を届ける「3・11絵本プロジェクト」を続ける末盛千枝子さん、物質至上主義のグローバル社会に疑問を発する建築家の伊東豊雄さん、風や水で動くアートを通して明日の地球を考える造形作家の新宮晋さんらとの語らいに味がある。「このままでは、地球は壊れないけど人間が壊れますね」と危機感を抱く中村さんの訴えたいメッセージは「人間は生きものであり、自然の一部である存在」。だからこそ、自然とのかかわりの中で「いのちの音」に着目する賢治の「セロ弾きのゴーシュ」の世界観が心を離さなかったのだろう。

 村田さんは熱を込めて説く。「中村館長の魅力は活字にしても十分には伝わらない。映画で語る生きた言葉を一人一人が感じとって明日に生かしてもらえたら」。そう、科学者であり、生活者である中村さんの長年の歩みが、見る者に今の社会への静かな疑念を解消する指針を与えてくれるのだ。経済成長を支えるだけの科学でいいのか。狭い専門性から飛び出した中村さんの行動と言葉が、この映画を温かく、心に残るものにしている。

※写真=生命誌研究館の出張展示の前に立つ村田英克さん


Created by staff01. Last modified on 2016-09-12 17:05:52 Copyright: Default

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