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「刑事訴訟法等の改悪を許さない緊急集会」に300人

 2016年5月10日/市民・法律家・刑事法研究者8団体共催   報告=山口正紀

 取調べの部分録画(ニセ可視化)、盗聴法の大改悪、司法取引導入など、冤罪を助長し、市民の人権を根こそぎ侵害する治安立法〈刑事訴訟法等の改悪を許さない緊急集会〉が5月10日夕、参議院議員会館講堂で開かれ、約300人が参加した。

 集会は、参議院法務委員会での法案審議が緊迫する中で、市民2団体、法律家5団体、刑事法研究者1団体の計8団体が初めて共催。冤罪被害者、弁護士、研究者、国会議員などが、与党が企む法案の強行採決阻止に向け、それぞれの決意を語った。

●今市事件の弁護人が「部分録画」の危険性訴え

 メディアが「可視化法案」と報道してきた法案の「部分録画」を先取りして、その危険性を明らかにしたのが4月8日、宇都宮地裁で言い渡された栃木・今市事件の判決だった。物証のないこの事件で、判決は「客観的事実のみから被告人の犯人性を認定することはできない」としながら、取調べの一部を録画した映像によって「自白には任意性・信用性が認められる」として有罪認定した。これについて、被告人とされたKさんの弁護人・一木明弁護士が集会で特別報告を行ない、「本来無罪になってしかるべき事件。法案がこのまま可決したら、今市事件のようなことが次々と起きる」と訴えた。

 報告によると、Kさんは事件発生(2005年)後、1年2か月間に3回にわたって警察の事情聴取を受けたが、その後は何の動きもなかった。ところが2013年7月に身辺捜査が始まり、栃木県警は2014年1月、骨董品露天商を営む母親の仕事を手伝っていたKさんを商標法違反で逮捕。その起訴後に、殺人事件で自白を迫る取調べを行ない、自白させた。

 「Kさんは台湾生まれで日本語が不自由。不登校、いじめで引きこもりがちな少年時代を過ごし、社会性、コミュニケーション力が低かった。それが警察に狙われた」と一木弁護士は言う。法廷では「自白録画」の映像が再生されたが、最初の自白をしたとされる第1回の取調べの録音録画はない。また、Kさんは公判で「捜査員に『認めなければ死刑になるぞ』などと脅された」と訴えたが、その脅迫・誘導取調べの映像も「ない」とされた。

 一木弁護士は、「法案では、録音録画の対象は裁判員裁判事件などに限られている。殺人事件でも、最初は裁判員裁判にならない死体遺棄事件で取調べし、自白させた後、殺人事件として録音録画すればいい、ということになる。自白の映像はインパクトが強く、極めて危うい。これで判断していいのか」と、「部分録画」の危険性を強く訴えた。

●「録画するなら1から10まで」と、東住吉事件の冤罪被害者・青木恵子さん

 続いて、現在再審公判中の東住吉事件の冤罪被害者・青木恵子さんが、布川事件冤罪被害者・桜井昌司さんとともに登壇、「密室の取調べ」の怖さを訴えた。

 青木さんは1995年、長女に保険金をかけて焼死させたとして内縁の男性とともに殺人容疑で逮捕され、虚偽自白させられた。裁判では無実を訴えたが、2006年に無期懲役刑が確定。その後の再審請求で、「火事の原因はガソリン漏れによる事故」などの主張が認められて再審開始が決定、昨年10月に仮釈放になり、5月2日に再審初公判が開かれた。

 青木さんは集会で、虚偽自白させられた取調べについて訴えた。 《窓もない狭い部屋に入れられ、丸椅子に座らされました。娘を亡くして食事もノドを通らない状態だったのに、いきなり犯人扱いされ、吐き気、寒気がして、娘のところに行きたい、死にたいと思いました。白い紙を出され、刑事の言う通りに犯行を認める言葉を書かされました。娘の写真を壁に貼られ、『殺したから見たくないんだろう』と言われました。黙秘すると大声で怒鳴られました。もしこの取調べの様子が全部録画されていたら、裁判所も私の無実がわかったと思います。ただ、取調べを録音録画するとしたら、1から10まで、全部録画し、密室の取調べの様子がわかるようにしてほしい》

 桜井さんは昨年の衆議院に続き、参議院でも法務委員会で参考人として意見を述べた。集会では青木さんの話を受け、「20年前も今も取調べの実態は変わらない。そもそも村木さん事件で始まったはずの司法改革が、なぜこんな法案になるのか。日弁連が何故それに賛成したのか。私は冤罪の苦しさを知っているから、この法案を止めたいんです」と訴えた。

●国会議員が法案採決阻止へ決意表明

 集会には衆参の国会議員6人が参加した。参議院では社民党の福島みずほ議員、「生活の党と山本太郎となかまたち」の山本太郎議員、民進党の小川敏夫議員、日本共産党の仁比聡平議員、衆議院からも日本共産党の畑野君枝議員、清水忠志議員が駆けつけた。

 この日は参院法務委員会が開かれ、午前中は小川議員、午後は仁比議員が、関連法案のうち盗聴法改悪問題を中心に質問に立った。集会で小川議員は「冤罪を生まないための法律が、先ほどから皆さんが話されたように、正反対の法案になった。岩城法務大臣は何を質問しても同じ答弁を繰り返すだけ。いつ強行採決されるかわからない状況ですが、全力を尽くしたい」と話した。また仁比議員は「法務委員会の運営は許し難い。参考人質疑はさっさと切り上げ、与党議員は質問に立たず、早く終わらせようとしている。この重大な違憲・治安立法の採決は絶対に許すわけにはいかない。今市事件の判決は、衆議院の法案採決後の新しい事態であり、審議を徹底すべきだ」とアピールした。

 集会には、元日弁連会長の宇都宮健児弁護士も出席、「刑事司法改革は、全事件・全過程の取調べ可視化、証拠の全面開示、人質司法の打破の3つが大きな課題だった。それが冤罪を助長するような法案になり、しかも日弁連執行部が賛成してしまった。私が会長の時には考えられなかったことです」と、日弁連執行部を強く批判した。

 また、リレートークでは、盗聴法廃止ネットの海渡雄一弁護士、青山学院大学の新倉修教授、新聞労連の新崎盛吾委員長、刑事法研究者の会の足立昌勝・関東学院大学名誉教授が、それぞれの立場・視点から法案の問題点を訴えた。

 法案審議は衆議院法務委員会では44時間行われたが、参議院法務委員会では、まだ23時間しか行われていない。10日の審議でも、小川議員、仁比議員共に「問題点はまだまだたくさんある」と徹底審議を求めた。国会会期末は6月1日だが、審議のヤマは12日から19日になる見通しで、集会を主催した各団体は廃案に向けたさらなる運動の拡大を呼びかけている。

*山口正紀ピリ辛コラム「刑訴法のここが危険!」15分(レイバーネットTV 5/11放送)もご覧ください。こちら


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