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LNJ Logo 木下昌明の映画批評 : 『台湾新電影(ニューシネマ)時代』
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●謝慶鈴(シエチンリン)監督『台湾新電影(ニューシネマ)時代』

歴史に翻弄された台湾の姿〜台湾の巨匠らの作品一挙上映

 台湾映画に夢中になった時代があった。1980年代から90年代にかけて。今日、台湾ニューシネマとよばれる一連の映画だった。侯孝賢、楊徳昌監督作品はその代表格で、侯の『童年往事』(85年)、楊の『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』(91年)は今見てもすごいと思う。両作品には、戒厳令下の台湾で生きる人々の日常がリアルにとらえられていた。

 この度、「台湾巨匠傑作選2016」で22本の映画が上映されるが、それに併せて謝慶鈴(シエチンリン)という女性監督の新作『台湾新電影(ニューシネマ)時代』(写真)が公開される。

 タイトルから推して、宣伝用の映画案内かと思ってみたが、どうして、これもなかなかのもの。ニューシネマ作品のエキスというべきなつかしいシーンも多く挿入されているが、それよりも今日、世界で活躍している第一人者の映画人が登場して、彼らがいかにニューシネマの影響を受けたかを熱く語っている。中国の賈樟柯(ジャジャンクー)、日本の是枝裕和、黒沢清ら。

 また、中国の王兵(ワンピン)と楊超(ヤンチャオ)監督が、侯の映画と此較しながら第五世代の映画の欠陥を巡って論争していて、映画好きにはたまらない。

 そんな中で、是枝がのっけから父の話をするのに驚かされた。が、実は彼の父は台湾の高雄で生まれ育ち、旅順に渡り、兵役についてシベリアに抑留されたという。そんな関係もあって是枝は『童年往事』に親しみを覚えると同時に、「自分が撮りたい映画はこれだ」と思ったと話す。

 また、東京・神保町に昔からある喫茶店「エリカ」で、映画評論家の佐藤忠男が、同じニューシネマでも日本未公開の映画を語っている場面にも惹かれた。日本の植民地だった時代を描いた作品で、主人公の不用意なひと言で獄死?した友人の小さな墓を戦後になって竹やぶの中で探し出し、「すみません」とわびる。それが日本語だったので、つらかった、と。

 映画からは、歴史に翻弄された台湾も浮かび上がってくる。(『サンデー毎日』2016年5月1日号)

*「台湾巨匠傑作選2016」は、東京・新宿K's cinemaで4月30日から。問い合わせは☎03-3352-2471


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