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報告:日航123便墜落事故から30年〜講演と慰霊登山

           佐藤和之

2015年8月20-21日、群馬県上野村において、東京西部地区私学組合連絡会(西部地区連)は、「日航123便墜落事故から30年」をテーマに、夏合宿を実施しました。主な日程は、各職場報告を軸にした会議、ゲストに招いた芦沢直史さん(日本航空機長組合/写真下)による講話、宿舎「やまびこ荘」での夕食と交流会〔1日目〕、芦沢さんをガイドに墜落現場「御巣鷹の尾根・昇魂の碑」への慰霊登山、「尾根の管理人」黒沢完一さんの解説、上信電鉄「下仁田」駅付近での昼食会〔2日目〕でした。両日とも天気は曇天、現地での移動は主にジャンボ・タクシー2台を使い、全体の参加者は15名。また事前に、「8.15明日への誓いJAL不当解雇撤回シンポジウム」に参加し、「安全問題研究会」さんの資料も学習しておきました。以下、芦沢さんの講演要旨と合宿全体を等しての感想です。

<芦沢さん講演要旨>1985年8月12日、日航123便の垂直尾翼が何らかの理由により破壊され、油圧装置4系統すべてが一瞬にして破壊された。その結果、操縦不能に陥ったが、4つのエンジン・コントロールのみで30分間飛行した後、御巣鷹山に墜落。乗員乗客524名中、520名が犠牲になった。では、飛行中になぜ垂直尾翼が一瞬にして破壊されたのか?。

運輸省航空事故調査委員会の『航空事故調査報告書』は、2つの事実を1つの推定で結合している。2つの事実とは、7年前の修理ミスにより、圧力隔壁に疲労亀裂が進行していた事実と、垂直尾翼の破壊により、油圧システムをすべて失い操縦不能となり墜落した事実。1つの推定とは、亀裂の進行していた圧力隔壁が、空気の圧力に耐えきれずに破壊し、客室内の高圧な空気が一気に垂直尾翼に流入して破壊したという推定である。換言すれば、客室内では急減圧が発生していたことになる。

仮に急減圧が発生すると、乗員の操作としては、酸素マスクを着用して、緊急降下をしなくてはならない。機内では、強風が吹き抜け、急激に温度が低下し、騒音と耳痛が発生する。ところが証言等によると、こうした現実はない。少なくとも、尾翼を破壊するほどの急激な空気の移動は存在しなかった。それでは、垂直尾翼を一瞬にして破壊したものは何か?。

垂直尾翼に対し、大気の力でフラッター現象が起きたか、何らかの物体が衝突したことも否定できない。前者に関しては、事故機の上部方向舵が強く押し下げられた痕跡として、下部方向舵の上面にゴムの圧着痕が発見された。また1985年6月18日と7月15日の便で、事故機の上下方向舵の動きにズレが確認されている。さらに事故後の緊急点検で、複数のB747の垂直尾翼や方向舵に、亀裂や取り付け部品の折損等が発見された。これらは、垂直尾翼や方向舵の不具合ないし強度不足を示唆している。

いずれにせよ、あらゆる可能性について、公正で科学的な方法で再調査が行われるべきである。他にも、捜索救難体制の問題、航空機の整備方式の問題、航空機の設計上の問題などがある。労働者としては、些細なことでも不安全要素を発見したら、勇気をもって明らかにすることが重要。それを、集約して交渉して改善させていくのが、民間航空47組合で組織する航空安全推進連絡会議(航空安全会議)の役割である。

<合宿全体の感想>まず、芦沢さんの講演と質疑で感じたのは、日航123便墜落事故の原因究明さえ、不十分なまま放置されている現実です。再調査すべきとの声があっても、政府は『航空事故調査報告書』を見よという対応であり、そもそも日本の航空事故調査委員会が常設でないことにも問題があるように思います。また、救難開始が迅速であれば、多くの命を救えた可能性があり、捜索救難体制の問題も看過できません。

慰霊登山に関しては、よく手入れされた慰霊碑や墓標が数多くあり、遺族や関係者の悲しみと愛情が伝わってきました。険しい山道も、管理人の黒沢さん(写真下)が整備して、歩きやすくなっています。実は、報告者の中学時代の同級生も、スチュワーデスとして亡くなっているのですが、すぐに黒沢さんがスゲの沢にある墓標を教えてくれました。また、日航123便の機体破片が、今でも地表で発見でき、墜落事故の凄まじさを物語っています。

2010年、日本航空は経営破綻し、165人が不当に整理解雇されました。労働強化と労働条件切り下げの中で、さらに182人ものパイロットが流出、客室乗務員については毎年約600人が退職。LCC(格安航空会社)が、受け皿になっているという話もあります。また日本航空は、200〜300人もの新規採用をしても、被解雇者を職場に戻そうとはしません。これは、安全を担保できるベテラン労働者の排除と、物言う労働組合の弱体化を意味していると思います。

政府の要請で最高経営責任者・会長に就任した稲盛和夫氏は、「御巣鷹山事故がトラウマに」「利益なくして安全なし」と語っています。しかし、そうした経営理念は、「絶対安全の確立」を打ち出した、御巣鷹山事故の教訓とは矛盾します。特に航空機関士が廃止される中で、「日本国内での30年間墜落ゼロ・乗客死者ゼロ」という記録は、航空労働者による奮闘の成果でしょう。今後も安全運航を続けるには、利益優先の経営に抗して、安全と公共性重視の経営に立ち返えらせる労働組合の闘いが、ますます重要だと思います。

【報告】佐藤和之(佼成学園教職員組合)
【写真】http://blogs.yahoo.co.jp/tocka_jikkoi/65780237.html


Created by staff01. Last modified on 2015-08-23 13:18:17 Copyright: Default

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