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反戦川柳作家・鶴彬を通して「戦争と平和」を考える特別授業

                 佐々木有美

   *写真=2014年9月の鶴彬碑前祭

 戦前の反戦川柳作家・鶴彬(つるあきら)の句を通して、戦争と平和を考える授業がある。盛岡市の元小学校長・宇部功さん(71歳)は、現役時代から130回もこの授業を行ってきた。その宇部さんが、今年の7月、鶴彬のふるさと、石川県かほく市高松の市民団体「鶴彬を顕彰する会」に招かれ、小学6年生にこの授業を行った。そのときの記録を会報「はばたき」第21号から紹介したい。

 宇部さんは、授業の冒頭「手と足をもいだ丸太にしてかへし」の句を掲げ、「この句にはいろんな中身が入っている。小説なら1冊、映画なら1本作れる」と話す。そして句中の「もいだ」「かへし」という言葉に、まず子どもたちを注目させる。「もいだ」とは、単に「とる」ことではなく、痛くても無理やりギリギリと「とる」ことをあらわすと教え、「かへし」については、誰が誰に「かえした」のかと質問する。そして、この句が戦争について書かれたものであること、その意味は「手や足を戦争でなくして丸太のようになってもう1回、戻される」ことだと明かす。

 普通ならここで句の説明は終わる。しかし、宇部さんのすごいところは、なぜ「もいだ」かをさらに追及していくところだ。野戦病院では、上級の軍人は、タマにあたれば手術をしてもらえるが、下級兵士は、すぐに死なないからとほっておかれる。何日かすると手や足が腐ってくる。そうするともう手遅れで、切断するしかなくなる。そして結局日本に帰されることになる。「『かへす』とはそういうことです。戦争というのは、本当に残酷な世界で、想像を絶するのです」と語る宇部さん。

 宇部さんの話は、さらにその「かえされた」人がその後どうなったかにも及ぶ。足をやられて22歳でかえされ、農作業もできないので60歳までずっと縁側に座り、近所の子供たちの子守をしていた人に、宇部さんは17年前に会った。その人は、満足に働けない自分がふがいなく、死んでしまいたいと悩んだという。そのように「戦争は絶対に終わらない。終わるどころか、こういうドラマをいっぱい日本中に残している」と宇部さんは話す。まさに、1句から1冊の本、1本の映画ができるのを実感させられる授業だ。本質をえぐる鶴彬の句と宇部さんの語る現実があいまって戦争の重みが直に伝わってくる。

 授業は、「高粱の実りへ戦車と靴の鋲」の句へと進み、中国をふみにじった日本軍とその犠牲になった中国の人たちの消えない、消せない「恨み」を語る。授業で取り上げられた句は以下のとおり。「屍のゐないニュース映画で勇ましい」「出征の門標があってがらんどうの小店」「万歳とあげて行った手を大陸において来た」「胎内の動き知るころ骨がつき」。

 最後に宇部さんは、鶴彬が石川啄木を慕っていたこと、その啄木が田中正造を慕っていたことを話し、「こういう人たちは時代が違っても、『何が大事か』『これを発表しなければ未来は大変になるだろうな』という予言というか、そういうことを発信できる人なんだと思います。・・・今度はみなさんが鶴彬にかわって『戦争はだめですよ』という精神で、平和な時代が続くように高松でがんばって頂ければと思います」と結んだ。

 以下はこどもたちの感想の一部だ。「一つの川柳だけでたくさんの戦争にまつわる悲しい話がつまっているので、『戦争は絶対にしてはいけない』と鶴彬さんから教えられたように感じました。」「鶴彬さんの話を聞いて戦争は何となくじゃなくて絶対だめだとわかりました。」「国のために闘うことでも、・・・戦争はだめだと思います。」

 宇部さんがこの授業を始めたのは、昭和50年代(1970年代半ば〜)、勤めていた小学校の近くに「手と足をもいだ丸太にしてかへし」の句碑があったのがきっかけだった。(戦争中獄死した鶴彬の墓は、当時兄がいた盛岡市にあり、近くに句碑もある)この授業に、かほく市教育委員会と開催校の校長も快くOKを出したという。各地で表現の規制が進むなか、さすが鶴彬のふるさとと言いたいが、その裏には「鶴彬を顕彰する会」の長年にわたる粘り強い活動がある。

 かほく市では毎夏、「顕彰する会」が中心になり、鶴彬にちなむ「市民川柳祭」や、「碑前祭」などが開催され、鶴彬の反戦精神をいまに活かす活動を続けている。今回の授業もこうした活動の一環として行われた。

*連絡先 鶴彬を顕彰する会
     〒929-1215
     石川県かほく市高松 キ5(小山広助 気付)
     TEL・FAX 076−281-1201
     MAIL turuakira@yahoo.co.jp
     HP http://tsuruakira.jp/


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