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LNJ Logo 根津公子の都教委傍聴記(11/12)〜自画自賛の教育委員発言にむなしさ募る
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●根津公子の都教委傍聴記(2015年11月12日)

自画自賛の教育委員発言にむなしさ募る

公開議題は報告事項が3つ。

(神27年度「児童・生徒の学力向上を図るための調査」の結果について
◆岷儻貘爾亡悗垢詬識者会議」報告書について
J神28年度教育庁所管事業予算見積もりについて

1 平成27年度「児童・生徒の学力向上を図るための調査」の結果について

 全国学力テストだけでなく、都教委は都学力テストも2003年(中学校2年生)・2004年度(小学校5年生)から行っている。学力テストと合わせて、児童・生徒には生活実態・意識を、学校には指導方法の取組・学習環境等を質問紙で調査し、テスト結果との相関関係を見るという。

 テスト結果は平均正答率、正答数の分布を区市ごとに比較して示し、そのうえで、テスト結果と児童・生徒の意識や教員の指導方法には相関関係があると報告している。一例をあげれば、都教委が推進してきた算数・数学の習熟度別指導(3クラスを「できる子」「中くらいの子」「できない子」に分けての授業)を「肯定している子供ほど正答率が高い」との報告であった。「自分の学力に応じたコースに分かれた授業を受けることで、学力がつくようになると思いますか」の質問に、子どもたちから次に示す結果が得られたことを根拠にしている。

■小学5年生は、ア.「思う」児童が62.5%、イ.「どちらかといえば思う」児童が30.1%、ウ.「どちらかといえば思わない」児童が5.1%、エ.「思わない」児童が1.4%。その児童たちの平均正答率は、ア.「思う」児童は67.4P(100P中)、イ.「どちらかといえば思う」児童は58.8P、ウ.「どちらかといえば思わない」児童は54.1P、エ.「思わない」児童では50.8P。

■中学2年生では、ア.「思う」生徒が45.5%、イ.「どちらかといえば思う」生徒が41.4%、ウ.「どちらかといえば思わない」生徒は9.1%、エ.「思わない」生徒は3.0%。平均正答率は、ア.「思う」生徒は61.5P、イ.「どちらかといえば思う」生徒は 54.4P、ウ.「どちらかといえば思わない」生徒は51.2P、エ.「思わない」生徒は49.3P。

 報告を受けて、「学力が満たない子どもを集めたクラスの授業では工夫や対策をしているのか」(遠藤教育委員)との質問に、担当所管は「ベテランの先生が担当するなどしている」と答えた。「できない子」のクラスの授業が困難である現状を認識しているからの質問と回答のはずだが、不思議と習熟度別授業を疑問視する発言は皆無だった。都教委が推進してきた習熟度別授業を自画自賛するかのような報告と発言(「25年から学力が上がった」(木村教育委員)など)ばかり。上記「思わない」という1.4%、3.0%の子どもたちの気持ちを、想像力を働かせて感じ取れば、異なる意見・評価が出るのではないかと思った。

 このほかに、「調査から見える成果と課題」として、

 まずは、「学力調査の継続的な実施等により、学力向上に対する教員の意識が高まり、授業改善が図られてきている。」として、都教委主導・介入の教育を自画自賛する。

 「繰り返し学習によって基礎・基本の定着は図られているが、言語活動等を通した思考力の向上には課題がみられる」「放課後の補習や家庭学習を行う割合は増加傾向にあるが、その内容や方法についての組織的な取り組みが必要」だと言い、補習や家庭学習のために「東京ベーシックドリルの電子化」を行うのだという。今や、教員は補習をかなり強制されていると聞くが、電子化によって、教員も子どもたちも一層過重労働に晒されることになるのではないか。追い詰められれば、勉強が喜びではなく「苦役」になるのはわかりきったことである。報告事項で、電子化は来年度の予算見積もりに計上されている。教育関連企業に私たちの税金がまた、貢がれる。

 「言語活動等を通した思考力の向上」をあげる欺瞞さを教育委員は感じないのか、とも思う。都教委は「日の丸・君が代」とその強制について、教員が生徒たちに意見表明することを禁止し、弾圧してきた。また、18歳選挙権実施に絡み発出した、「教員は個人的主義主張は避け、公正かつ中立」などを盛り込んだ文科省通知に反対することはしていない。判断のわかれる問題についてそれらの意見を知り考えあうことで、思考力は育つ。日常の学校生活の中で思考することを禁止しておいて、「言語活動等を通した思考力の向上(に取り組む」)とは、欺瞞・ペテンでしかない。

 また、「学力に課題のある地域や学校へは指導主事が訪問して継続的な支援」を行うのだという。今食べるものがない、安心して暮らすことができない貧困の中に置かれた子どもにとっての関心事は、学力どころではない。親の収入と子どもの学力の相関関係を見れば、学力を高めるための施策は、「指導主事の訪問」ではなく、子どもの貧困を根本から解決することだ。東京都・都教委が、新自由主義経済・非正規雇用・弱者切り捨てを方針とする国政に意見をあげ、同時に都に権限がある、生活保護の手続等の緊急救済をすることだ。オリンピックに使うお金をこうした子ども達に回すことだ。このことが、教育委員の人たちにわからないはずはない。見たくなくても見てもらわねばならない。

 2005年1月に実施した都学力テストの際に、区教委が1か月も前に校長会でテスト問題を配布した事件(類似問題を作り、子どもたちに練習させて平均点をあげようとした事件)、2006年4月に実施した区学力テストの際に、校長の指示の下、教員がテスト中に机間巡視をして誤答した個所を、机を叩いて児童に教えたり、障がいのある児童のテスト結果を採点から外して平均点をあげた学校が出た。どちらも、「学力に課題のある地域や学校」の足立区の事件であった。その調査を都教委は曖昧なまま終えた、それはテストの存続が難しくなることを恐れたからと私は見てきた。1960年代の全国一斉学力テストが中止に追い込まれたのは、足立区と同じように競争がもたらした不正が続出したからだった。

 競争・成果主義がもたらすこうした問題についての発言もなかったのだが、都教委のその後の指導によって再び事故はないと教育委員は信じ切っているのだろうか。

 そもそもが、テストで測れる学力が1点上がったとして、その子のこれからの生活が保障されるものでも、知ることに対する興味・関心が高まるものでもあるまい。学力テスト廃止を発言する教育委員はいないのか。本気で学力向上に力を入れるならば、30人以下学級を提案すべきではないのか。子どもたちと本音で活動し語り合える自由や時間を教員に返すこと・保障することだ。

2 「英語村に関する有識者会議」報告書について

 今年4月から3回の有識者会議を開いて、まとめた報告書は次のように書いている。

 「2020年東京オリンピック・パラリンピック大会の開催とその先を見据え、生活習慣・文化・価値観などの多様性や人権が尊重され、誰もが幸せを実感でき、そこに住み続けたいと思える『世界一の都市・東京』の実現を目指し」「苦手意識なくコミュニケーションできる英語力などを、都内の児童・生徒が習得できるよう、英語教育改革の取組の一環として「英語村」を開設することとした」。「おおむね小学校第5学年から高校第3学年まで」が対象で、2018年度開設予定とのこと。これも、の来年度予算見積もりに計上されている。

 人権・生活を保障することとは真逆の都政や教育行政をしていながら、よくも、このようなきれいごとが言えるものと腹立たしく思う。

 この数年、定例会を傍聴していて、都教委の教育政策がますます、差別選別・弱肉強食・自己責任の新自由主義教育になっていることを感じ、恐怖を覚える。子どもたちが人との触れ合いの中で人格形成をする場ではなくなっている。

 公開議題が終了し傍聴者が退場する段で、Wさんは本を高く掲げて退場したのだという(出口近くに座り、先に出た私は見ていない)。つい先日発売された、イギリスのアレックス・マーシャルという人が書いた『Republic or Death!: Travels in Search of National Anthems(共和か死か!〜世界国歌の旅)』という本。その本は、日本について、東京、大阪等の「日の丸・君が代」強制と処分の異常さを紹介している。Wさんは、定例会担当の職員には本のページを開いて、何が書いてあるかを話したから、教育委員が職員に聞いてくれれば、その本を知ることができるであろう。

 ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
 定例会の始まる前の職員出勤時(8時から9時)に私たちはマイクで情宣し、チラシまきをしている。今朝は受け取りがすごくよくて、用意したチラシは8時40分の段階で終わってしまった。通常の受け取りは悪いのだけれど、時々、今日のようによい日がある。チラシが終わってしまったので、情宣も早めに切り上げた。すると、一人の職員が「聞いてよ」とばかりに私たちのところに来て「年金制度の変更によって手取り給料が月2万円も減った」と話す。また、今回のボーナスは全員一律8%が引かれて、その財源で、働きの良かった人に分配されるのだという。そのストライキが明日13日に予定されているという。都職員の中にも、不満が相当に積もっているのだろう。「声をあげようよ」。


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