靖国のタブーを想像力で突破〜自らの過去に直面してこそ回復がある炸裂トーク! | |||||||
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靖国のタブーを想像力で突破〜自らの過去に直面してこそ回復がある炸裂トーク!〜洪成潭(ホン・ソンダム)連作<靖国の迷妄>原爆の図 丸木美術館巡回展8.5-8.30 <東アジアのヤスクニズム>連動企画〜しばし暑さが和らいだかのような8月11日、洪成潭(ホン・ソンダム)連作<靖国の迷妄>原爆の図 丸木美術館巡回展にあわせ、洪成潭さんと丸木美術館学芸員 岡村幸宣さんとのトークが行われた。互いの話が興を奏し、いつのまにか炸裂のトーク!会場はむしろ暑さ倍増の熱気となった。
冒頭、洪さんは、「原爆の図」を描き、偉大な業績を残した丸木位里・俊夫妻に、年齢も離れた韓国人の自分が敬意をこめて<靖国の迷妄>を捧げたいと語るや、岡村さんは、丸木夫妻が戦後、GHQ占領下の困難な状況で原爆の被害を描き、その後も、その暴力の本質を見極め、加害の視点から「南京大虐殺の図」や朝鮮人徴用工の被爆死と差別を描いた原爆の図第14部「からす」等を描いた点に触れつつ、洪さんの展示が投げかける意味をいまいちど見直さなければならないと加えた。 さらに洪さんは、丸木夫妻が芸術の魂にもとづき絵画に社会的政治的そして歴史的内容を盛り込めながら、人々に訴え、疎通をはかろうとしていたこと、そしてその疎通とはどこかで苦痛の叫びがあれば、それを我が事として応答することだと言及。絶えず芸術的自由を拡張してきた丸木夫妻の意を私たちもまた受け継いでいかねばならないという。 岡村さんはこれを受け、日本ではともすると社会性を持った芸術が受け入れられず、排除さえされる傾向がある。丸木美術館でも、中国や韓国の被害を描いたものにクレームをつける観客もいるという。人は自分中心に世界を見てしまうが、他者への共感−疎通をはかる芸術が益々必要だと強調した。 すると洪さんは、生命を創造できるのは唯一、神、つまり大いなる力であるが、芸術家は政治的社会的文化的にタブー視されているものを想像力によってこえていく力がある。タブーをいかに突破できるか? それこそが芸術家の使命だと喝を入れた。そして<靖国の迷妄>を描き、展示したのは、日本人が恐れずに過去の歴史に対面、直面しなければならないとの思いから。自らの過去を直視してこそ、治癒と回復への道筋が開ける。いま、日本は危うい。韓国とてそうだ。この国家主義、国家暴力の象徴である「ヤスクニズム」に日本のみならず、東アジアで共に向き合い、解決へ向かわなければ未来はないと言い切った。
岡村さんもこれに呼応し、自分たちを美化する装置として機能している「靖国の欺瞞をあばく洪さんのように、この丸木美術館でも自分たちを正気に戻してくれる種を蒔きつづけ、その種に出合える場にしていきたいと主張した。
また、洪さんが去る8月8日の「平和の灯を!反ヤスクニキャンドル行動」10周年集会のために制作したコルゲクリム(掛け絵、垂れ幕絵)がこのトーク会場にも飾られた。 コルゲクリムとは、1980年代韓国の民主化運動のデモや集会で洪さんたち民衆美術の画家たちが盛んに制作した、闘争の場にはなくてはならない美術表現で、そのつど押収されたり、弾圧された独特の様式だ。今回かけられたコルゲクリムは、「靖国」の暗闇の痛み、苦しみの涙を治癒し回復へ向かわせようとの願いが込められた版画を拡大プリントしたものだ。
洪さんは、シベリアから朝鮮半島に流れてふきだまったシャーマニズムを自らの芸術の原動力にしている。それゆえ、実は日本の神道文化にも強い共感を覚え、魅力を感じてもいるという。本来、生命と祝祭の文化の場である神社が、しかし「ヤスクニ」によって死の文化へと歪曲されてしまったことにも怒りを覚え、そうしたすべての傷から回復できるように、その「ヤスクニ」の陰―苦痛を治癒する意味をこめてこのコルゲクリムを、そして<靖国の迷妄>を描いたのだという。 さらに岡村さんは、近代国家成立以前には、実はたくさんの文化を育み、影響をうけあってきた東アジアの豊かな交流のかたちを、いままたとり戻さなくてはならないとつけ加えた。 丸木夫妻の「原爆の図」と洪さんの作品がうねりをあげ、ともに旋律を奏でる・・・その一角で行われた8.11のトークは、まるで故・丸木夫妻、そして洪さんを高く評価した文芸美術評論家の故・針生一郎 元丸木美術館長らがあたかもそこにいて、頷きながら共に語っているかのようなひと時となった。針生の意志、そして丸木夫妻の営みを韓国から応答する―それは、「東アジアの抵抗のリアリズム」を新たに築く種となるかもしれない。 ↓丸木美術館 学芸員岡村さんが書いた報告日誌 Created by staff01. Last modified on 2015-08-15 09:32:42 Copyright: Default |