ヤスクニズム憲法になったら、無関心でいることの権利がなくなる〜東アジアのヤスクニズム9日目・最終日 | |||||||
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ヤスクニズム憲法になったら、無関心でいることの権利がなくなる〜東アジアのヤスクニズム9日目・最終日8/2(日)いよいよブレヒトの芝居小屋での最終日を迎えた。満員で熱気あふれる会場で、朗読〈靖国と松井秀男伍長〉からはじまった。この詩は、洪成潭さんがこの絵のなかに記した詩です。朗読は、東京演劇アンサンブルの洪美玉さん。
……(中略)……
次に、洪成潭さんより、これまでまだ解説をしていない作品について説明がありました。連作〈靖国の迷妄〉では、日本だけではなく、ソウル、台北、ブランデンブルグの「ヤスクニ」も描かれている。 そのうちの一つ、〈台湾ヤスクニ−銅像の谷間〉について、6日目のトークで王墨林さんと徐さんから歴史的説明があったので読んでいただきたいが、洪さんからは、絵の真ん中で処刑されている人は、台湾で民主化を求めていた4万人の人を虐殺した白色テロのなかで、政治権力によって処刑された唯一の画家・黄栄燦について語った。彼は魯迅の版画学校で学び、台湾へ渡り文化運動をはじめた。白色テロがはじまると、その凄惨な過程を版画で人々に伝えた。もちろん秘密裏に展示もしていた。 虐殺の場であった公園と、蒋介石の銅像が打ち捨てられている渓谷をモンタージュして、台湾にいまも静かに生きているヤスクニを描いた。
また、本展覧会のリーフレットの表紙をかざる〈夜想曲ヤスクニ-2〉について、8/15には、兵士や武将のコスプレをした若者ややくざなど、まるで妖怪や幽霊たちの行進のようである。この国家主義が蔓延している仕組みのなかに、日韓のサッカー代表応援団、ウルトラ日本、レッドデビルもいる。一番右のレッドでビルの彼は、このまま日本の国家主義の行進についていくのか、引き返すか、ようすをうかがっている。彼はこのあとどうするだろうか? 私がいま東アジアが危険だというのは、この右側の彼がこの行進についていってしまうかもしれないからだ。 ■ダグラス・ラミスさんから(政治学、沖縄キリスト教学院大学大学院客員教授/写真) 本展のタイトル「東アジアのヤスクニズム」の「ヤスクニズム」とは、ラミスさんが昨年の靖国キャンドル行動で問題提起した言葉を引用したものである。〈ヤスクニズム〉とは、日本の保守派の軍国時代のロマンを「靖国(ヤスクニ)+イズム=ヤスクニズム」として、ドイツの「ナチズム」と比して皮肉った造語。つまり、私たちの日常に潜む「国家主義、国家暴力」と言いかえることができる。 ラミスさんの話は、日本の現状を考えるうえで示唆にとんだものだった。いくつか紹介しよう。 【矛盾だらけの9条】 矛盾だらけの9条のもとで、日本は70年間過ごしたが、矛盾だらけと言いながら、憲法ができてから交戦権によって殺し・殺されたことはない。代わりに米国は戦争した。だから倫理的にすばらしいと思わない。9条ノーベル平和賞の運動に参加するのは断った。でもたしかに、日本社会のなかで兵士になって人を殺すことはあまり考えない。人を殺す兵士をつくり直すのは、米国でも非常にきびしい訓練・洗脳が必要。日本の若者は戦争をできるためには教育に時間がかかる。安倍さんはヤスクニズムのような敗戦以前の軍国主義社会に戻ることをめざしている。市民は臣民に戻って、政府の言うことを聞き、それに反対することは想像もできない人間に作り替えられていく。 あいまいな海外に対する憎しみを持っている人間をつくらないと戦争できない。その意味では途中まで進んでいる。たとえばヘイト・スピーチをする人々はいい兵士になると思う。週に1回、辺野古の座り込みに参加しているが、そこに来るヘイト・スピーチ右翼は、「中国の手先!」とか言う。洪さんが先ほど説明した〈夜想曲ヤスクニ-2〉の右側の若者たちの顔、その憎しみの顔がよく描かれている。 【自民党の憲法改正草案を1行1行読むべし】 ・ヤスクニズムについてもっとも細かくていねいに書いてあるのは、自民党の「憲法改正草案」だ。自民党のHPに出ているし、自民党事務所に行けばもらえるので、もらいに行ったほうが楽しい。日本の人はほんとうに読まなきゃいけないものだ。徹底的に細かいところでいまの憲法と違う。たとえば、主語が「日本国民」から「日本国」に変わってる。9条改正どころの話じゃない。非常に恐ろしい将来像である。 【政治に無関心でいることの権利も奪われる】 ・ヤスクニズム憲法になったら、無関心の若者たちの権利がなくなる。現憲法に無関心権は書いていないが、「政治に関わらない権利」が認められている。軍国主義の時代はその権利がなかった。無関心の人にわかってほしい。その人たちの生活がいちばん変わるかもしれない。
休憩をはさんで第2部では、併設展示の作家・大浦信行さんより、出展作〈遠近を抱えて〉(全14点、光州ビエンナーレ抗議作新バージョン)について、制作の経緯とその思いが語られた。(写真上) 2014年、光州ビエンナーレ 20周年の特別展で《セウォル五月》(洪成潭と視覚媒体研究所の共同制作)が、「直接的な政治批判」という理由で展示を拒否された。同展に招待されていた大浦は、すぐに抗議を表明、さらに抗議の展示を手がけるため光州へ向かう。9月 13日、すでに展示されていた作品 14点の額をはずし、朝鮮語・英語・日本語で「洪成潭氏の作品への検閲に強く抗議する」と書かれた紙の端をろうそくの火で燃やし、それらの紙をすべての作品に直接貼りつけけた。 この光州ビエンナーレ検閲事件は終わったわけではなく、洪さんへの検閲はさらに強化され、今日に至っている。その事実を知った大浦は、さらなる抗議を表明するために、作品を燃やした新バージョンを制作した。検閲が起きたとき、同じ表現者としてどうするのか、それは自身も含めた日本の表現者たちへの問いかけでもある。事件のとき多くの出展作家が反応しなかったことへの憤りも(参考文献:岡本有佳「光州ビエンナーレ検閲問題」月刊『あいだ』 218号 2015年 1月)
続いて、日常のなかのヤスクニズムという観点からお二人の方にコメントをいただいた。 2日目のトークゲストだった小倉利丸さん(写真左):大浦さんが自作を燃やしたこの新作は、光州ビエンナーレだけでなく、いまの日本の状況に呼応した、作家としての抗議であり、新しい表現である。 洪さんは日本のヤスクニの問題に取り組みながら、そこで韓国をテーマにすると、朴クネも同じじゃないかとなりかねない部分を、そうならないように、ヤスクニの問題と、戦後の支配体制は分けるものはできない一体のものとして、自国の権力や支配者の矛盾に返していくことで作品を提示している。 日本でますます起きてくるのは、心情を国にゆだねて、国の心情とシンクロする形でつくられていくこと。日本のいまの状況をどう表現するのかが問われている。同時に、それを許さない美術環境を壊していくことが必要だ。それは作家の役割であるととともに、観客である私たちの役割でもある。 近年増加している「自衛隊協力映画」の研究をする須藤遙子さん(写真右):かっこいい悲劇 メディア会社が売り込み、消費しているのは私たち。調査でいちばん感じるのは、自衛隊や防衛省は典型的な官僚組織であり、自衛官たちは”まじめで普通な人”であるということ。これこそがヤスクニズムの土台ではないか。まじめなサラリーマンであればあるほど国家主義を推進する精神的土壌ではないか。それに加え、日本でとくに発達している消費主義(消費者の受動性・無責任性)も関係していると指摘した。 こうしたものに対抗の軸として、アートがあるのではないか。今回のタイトルに「東アジア」となっていることに、洪さんのやさしさと知性・理性を感じる。 主催者側からは、共同代表の小森明子さん(東京演劇アンサンブル・制作)が、洪さんへの応答として挑戦したリーディング「エピローグ?」を女性たちの声だけで演出した意味を、古川美佳さん(朝鮮美術研究)は、国家暴力を経験し、と対峙してきた洪成潭さんの足跡をたどりつつ、ヤスクニズムとは私たちの潜在意識のなかにあるものだと思う。今回、洪さんの作品によって芸術という肉体言語でヤスクニズムを感じる場の一つになれたのではないかと語った。 質疑応答のあと、実行委員でヤスクニキャンドル行動事務局長の李泳采(イ・ヨンチェ)さんより、不気味な戦争の匂いをかぎながらこの場に立っている。東アジアの人々がともに協力して、戦争をとめること、8/8のキャンドル行動、8/14「戦後70年、東アジアフォーラム―過去・現在・未来―」への参加を呼びかけて閉会した。 ■8/5(水)より、原爆の図 丸木美術館にて巡回展(一部) 会期:8/5(水)〜 8/30(日) 月曜日休館 9〜17 時 「原爆の惨状は、靖国とつながっている。原爆、そして3.11フクシマの原発事故─目に見えない放射能は、まさに靖国の真っ黒な苦痛の陰のように、見えないままいまも日常に潜み、私たちを抑圧しつづけている。<原爆の図>をさまざまなかたちで展開しながら、‘戦争の放射能’を描き切った丸木位里・俊夫妻。その後継者として韓国の画家、わたし、洪成潭がこの<靖国の迷妄>を捧げたい」 (洪成潭) ■8/8(土)ヤスクニキャンドル行動にて、洪成潭さん作品スライド上映決定! 第10回 2015 平和の灯を! ヤスクニの闇へ キャンドル行動 ★お知らせ:『週刊金曜日』7/31号は洪成潭さんの作品が表紙、中面で展示紹介に続き、8/7号では、洪成潭さんと永田浩三さんの対談掲載。 (文責:岡本有佳) Created by staff01. Last modified on 2015-08-04 16:46:13 Copyright: Default |