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引き裂かれる住民たち〜双葉町民・鵜沼久江さん囲んで討論会

                   堀切さとみ

 4月12日、『私に牛は殺せない』と題して、双葉町民・鵜沼久江さん(写真)のお話と討論会がさいたま市であった。主催は「原発問題を考える埼玉の会」。衝撃的な内容だった。

 鵜沼さんは、東京電力福島第一原発から2キロのところで牛を飼っていた。事故後は埼玉県久喜市に避難し、その年の6月には家と畑を借りたという。早く農業を覚えたくて、いち早く地元の住民とふれあうことになったが、苦難の連続だった。

 「双葉町は警戒区域で帰れない」と報道されているにもかかわらず「いつまでここにいるんだ」と言われる。「避難民は出ていけ。埼玉の人はそう思ってんだよ」。・・・でも「頑張ってな」と言ってくれる人もいて、何とかやってきた。

 隣接する町には千人以上の双葉町民が避難する旧騎西高校があったが、乞食呼ばわりされるのはいやだったと鵜沼さんは言う。  

 会場にはいわき市出身の講談師・神田香織さんや、双葉郡から避難している人たちも多数参加し、活発な討論になった。

 避難した人と受け入れる町との対立は、福島県内でも顕著だ。何万人もの避難者を受け入れたいわき市。そこに2013年に双葉町は役場を置いた。

 賠償がもらえるからといって避難者の子どもはいじめられる。苦肉の策で昨年、双葉町の子どもだけが通う小中一貫校が役場近くに作られたそうだが、在校生はわずか10人だという報告もあった。

 同じ町でも放射線量によって線引きされ、賠償を受けられる区域 とそうでない区域で町民同士が分断を強いられているという南相馬市の人。また、避難先では何もできず、地元で復興できる宮城や岩手がうらや ましい、と語る双葉町民もいた。 

 「避難民はパチンコやったり新しい車を買ったりして、同情できない」 という声はよく聞かれることだ。そんな中で「一人10万円もらえるっていうけど、子どももですか?」「精神的慰謝料って、い つまで継続するんですか?」という質問が出た。こういうことって、聞いちゃいけないような気がしていたのだが、鵜沼さんはありのままを語った。

 さらに避難先で仕事をみつけるのがどれほど難しいことか。「すでに土台ができているところに、双葉町の人間が『働きたい』と言っても必要とされないでしょう」 

 避難者を雇った会社には補助金を出しますよという時期もあったが、それによって元々働いていた従業員はクビになり、避難者に対する恨みがつのっていったそうだ。

 神田香織さん(写真)も「赤ちゃんだって10万円もらえる。中学生の子どもが親に『オレの分はオレのものだ。10万円よこせ』言って学校に行かなくなってしまったいう話を聞いた」と言う。

 とてもつらい話だが、お金の問題もタブーにせず話すことで、避 難者への偏見は変わっていくのではないか。そんな希望も垣間見えた討論会だった。

 「何がしたいですか」という問いかけに、鵜沼さんは「放射能が高くても、双葉町の私の住所で牛と暮らしたい」と言った。できることなら埼玉でも牛を飼いたかったが叶わなかった。

 「双葉町みたいなちっぽけな町がなくなるくらいじゃ、東電は原発をやめられないんだね」。だからこそ、町がなくなるってどういうことなのか。鵜沼さんは伝え続けようとしているのだ。


Created by staff01. Last modified on 2015-04-13 21:27:17 Copyright: Default

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