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レイバーネットTV・「ピケティ入門」の話をまとめてみた

                  笠原眞弓

2月25日のレイバーネットTV第81号「ピケティ入門〜なぜ格差は拡がるのか」 ゲスト:竹信三恵子さん。 たった50分でピケティの数センチの厚さの本の内容が全て理解できるわけもないのだが 、それでも、おぼろげにわかったことがいくつかあった。もちろん、ピケティーの「21世 紀の資本論」も読んでいないし、竹信さんの「ピケティ入門」も読んでいない私のわか ったことなんて、全く表面の一撫でなのだが、一応ここにまとめておく。

▼なぜ「ピケティ入門」を書いたか

「ピケティ入門」を書いたのは、都合よく解釈されないため まず、竹信さんは、ある日「週刊金曜日」の社長の訪問を受けたことから話し始める。「 21世紀の資本論」の邦訳が出版される同時に、その手引書を出版したいから、書いて欲し いということだった。超忙しい時期で、英語版でよまなければならないこともあって断る つもりだったが、経済の専門家でもない友達に相談すると、「ぜひ、私たちにわかるもの を書いて欲しい」と言われ、決心したという。 それに、「ブーム」が怪しい、すぐに経営者や政治家が、自分たちの都合いいように全く 似て非なる解釈を広めるからそれは食い止めたいと思った。例えば、「ワークシェアリン グ」なる考えが日本に入ってきて「ブーム」になった時に、早速パートにしてひとりの仕 事時間を少なくすればいいんだと言い立てた。これは全く違う。日本の場合、パートと正 規社員の時間給には大きな開きがあり、賃下げになる。と同様に、今回のピケティーに関 しても、「アベノミクスはピケティを評価している」といい始めているから、事実と違 い怖い。現に竹信さんの著書と同題の資本家よりの本も出ているとか。

▼資産が資産を生み格差は広がる

株や土地などの資産は、数百年の単位見ても4.5%も伸びているが(低くても2、3%)、そ れに比べて賃金は1.2%の伸び率にしか過ぎない。19世紀末を見ても、国民所得に対して 、資産はフランスは7倍、英国も6倍になっている。 1920年ころから、急激に下がっているのは、この頃は例外的な時期で、第1時世界大戦や それに続くロシア革命、世界大恐慌、そして第2次世界大戦があったから。戦費が必要に なって統制経済が始まるし、何より富裕税(累進課税)をとるようになる。 一方父親など働き手が戦争に行っている低所得者の家庭には手当を支給した。つまり、富 の再分配が起こった時期である。この頃所得税の徴収を、戦時の一時的なものということ で始まったが、結果的に便利な仕組みとして今に残っているのだが。 戦乱で資産家は、より影響の少ないところに逃げ人もいた。

▼70年代の格差の減少は経済の高度成長のためではない

戦中に富裕層から剥ぎ取った資産が今また増えだし、富裕層が政治的にも力を盛り返して きた。それは、レーガノミクスあるいはサッチャーイズム、中曽根イズムといわる政策で 累進課税率を下げてきた。イギリスは8割、アメリカも同様。アメリカなどは、賃金の規 制はしないが、税金でバランスをとっていたが、それがくずれてきた。 日本も70年代まで累進課税で高額所得者は70〜75%の税率だったので、格差がそれほど広 がらなかったのに、1999年には、37%まで下がった。ということは、格差が広がって来て いるということ。 同様のことを所得のシェア率で見ると、1930年代までは、0.1%の人が、0.8%も富をとっ ていたが、1945年には、その率は下がっている。先も言った戦争や恐慌等で貧富の差が縮 まったのだが、2000年に跳ね上がり再び0.8%を取るようになった。ところで日本は英米 ほど上がっていないのは、製造など主産業が海外移転したからと言える。

▼少子化も貧富の格差を広げる

少子化の問題点は、一般に言われている労働力不足もあるが、実は格差も拡る。つまり、 これまでは遺産を複数の人で分けて相続していたものが、一人にまとまっていくようにな るので、富が集中してしまう。加えて、祖父母の世代からの学資、結婚費用の贈与の無税 化が行われている。この制度も、資産が一ヶ所に溜まっていくことになる。

▼格差が進むと民主主義が歪む

例えば、業績主義で高額賃金をもらうと、株や土地を購入してどんどん資産が増えていく 。その場合、さらに自分の利益になるように特定の政治家に献金をして、さらに資産が蓄 積しやすい仕組みを作ることも可能になる。すると民主主義ではなくなる。それを是正す るのは、再分配の仕組みである。 75%の課税率だとすると、1億の収入があっても、手元には2500万しか残らない。それな ら1億ではなく、はじめから2500万くらい貰えばいいということにもなる。ところが、30 %の税だと、釣り上げれば釣り上げるほど入ってくるのでたくさんもらいたい。累進課税 率が低くなったことが、強欲型の人を増やしたとも言える。 資産が蓄積していると思われる世襲議員などにとって、残業代ゼロも、解雇規制撤廃も痛 くも痒くもない。「貯金下ろせば」と言う程度にしか思えない。ところが現実の市民は、 あすからどうするの?ということになる。法律をつくる人たちに、そういう人たちの痛み が分からない。 政治家や行政に、想像力がなくなっていると書いたら、センチメンタリズムだと批判され た。しかし、それは、マリーアントワネット(パンがなければ、お菓子を食べればいいじ ゃない)現象だと思う。

▼年金・健康保険は戦後の経済システムの中で出来た

いま中流の没落が始まっている。具体的にいえば、年金や健康保険が危うくなっている。 払う人が少なくなって、貰う人が増えれば破綻するのは当たり前。日本の若者は、そこの ところを理解していない。「どうせもらえないでしょう」とへらへらしているけど、健康 保険が本当になくなったら、大変なことになる。これらの福祉の制度は、70年代までの仕 組みで作らている。どうやってこの仕組みを維持していくかを本気で考えなければならな い時代になった。 これまでは、構図が分かっていなかったから、どこから原資をとっていいかわからなかっ た。それをピケティは明確に示した。金持ちがいっぱい払うべきということ。 インドに、貧しい女性たちの自立をしようという集まりSEWAというとのがあって、彼女た ちが「貧乏だけど、数では負けない」という。 一人1票しかないけど、数がまとまれば大きな力になる。99%の私たちは、「数」という 力を持っている。 資産家は、資産を守るためにあの手この手で資産を隠すが、各国が協力して資産開示を求 めていけば、あのスイス銀行もアメリカの圧力で開示したように、今後オープンになって いくだろう。 私たちは、今格差社会の中にいることを自覚して、自分の将来のために、行動していくと き。運動の力は、バカにできないから、政府にモノを申していくことは、有効であると結 んだ。 (ギャラリーからの質問に答え、マルクスとの違いを、ピケティは、膨大な統計資料か ら論を起こしているから、そこが大きく違うと述べた。)


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