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被曝の恐怖、頻発する事故、タコ部屋〜原発廃炉作業員が生々しい実態語る

                    佐々木有美

 1月31日東京・秋葉原で、「福島第一原発で働く現役廃炉作業員の話を聞く会」が開かれた。参加者は予想を大きく上回り50名を超えた。現役作業員のAさんは、東京の元郵便屋さん。一昨年春に定年退職し、昨年2月から福島県浪江町で除染作業に従事。その後8月から第一原発で働くようになった。その動機をAさんは「定年退職を機に、歴史の結節点としての福島を、働きながらこの目で見たいと考えた。誰かがやらなくてはいけない仕事、若い人より中高年が行くべきだとも思った」と話す。

 Aさんの現在の仕事は、3・4号機の可燃物(書類など)と危険物の処理だ。朝の6時半ごろ、ビレッジにつき検査や着替えをすませ現場作業は9時過ぎから。実働は1日2時間から3時間。肉体的にはそれほどきつくはないと言う。「ただ被曝の恐怖は毎日ある。1日の許容量(0・8マイクロシーベルト)の5分の1を超えると1回目のアラームが鳴る。3回鳴ると避難することになる。でも仕事なので慣れてしまう感覚もある」と語る。かつて騒がれた線量隠しは今はないらしい。彼の12月の被曝は1・2ミリ、1月は1・31ミリで、年間制限の20ミリシーベルトぎりぎりぐらいのペースだ。「被曝は心配だが、誰かがやらなくてはいけない。それをどうするかが問われている」と語るAさん。

 賃金は1日1万円に危険手当が4000円付く。ひと月手取り27万くらい。被曝や作業の危険度を考えれば、驚くほど安い。危険手当は人によってさまざまで、2000円の人も5000円の人もいるという。東電は一律1万円としているが、多重下請けの中で、どんどん額が減らされてゆく。宿舎は会社が借り受けた一戸建て。4部屋で6人がくらす。Aさんは8畳の二人部屋だ。いびきで寝付かれない、プライバシーの問題もある。宿舎のトイレは昔風が多く、入待機場の温水付きトイレの前には毎朝列ができる。ほとんどの作業員がこうした「たこ部屋」的な住まいにおしこめられているという。楽しみはパチンコぐらい。福利厚生などとは程遠い作業員の日常がうかがわれる。

 Aさんは、現在自宅待機中だ。理由は、1月19日、20日と続いた作業員の死亡事故。19日はタンクへの転落死、20日は、器具に頭を挟まれた圧死だった。現在福島原発の作業は全面ストップしている。今回の事故の根は深いとAさんは言う。「ひとつの職場に複数の会社のメンバーがいる。上意下達の雰囲気は、現場の横のコミュニケーションを疎外している。東電、元請(ゼネコンや大手電気会社)、多重下請けという構造が問題。下請けは、東電や元請をお客様と呼んでいる。上司に対して意見を言える雰囲気はない」。そんなの中で事故が頻発している。

 今、第一原発には7000〜8000人の作業員がいる。そのうち地元出身が6割。大きな産業のない地元では“東電に飯を食わしてもらっている”という意識が強い。だから原発に対しては何も言えない。Aさんは「かっこつきの復興が進むなか、原発事故の原因が忘れ去られていく。」と語る。Aさんは最後に「ぜひフクシマで働いてほしい。東京で見るのと現地は全然違う」と会場に呼びかけた。

 東京にいるとフクシマに目を向けなくても生きていける。メディアの報道も最近は格段に減った。忘れ去られようとするフクシマに、とことんこだわり続けるAさんが、輝いて見えた。

 Aさんが除染作業をしていた時に詠んだ短歌−
「はらはらと浪江の土手に舞う桜しばし忘れる胸の線量計」


Created by staff01. Last modified on 2015-02-01 18:34:20 Copyright: Default

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