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LNJ Logo 日中労働者連帯の新しいステップに―広州労働研究交流の報告会
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 3月21日午後、東京お茶の水の明治大学で広州労働研究交流報告会が開催され、80余名が参加した。昨年11月、日本の労働運動活動家、研究者、弁護士など15名が広東省広州市の中山大学国際労働共同研究センターの招きで広州市や深圳市を訪れ、ストライキが頻発する中国の労働運動の現状を視察した報告会である。改革開放が進む中国で急速な経済発展とともに農民工(出稼ぎ労働者)の置かれている現状と2010年のホンダのストライキを契機に労働者の闘いが前進する現状が報告された。

 報告会はレイバーネット国際部長の松元千枝さんの司会で進められた。冒頭、団長で一橋大学名誉教授の高田一夫氏があいさつ。今回の交流で中国の社会がゆっくりと着実に民主化に向けて前進していることを確認できたと語った。その後、26分の報告ビデオを上映した。

 最初の報告に立った団の事務局長、山崎精一氏が交流の概略と経過を説明した。今回の交流の形は労組間ではなくて、大学や研究者の交流としたことで、現場労組役員やNGOなど自由な交流ができたと説明した。そして、労働運動に参加している人たちが若いこと、また学生やNGOの人たちなど若者の労働運動への関心の高いことに目を見張ったと話した。報告の2番目、小川英郎弁護士は、2008年の労働契約法の施行で大きく変わった中国の労働法制を説明した。労働法制は派遣労働者の待遇など日本に比べて労働者にとって前進した内容であり、それは立法過程でパブリックコメントが反映されている結果だと語った。3番目に自動車産業で働く大井呑氏が、広州市の自動車部品会社90社の労組で構成する自動車産業労組連合(工連会)との交流を報告。自動車の年間売上が2,000万台を超える中国は今や世界一の市場となった。民主的な選挙で選ばれた組合委員長たちは、工連会の50%の組合で毎年10%以上の賃上げを獲得していると報告した。広東省にはホンダ、トヨタ、三菱など日系企業が多いので今後の日中労働者の交流が重要だと結んだ。

この後、コメンテイターの発言に移った。まず、全港湾の伊藤彰信委員長は発言。全港湾は日中労働者の交流の最初に手掛け、日中労働者交流協会を長く続けてきた。改革開放で市場経済化が進み労働者交流の在り方が旧来の労組のナショナルセンター、中華全国総工会との交流にとどまることは情勢に合わない。そこで、中国労働者の現状を具体的に紹介する日中労働情報フォーラムを昨年結成した。日中労働者の連帯を前進させるために同フォーラムへの参加を訴えた。2番目の稲垣豊氏は、レイバーネットなどに中国労働者の闘いを翻訳・報告してきたが、今回の訪中団の現地での交流によって工会(労働組合)の民主化がいくらか前進している実態を確認できた。障碍も多い中で中国の労働者の闘いの前進を期待していると語った。

 3番目に、中国人研修生・実習生の問題にもっとも精力的に取り組んでいる全統一労組の鳥井一平書記長が発言。今回の団に残念ながら参加できなかったが、最も望んでいることは中国の労働NGOと共闘することだ。中国人実習生は日本の最低賃金以下の月6万円の給料で働かされているが、中国ではその半分3万円しか稼げない。だから、日本での「技能実習」は中国人労働者の海外出稼ぎ労働であり、ブローカーを通じた派遣労働である。そんな事情の下で働く外国人労働者の日本人と平等な権利を担保することが私たちの課題と述べた。最後にコメントした中野麻美弁護士は、報告を聞いて中国で賃上げが活発になっている状況に比べて日本では労使の利益配分の機能が喪失して、賃金が下がる一方できている現実をどうしたらいいのか、と問い、憲法で保障された団結権と交渉権が労働組合のものというより労働者個人の権利としてとらえ、一人一人の労働者をエンパワーしていくことが重要と話した。

そのあと会場からの質疑の中で交流団の通訳として参加した馬場裕之氏は、団員が見学した広州市の中心部にある世界最大の繊維産業の町「康楽村」が「都市中の農村」(農民工の定住地域)だと説明した。また、団が交流した自動車部品関係労組連合(工連会)の労働者は大方農民工(都市戸籍を持たない労働者)であると報告した。中国の労災職業病のNGOと交流のある古谷(全国労働安全センター事務局長)さんが中国国内で政府に登録されない団体が公然と全国会議を開催できない実態を報告した。集会の最後にマット・ノイズ氏(明治大学特任講師)は、7月19日に今回交流団を受け入れてくれた中山大学労働問題国際共同研究センターの何高潮教授が来日して「南海ホンダのストライキ後の広東省の労働運動」と題して報告会を開くことを発表した。  日本の労働者や研究者が中国の労働者や組合(工会)、NGO、研究者や弁護士と直接交流した今回の経験が日中労働者連帯の新しいステップになることを確認できた集会であった。

↑ 広州市の中心部にある世界1の繊維産業街「康楽村」(都市内「農村」=農民工の定住地)

↑ 自動車部品産業労組連合会(工連会)との会議(彼らもは農民工)

■ 報告集「すべてはストライキから始まったー広州労働研究交流報告書」(82p)が発行され、定価300円で販売している。 申し込み先、電子メール 山崎精一 apjpyama@blue.ocn.ne.jp  または、高幣真公 takaheim@jca.apc.org

■ 引き続き中国労働運動の情報は日中労働情報フォーラムのサイトに掲載されます。 http://www.chinalaborf.org/

報告・写真 レイバーネット国際部・高幣真公


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