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LNJ Logo 「この身が灰になるまで 韓国労働者の母・李小仙の生涯」李小仙オモニが贈る希望と勇気
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李小仙(イ・ソソン)オモニの聞き書き評伝「この身が灰になるまで─韓国労働者の母・李小仙の生涯」が、この春刊行されました。


1970年11月13日、長男である全泰壹(チョン・テイル)さんがソウル平和市場の若い労働者達の過酷な労働環境改善を求め焼身抗議しました。李小仙オモニは「われわれは機械ではない」、「勤労基準法を守れ」と訴え、自らの身体に火を放った息子の遺志を引き継ぎ、その後の40年余、労働者に寄り添い、またその先頭に立って闘ってきました。そして「韓国労働者達の母(オモニ)」と呼ばれ、人間らしい生活を求める人々の精神的支柱にもなってきました。

2003年には日本で全泰壹さんの評伝が出版され、娘の全順玉さんとともに来日しました。東京と大阪で記念集会が開かれたこともあり、日本でも多くの人がオモニの肉声を聞く機会があったと思います。しかし、3年前の2011年9月3日に持病の悪化により81年の生涯を閉じました。

この本は、その李小仙オモニの生涯を世に伝えた唯一の書です。オモニの発言や闘う姿など、私たちは断片的に知ることはあります。しかし、自分のことを積極的には語ろうとはしない彼女からその生涯の話しを聞きだし、李小仙オモニという人を描くことは大変困難なことです。それを、この本の著者の若きルポ作家呉道(オ・ドヨプ)さんが、2年間にわたり彼女と暮らしを共にしながら話しを聞き、対話し、この評伝を世に放ちました。

この本のメインは、当然1970年の全泰壹さんの焼身抗議からその遺志を引き継いで、労働者と共に闘い、また命を奪われ、失った子どもの家族たちと共に子どもの名誉回復のために闘ってきた40年間です。そこには李小仙オモニと共にその時代を生き抜いた様々な人が登場し、当時日本の新聞などでも伝えられた軍事政権下の弾圧事件の様子が描かれています。オモニの目を通し、口を通し、身体を通して語られ、その時代の生々しい現場の空気が伝わってきます。

一方、第1部、第6部で語られる幼少期から全泰壹さんの焼身抗議までの過酷だが必死に生きるオモニの姿にも胸打たれます。彼女自身「話しは70年代からじゃだめかね」と、著者の問いかけに答えるように、貧しさと理不尽な出来事に耐えてきたこの時代は、「振り返りたくない時代」だったのでしょう。ただし、彼女の子ども時代からから結婚・出産時代が描かれることによって、息子の遺志を引き継いだその後の40年間の彼女の闘いが一層強い説得力を持って印象に残ります。

さらに、読者を引きつけるのは著者とオモニのこの2年間の「共に暮らした」様子を記したコラムコーナー「オモニの部屋で」です。9つのコーナーでは、直接のインタビュー再現もあり、また著者とオモニとの「悪口」の言い合いが愛情たっぷりにユーモラスに語られ、「韓国労働者の母」「烈士の母」などの修飾語がつけられて語られることない素のオモニの姿が浮かび上がります。

そのコラムで、「本が出るわけですが、どんな気持ちですか?」との著者の問いかけにオモニは答えます。 「ふん、誰が読んでくれるっての。むちゃくちゃな人間じゃないかって言われるんじゃないかい? むちゃくちゃに生きてきたんだから……。これだけ言ってくれればいいよ。有難かったって。みんなに有難うって。本当に。あたしはこんなふうに生きてきたんだから、その人たちがいなかったら、無事に生きてこられたか。考えてもみなよ。一人ひとり訪ねていって、お礼を言わなくちゃならないくらいなのに、もう自分一人じゃ歩くこともできないから、それもできないね。罪深い人間だよ」

この本の原題は「いやになるほどありがたい人たちよ─李小仙80歳の記憶」です。そして、「口が悪い」という印象のある彼女がこの本の中で、出会った一人ひとりに対してこの「ありがたい」という言葉を何度も贈ります。息子全泰壹のことを「あの子はね、人間が好きだったんだね」と回想する彼女自身、出会った人たちを心配し、恋しがり、感謝の気持ちを贈ります。闘いの中では激しく身体ごとぶつかる彼女の内面がやわらかく、相手を愛情をもって気にかけるやさしさにあふれていることがよく伝わってきます。

李小仙オモニが亡くなる直前まで、繰り返し訴えていたことは分裂ではなく「労働者の団結」、そして今日世界にはびこる「非正規雇用労働者」の問題です。彼女が求めてやまなかった労働者が人間らしく生きられる社会への道は容易ではありません。しかし、本書に折り込まれたオモニの心と言葉と行動は今、さまざまな困難に遭い、悩み、呻吟する私たちに希望と勇気をもたらしてくれるでしょう。


「この身が灰になるまで 韓国労働者の母・李小仙の生涯」
呉道/著 村山俊夫/訳
緑風出版(2014年3月31日刊行)
定価2,000円+税
チラシPDF


斎藤諭
李小仙オモニと共に歩む会
〒350-1162 埼玉県川越市南大塚2-14-16-611 斎藤諭方
携帯 080-1015-4145
E-mail  ss24.ina@ae.auone-net.jp


Created by takaheims. Last modified on 2014-04-18 15:46:11 Copyright: Default

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