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LNJ Logo 牧子嘉丸のショート・ワールド〜「レイバーネットTVにガイコツ登場す」の巻
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    第14回 2014年11月7日

「レイバーネットTVにガイコツ登場す」の巻

司会 みなさん、こんばんは。レイバーネットTVの時間です。今夜はスペシャルゲストとして宮武外骨さんをお招きしております。ご存知の通り、宮武さんは明治以来、権力と果敢に闘って来られた反骨のジャーナリストです。この写真の方ですが、「予は危険人物なり」と自称されたわりには温顔で、晩年はインドのガンジーにそっくりだと言われました。その宮武さんはすでに半世紀以上も前に亡くなられたのですが、昨今の政治情勢をみて、どうも成仏できぬと霊界からさまよい出られて来ました。
わがレイバーネットの技術部がその霊波をキャッチすることに成功、交信が可能になりました。これが独自に開発した霊界スマホで、近日中に「イタコちゃん」の愛称で売り出す予定です。さて、交信準備OKとのことで早速ご登場願います。もしもし、宮武先生ですか。きょうは革命的ジャーナリストの先駆であり、また我々の大先輩としていろいろお話を伺いたく思います。

外骨 いかにも吾輩が宮武外骨である。ただいま諸君が吾輩の後継を任じておられるがごとき趣旨の発言があったが、100年早い! 顧みるに、吾輩は明治・大正・昭和といかに言論と頓知で時の政府官憲と闘ってきたか。その艱難辛苦、苦心惨憺、粒々辛苦、臥薪嘗胆たるや、およそ言語に絶し、これを叙するに筆舌なしという有様で、、。

司会 先生、ちょっとお待ちを。我々現代の日本人ははなはだしく漢語の素養に欠けておりますので、もう少し平俗にやさしくお話いただけるとありがたいのですが。それで先生が本当のガイコツになるまでの半生をなるたけわかりやすくお願いします。

外骨 吾輩は、いやわしは慶応三年(1867年)に四国香川の讃岐で生まれた。讃岐の三奇人というて、もったいないことではあるが弘法大師空海、江戸の発明家平賀源内、そしてこのわしを言うのじゃ。幼名亀四郎、長じて外骨と名乗った。これは「とぼね」と読んで本名じゃぞ。上京の後十八歳から筆を執って、以来操觚者(そうこしゃ)として、と言うてもわからぬだろうが、まあ今でいうジャーナリストとしてやってきたのだ。その戦歴たるや、入獄4回、罰金15回、発禁等14回で、この数字がわしの言論人生を象徴しておるわけじゃ。

司会 なるほど、すごいですね。それで、先生の言論人としてのモットーは。

外骨 「威武(いぶ)に屈せず富貴に淫せず、ユスリもやらずハッタリもせず、天下独特の癇癪(かんしゃく)を経(たていと)とし、色気を緯(よこいと)とす。過激にして愛嬌あり」の精神じゃ。まあ平たく言えば、権力・権威を認めず、悪徳・私欲に手をそめず言論の自由のために闘うという意味だな。君らの志と同じゃ。しかし、わしの孤軍奮闘、五里霧中、四面楚歌からみれば、諸君なんぞはまだまだひよっこみたいなものだぞ。何のあの秘密保護法ごときものが。

司会 ハイハイ、よくわかりました。ところで、宮武さんのお考えが一番よく表れているのが、最近出版されました先生の『アメリカ様』ですね。権力者批判だけではなく、戦争にひた走った軍部・政府にひれ伏しながら、敗戦を境にアメリカ様に尻尾を振る日本人の心性が痛快に描かれています。

外骨 あの時の日本人が、軍国主義からの解放者としてのアメリカ民主主義を賛美したのはまだ許せる。しかし、今の日本人はいったい何じゃ。沖縄なんぞはアメリカ様々でやりたい放題ではないか。それを推奨督励しておるのがアベとかいう奴輩。なんでもこやつはわしが闘った伊藤博文や山県有朋とかいう藩閥政府の元凶長州閥の子孫とかいうではないか。いったい、君ら日本人は何をやっとるんじゃ。

司会 イヤ、なんとも面目のないことで。しかし、我々もそれを打倒しようと粉骨砕身、刻苦勉励、無我夢中、一日千秋の思いで闘っておるわけで。

外骨 君はなかなか古典の素養があるじゃないか。まあ、それにしてもアメリカ様の呉れた平和と民主主義のなかで育ってきたのだから無理もないところもある。が、最近その安泰しておった尻に火がついたという格好じゃな。

司会 おっしゃる通りで。全く言語道断で、悲憤慷慨しておるのです。

外骨 今度こそアメリカ様の力を借りず自分たちの手で取りもどすのじゃ。明治の自由民権運動を見習いたまえ。まだまだ自由も権利もある。それを行使しておらんだけではないか。しかし、こういう状況でわしを霊界から呼んで話しを聞こうという心がけは殊勝なものじゃ。どうかわしらが孤軍奮闘して言論・表現の自由を守ろうとした精神の一分なりとも受け継いで闘ってくれたまえ。あの世から見守っとるぞ。

司会 ハイ。これからは一意専心、勧善懲悪、精進潔斎、千里の道も一歩から、細工は流々仕上げをご覧じろ、の精神で一同やっていきたいと思います。

外骨 もうわかったよ。それから最後に、君らの仲間に「手のひら小説」とかいうのを書いておる御仁がいるじゃろ。あんなものは屁のつっぱりにもならんと言っておいてくれ。もっとわしの過激にして愛嬌ある文章に学ばんといかん。では、諸君、失敬。

司会 ハハー。本日はありがとうございました。(一同ひれ伏して見送る)

 *宮武外骨『アメリカ様』はちくま学芸文庫より出版


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