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LNJ Logo 事件発生から50年、狭山事件現地調査が行われる
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検察はすべての証拠の開示を
50年目の現場を石川さんと歩く

 1963年の発生から半世紀の歳月が流れた狭山事件。50年目の5月1日、現場近くで集会と現地調査が行なわれ、県内外から約100人が参加した。(主催・部落解放同盟埼玉県連合会)<上の写真は「出会い地点」とされるX字型十字路>

 午後1時。狭山市駅近くの富士見集会所には、続々と人々が集まった。「足利事件」の菅谷利和さんと、「布川事件」の杉山卓男さんも駆けつけた。ともに冤罪被害者である。

 菅谷さん(写真上)は17年間を獄中で過ごした。「警察につかまってから1年間は、面会も何もないんですよ。家からもこない、支援者もいない。一審の弁護士がいいかげんでしたからね。私をはじめから犯人扱い。困りましたよ」と振り返った。そのうえで「今日まで半世紀、石川さんがどんなに苦しんだか、私には想像できます。一日も早く自由の身になって、自分らと一緒に冤罪をなくすために全国を歩きたい」と結んだ。

 杉山さん(写真上)は、東京拘置所、千葉刑務所で石川さんと一緒だった。仮釈放の実現に、石川さんを目標にしていたという。石川さんの無罪を確信したのは、3度目の家宅捜索で突然見つかった万年筆の存在である。「私の目線ですぐ見える位置だ。警察が偽装したのは間違いない。警察がおかしいのは、インクの色が違うこと。どうせ偽造するなら、インクの色も同じにしろと言いたい。本当にいいかげんだ」と、警察の捜査を厳しく批判した。

■欠番扱いの重要証拠

 中山武敏主任弁護人は以下のように発言。
「発生して50年、苦難の日々だった。裁判所の決定に屈することなく、粘り強い闘いで2010年5月に36点の証拠開示をさせ、12回の三者協議を開かせた。これによってようやく、大きく動き出した」。「50年の節目に、なんとしても未開示の証拠を出させたい。証拠番号には検察以外は見ていない欠番がある。この品目が脅迫状とか被害者の持ち物に関係しているものだ」。
 中山さんは第三次再審請求で、筆跡鑑定人・法医鑑定人、そして「犯行現場」で農作業をしていた男性の証人尋問を実現させ、再審開始に結びつけていきたいと話した。

 石川一雄さんが登壇した。本人が事件を知ったのは5月1日ではなく、4日だった。「魚釣りから帰ってきたら、死体が見つかったというので、釣りに行った人たちと現場を見に行った」。

「身代金の受け渡しの日には、映画を見に行っていた。こまどり姉妹の『未練心』3部作だった。真犯人だったら映画なんか見るものか。それだけでも無実だとわかっていただける」。

 妻の佐智子さんは、前日から狭山に入っている菅谷さん、杉山さんをねぎらい、「多くの冤罪被害者たちが連帯して、スクラムを組んでいる。冤罪の苦しみは本人だけではない。家族そして被害者も、真犯人を取り逃がしたという無念が晴れない」。

そして「警察の大きな失態が、たくさんの人を塗炭の苦しみに巻き込んだ。今なお警察・検察は反省がない。半世紀もの間、証拠を隠し続けている」と糾弾。「それでも石川は元気です。みなさんのおかげなのです。真実は必ず明らかになる。新しい風が吹いている。50年目のこの年にきっと前進する。50年を超えさせない闘い、大きな世論を裁判所に届ける」と力を込めた。

 現地調査は2時から、三つの班に分かれて出発した。主催者は参加者に豊富な資料を用意し、懇切丁寧に解説する。狭山市は林や畑が広がる農村だったが、現在は住宅が立ち並ぶ閑静なベッドタウンに様変わりした。それでも当時の名残は随所に残っている。

■部落差別の現状を知るべき

 現調のポイントは、石川さんの虚偽の自白どおりに時間を計って歩くこと。権力側の描いた犯行が、いかに荒唐無稽で矛盾に満ちたストーリーであるかが実感できる。最後に、石川さんの実家の台所を忠実に再現した現地闘争本部へ。鴨居に置かれた万年筆の位置を再確認する。

 集会場に戻って開かれた記者会見で、中山弁護士は47年ぶりに明らかにされた逮捕直後の上申書をとりあげ、脅迫状との明らかな筆跡の違いを、繰り返し指摘した。鎌田慧さんは、極貧かつ部落民という厳しい差別が、石川さんの教育の機会を奪ったことの社会的背景に踏み込んだ。

 「部落の人たちは、捜査当局が考えたよりも、はるかに識字能力が低かった。マスコミのいう『学歴の低さ』とレベルが違う。当たり前の教育を受けられず、文字を書けない人たちには、脅迫状を書くという発想そのものがない」。

「日本は97%の人が読み書きできるというが、それも満足にできずに恥じている人が、自分の能力で脅迫状を書こうとするはずがない。そんな事情をまったく理解できない人たちが、裁判長や検察、警察を構成している」。「被差別部落の現状を学ぶことが大切だ。そういう日本の文化の現実があり、暗部があり、それはまだ解決していない」。

 すべての行動が終わった午後5時、雨が降り出した。奇しくも50年前のあの日と同じ風景になった。第三次再審請求で弁護団は、今年を最大の山場と位置づけて取り組んでいる。

■すべての証拠を開示せよ

検察が隠し続けた証拠を積み上げると、その高さは3mにもなるという。過去に冤罪が晴らされた事件は、証拠開示がきっかけになった。これまで12回の三者協議で出されたのは129点。しかし「殺害現場」の捜査報告など、無罪の決め手となる重大証拠について、検察は「不見当」(見当たらない)などと頑迷に提出を拒否している。

参加者と主催者は、証人調べ、事実調べを実現するために、全力で闘う決意を共有して解散した。(Y)


Created by staff01. Last modified on 2013-05-04 20:50:58 Copyright: Default

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