本文の先頭へ
朴鐘碩さんが神奈川県に抗議文〜朝鮮学校「補助金見送り」撤回を求めて
Home 検索
2月13日、北朝鮮の核実験を受けて、黒岩祐治神奈川県知事は、県2013年度当初予算案に、県内朝鮮学校5校に対する計約6300万円の補助金計上を見送ることを決定しました。再開の可能性は「北朝鮮が国際社会に受け入れられるような劇的な変化があるか、朝鮮学校が政権とは一線を画している明確なメッセージがなければ難しい。相当ハードルは高い」とし、県が1977年度から続けてきた補助金支給が事実上打ち切られることになります。これに対し、横浜弁護士会が会長声明で、神奈川新聞が社説で批判。さらに、朴鐘碩さん(元日立闘争当該・写真)が提出した抗議文は、次の通りです。

【オクロス】http://www.oklos-che.com/2013/02/blog-post_9959.html?spref=tw


神奈川県知事 黒岩祐治様
                                2013年2月15日
                                朴鐘碩(パクチョンソク)
                                日立製作所勤務
           
     抗議文・朝鮮学校への「補助金見送り」撤回要求

私は、横浜市戸塚区に住む在日韓国人です。
1970年、私は国籍を理由に日立製作所から採用を取り消されました。しかし、横浜地方裁判所に提訴し、’74年国籍による就職(民族)差別は法違反であると判断され全面勝利しました。その後、私は日立製作所で働き、東日本大震災、日立・東芝が造った福島第一原発の事故が起きた2011年11月に定年退職しました。現在も日立製作所で嘱託として働いています。

この裁判は、日立(就職差別裁判)闘争と呼ばれ、日本の教科書に記述されました。横浜地裁の勝利判決は、国籍を理由に就職できなかった青年たちに自信と勇気を与え、閉ざされていた弁護士、公務員、教師への門戸を開くことになりました。また、同時に外国籍住民に制限されていた児童手当、公営住宅入居、金融公庫借入など様々な権利を勝ち取ることができました。

公務員への門戸も拡大しましたが、未だに採用された外国籍公務員は、単なる国の見解である「当然の法理」という厚い壁によって許認可の職務、決裁権ある管理職に就けません。外国籍教員は、非常勤扱いであり、正式教員、管理職になれません。

日本は、1910年朝鮮半島を植民地にしました。戦後70年近くなりますが、県内の日本人と共に暮らす外国籍住民は、日本人の下請けを担う「二級市民」として不当、不条理な差別を受けています。

黒岩知事は13日の記者会見で、「北朝鮮の核実験を受け、県内の朝鮮学校5校に対する補助金約6300万円について、2013年度予算案への計上を見送る」方針を表明し、「国際社会が強く反対する中で、3回目の核実験が強行された。これ以上補助金を継続することは、県民の理解が得られない」と発言しました。

戦後70年近くになりますが、日本は、犠牲となった朝鮮半島はじめアジア諸国、日本の民衆への戦争責任を明確にせず、清算していません。多くの矛盾と課題が残されています。植民地支配によって在日を余儀なくされ、日本社会から不当な差別・抑圧に耐えて生活している(高齢となった)朝鮮人、その子弟たちの教育と核実験、拉致問題は関係ありません。知事が、何故核実験と朝鮮学校に対する補助金を絡ませたのか理解できません。

ナチズムのユダヤ人排斥を思わせる、外国籍住民、特に朝鮮人への排斥運動が東京のど真ん中で強まっており、公安は、彼らを規制することもできません。黒岩知事の「補助金見送り」発言は、この排斥運動をさらに助長します。
良識ある日本の皆さん、このような事態を黙認していいのでしょうか。

広島、長崎に原爆を投下した米国は、戦後も核実験を続け、核兵器を保有しています。そして軍隊まで駐留し、沖縄をはじめ多くの基地周辺(神奈川県民)住民が抗議し、反戦、平和を訴えていますが、基地は存続しています。アメリカンスクールへの補助金はどうなっているのでしょうか。

そもそも朝鮮半島を植民地にし、朝鮮戦争で南北に分断したのは、米国、ロシア、中国をはじめとする覇権国と朝鮮戦争で経済復興を成し遂げた日本ではなかったでしょうか。

「これ以上補助金を継続することは、県民の理解が得られない」と発言していますが、県民とは誰のことでしょうか。神奈川県は、中華街(横浜)、コリアタウン(川崎)があり、多くの外国籍住民が住んでいます。外国籍住民も同じ県民です。

「県民の理解が得られない」のであれば、黒岩知事自ら弱者である外国籍住民の立場になって県民を説得すべきです。それが国際都市、川崎と横浜を抱える自治体首長の使命だと理解します。

北朝鮮の核実験と無関係の朝鮮人子弟が学ぶ民族学校への補助金を見送り、高校無償化の対象から除外することは、(民族)差別そのものであり、朝鮮人を「二級市民扱い」した戦前の日本帝国主義の植民地時代と同じです。

神奈川県庁近くにある横浜地裁は、国籍を理由にした日立製作所の採用取消は、違法であると判断し、大企業の就職差別を断罪しました。
この勝利判決は、声を出せなかった朝鮮人の人権意識を高め、その後の人権獲得運動に重要な役割を果たしました。日立闘争は、多くの日本人(青年)が関わり、日本の戦争責任を問いました。日本と朝鮮半島、アジアとの将来のあるべき関係を見つめ、人間性と生き方を求めました。

私は、今後も理解ある日本人住民と共に開かれた地域社会を求め、黒岩知事に
「朝鮮学校への補助金見送り」の早急な撤回を求め、高校無償化を強く要求します。

【横浜弁護士会】http://www.yokoben.or.jp/profile/gaiyou/statement/2012/post-151.html
【神奈川新聞】http://news.kanaloco.jp/editorial/article/1302140001/

          報告:佐藤和之(各専労協・佼成学園教職組・日韓市民連帯の会)

Created by staff01. Last modified on 2013-02-16 10:42:35 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について