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被写体に育てられ、被写体を育てた写真家

「92歳の報道写真家 福島菊次郎展」を観て 2013/8/24ー10/20

ドキュメンタリー映画『ニッポンの嘘-報道写真家 福島菊次郎90歳』を観たのは、シネパストが閉館すると騒いでいた頃、多分2012年の冬だった。そんなに期待もしないで、ドキュメンタリーだからと入ったのだが、映画館を出るときは、支配人を捕まえて「もっと宣伝しなくちゃ」と興奮していた。何人かは、私に促されて映画を観に行った。その福島菊次郎さんの写真展である。やっと時間ができて、友だちたちと行った。

最初の1枚目から涙が止まらなかった。写真を撫でたくなるので( 森住卓さんの今年の新宿でやった福島の写真展でも、一枚目から涙が出てきた。出荷できないしっかりと育ったほうれん草を、思わずなでたような……)、しっかりと手を後ろで掴んでいた。だから涙は頬を伝い放題。でも私の涙なんて、軽いものです。広島で被爆して、原爆症で苦しむ中村杉松家の泣けない涙より。

どんな生活をしていたのでしょう。多分、写真でも文字でも伝わらない苦しみや哀しみ、そしてあろうことか喜びもあったでしょう。身代わりになることができない悲しさ。それを、(「写真でも」と書きながら、矛盾しているように聞こえるかもしれないけど)福島菊次郎さんの写真は伝えてくるのです。目の前に中村さんが苦しみ悶えているのです。つかの間の喜びもあるのです。生きているのです。

書き込まれた生活保護の民生委員だか、役人だかの記録は、「畜生」にも申し訳ないくらい、畜生なのです。今大阪とそっくり!! 健気な長女は何を思っていたのか、一見家を捨てたように見えるほかの子供たちも、深い澱を沈めていたに違いないのです。

映画『ニッポンの嘘』では、中村さんが亡くなって、子どもたちにカメラ共々お参りも拒否された福島さんは、深く自己を省みていました。それによって、報道写真家としての彼が築かれたのでしょうか。

あとにつづく東大安田講堂も、三里塚も、ウーマンリブも、柔らかい瀬戸内の島の子どもたちの写真も、そして福島の写真も、そこに主張する「人」がいるのです。考える「人間」が映し出されているのです。あの拒否によって、しっかりと焦点が定まったのでしょうか。

「伝える」ということの重さを感じながら、友人たちとその知り合いの若い母子たちと、明るい日差しの中、横浜の山下公園に向かったのでした。(笠原眞弓)

〔入場料〕
一般・大学生 500円、高校生 300円、小・中学生 無料。中学生以下を連れて行くと、大人はシニア料金の400円に。アートスペースの開館時間 10:00から17:00まで

「92歳の報道写真家 福島菊次郎展」(日本新聞博物館)HP


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