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タクシム広場とトルコ労働運動 〜高揚する抗議行動の深部にあるもの〜

<2013年6月3日>

 トルコでこの数日間、大規模な反政府デモが続いている。発端は、イスタンブール中心部の公園再開発反対運動に対する当局の弾圧。抗議の声は瞬く間 に全国へ広がり、主要都市のアンカラやイズミルでも民衆と治安部隊が衝突している。イスタンブールでは公園に隣接するタクシム広場へ4万人が行進し、占拠 闘争が展開中だ。各地の市街戦で大量の人々が警察に拘束されたり負傷し、アムネスティ・インターナショナルは少なくとも2名が死亡したと発表している。だ が、トルコ国内での詳細な報道は皆無の状態で、海外のメディアとネット情報が緊迫した情勢を伝えている。

 今回の事態は、政権の座に10年就いているエルドアン首相の強権ぶりに大衆の怒りが爆発したためとも言われる。アルコール販売の制限への不満やシ リア内戦関与に対する不安は確かにある。しかし、ショッピングモールを建てるという再開発計画に市民・労組員らが執拗に反対したのはなぜか。その点に言及 している報道は見当たらない。そこで、昨年まで現地でメーデーに数回参加したものとして、このタクシム広場の歴史的背景について解説する。

  イスタンブールのメーデーは今年大きく荒れた。当局が、再開発の工事を口実にタクシム広場の使用を禁止したためだ。当日は、市の公共交通をス トップさせるという「ロックアウト」紛いの強硬策に加え、広場に向かうものは放水車・催涙弾を使って容赦なく抑え込んだ。現地で式典参加予定だった、 ITUC(国際労働組合総連合)のシャラン・バロー書記長は抗議の声明を出し、このような国で2年後にG20サミットが果たして開催できるのかと政府の態 度を糾弾した。

 ところで、この広場でメーデーの大集会が再開されるようになったのは、実はここ数年のことなのだ。1977年の式典中、何者かが広場に向かって発 砲し、群集がパニック。その渦中で30数名が死亡した。狙撃犯は決して捕まることはなかったが、極右の過激派に秘密警察が手を貸した事件と今日では認識さ れている。その3年後には軍事クーデターが起き、戒厳令が数年敷かれた。革新的な労働団体などは解散を強制された。民政移管後、タクシム広場は様々な団体 のイベントに開放されたが、メーデー使用申請には一度として許可が下りなかった。

 事態が大きく動いたのは、5年前。メーデー参加者に対する治安当局の過剰な取り締まりがネットを通じて世界中に伝えられ、国際的な抗議の輪が広 がったのである。世論にも押され、政府は翌年にタクシム広場を一部の労働団体の代表者らに初めて開いた(写真下)ほか、5月1日を再び祝日と制定した。翌 2010年からは全面的な使用を認め、全ナショナルセンターが共催するメーデー式典が実現した。昨年は推定で50万人が参加。これは、欧州最大規模であ る。広場は決して広くなく、最初に入場した人々は後続隊にスペースを譲る段取りだ。

 留意すべき点は、トルコの労働者組織率がわずか6%(OECD統計、2009年)であるということ。つまり、イスタンブールのタクシム広場へ大河 のように流れ込む人々の多くは自主参加であり、労組の動員で5月1日の式典に来ているのではないのだ。負の歴史にも規定され、この国では「働くものの祭 典」に対する勤労者の思い入れは格別に強いのである。

 そもそもここは、1920年のトルコ革命と共和制の誕生を記念する碑が建つ場。国の近代化を推進した初代大統領アタチュルクの銅像と共に革命を支 援したソ連の政治家フルンゼと軍人ヴォロシーロフの像が並んでいる。公園の取り壊しとモールの建設後は、イスラム色の強いエルドアン首相が広場にモスクを 建てるとも噂され、広場の性格を抜本的に変質させてしまう政府の動きに民衆の不審感は根強い。同時に政権側は、「テロ容疑」を口実とした官公労組への不当 弾圧や労働法令の改悪で労働団体に大きな圧力をかけているが、国際連帯を通じた闘争勝利などもあり、新しい運動の萌芽も見られる。そうした動向に権力者も 警戒心を解かない。

 現政権下で最大規模となった今回の抗議行動の深部には、タクシム広場とトルコ労働運動を巡るこうした背景があるのだ。

レーバースタート国際署名を!

トルコー治安当局は暴力行為をやめ、抗議行動を認めよ


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