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被ばく労働問題で政府交渉〜末端労働者使い捨ての構図

福島原発惨事以降、高い線量下ではたらかざるをえない労働者保護のため、10月11日に関係省庁との交渉が行われた。交渉に参加したのは、厚生労働省、文部科学省、環境省、経済産業省の各省と、福島原発事故緊急会議被曝労働問題プロジェクトをはじめとする個人や、労働組合や市民団体だった。

下請け構造に支えられている原発労働について、労働基準法や健康保険法などの法律を順守するよう東電や元請け会社を指導すること、労働者が被曝線量を超過した後も生活保障することなど10項目の要求に対しての各省から回答を求めた。

被曝線量を超過した際の雇用保障について、厚生労働省は「各地のハローワークなどを通して再雇用先もあっせんすることになっている」と回答。出席者からは苦笑がもれた。長期的な健康診断は厚労省の指針に記されているが、医療費二次負担などは東電から支給するように検討中だという。

厚労省によると、これまでJビレッジで毎月140から190名ほどの作業員が医療サービスを利用してきたが、そのうち、30%から40%はカゼの症状、10%が体の痛み(頭痛、腹痛)などを訴え、10%以下は皮膚のかぶれの治療を受けた。交渉に参加した医療関係者は、「皮膚のかぶれや体の痛みなどは、被ばく症状とも考えられる」として引き続きの検診を求めた。

また、協力企業の産業医を配置し、作業員のカウンセリングなどを行っていたが、労働組合関係者からは、「会社関係の産業医では、労働者が相談しにくい」という意見も出た。交渉では、高線量環境で作業することがどれだけ精神的苦痛を伴うのか、という調査をするよう求めていたが、これまでに防衛医大が行った調査は震災の影響に限られていた。

各省の回答からは、末端労働者の実態を把握しておらず、限界に近い線量を浴びたり線量超過した労働者が、次々と使い捨てられていく構図が解決されていない印象を受けた。

労働組合や市民団体からは、原発労働者だけでなく、除染作業員の賃金や作業記録、線量記録の管理徹底が要求され、今後も具体策を編み出すまで引き続き交渉していく予定。

「ふくいちを収束しなければいけない。しかし、そこでは生身の人間が働き、労使間の問題も起こっている。これから30年も40年も続くわけだが、平時ではない状況での問題として考えてほしい」と全国一般労働組合の遠藤一郎氏は訴えた。さらに遠藤氏は「命をかけての収束作業に従事している労働者がいるのに、普通の省庁交渉しているようだ」と語った。調査は、福島第一原子力発電所に限られている。そこで働く数千人の作業員に対して保護を徹底するのがそれほど難しいことなのか。これからも多くの作業員が必要となってくる今、国には早急の対応が求められている。(松元ちえ)


Created by staff01. Last modified on 2012-10-11 23:24:41 Copyright: Default

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