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福島避難区域の学校現場は今 福島県教組副委員長柴口正武さんに聞く

 昨年5月、福島県教育委員会は2012年度の教職員新規採用をしないことを発表。さらに「兼務発令」を発出し、休校となった小中学校等の教員を在籍校と児童生徒の転校先校のうちのどこか一校に勤務させる措置をとった。その数は、双葉郡の場合450名以上にのぼった。その結果、避難先からの長距離勤務を強いられる教員も出、子ども、同僚から引き離されたばかりか単身赴任をせざるをえない教員も出た。

 福島県教組は、当該の双葉支部、相馬支部を中心に「兼務発令」によって生じた劣悪な労働条件の悪化の改善を県教委に求め続けてきた。その結果、この春の人事異動交渉を通じ、相馬支部では兼務教員を解消、双葉支部では100名台に減少させ、100%とはいかずとも極端な長距離通勤の解消が実現した。

 しかし、課題は「満載です」と柴口副委員長は言う。

 第1に、「兼務」の解消は、そのほとんどが休校していた学校の開校によってもたらされたものであるということだ。開校といっても名ばかりで、例えば双葉郡の場合28校の小中学校のうち16校が開校したが、もどってきた子どもたちは震災前のわずか 12.3%である。極端な例をあげると、震災前に児童数516名の学校がわずか15名で開校したという例もある。柴口さんは、「開校が復興のシンボルのように宣伝されているが、我々は復興の実感をまったく感じていない」と語った。

 第2に、子どもたちがもどってきていないことは、大多数の子どもが未だに避難先にいるということだ。その数は、双葉郡の場合5000名にのぼるという。兼務の解消の有無にかかわらず、双葉、相馬の教員が避難した震災前にかかわっていた子どもたちのケアをする手立てはほとんどない。

 第3に、開校した学校の最大の課題、「除染」である。学校の除染は、業者に委託されるが、それはハードの部分(校庭、校舎の壁面、校内の廊下など)に限られ、細かな部分、例えば教室のカーテンなどは教職員に任される結果となり、その方法をめぐって現場が当惑しているという。つまり、除染の「詰め」は教職員に委ねられているのだ。

 インタビューの中で深刻な状況の中で教職員組合が改善の方向性を職場や教委に示し、少しずつでも前に進んできたことが伺えた。しかし、それでもこれからの道のりは険しい。

 柴口さんは話題にしなかったが、教職員の健康管理の問題も忘れてはならない。避難区域の教職員は、震災直後原発の爆発のあった時点で何も情報が与えられず、避難先を転々とした。その中には、放射性物質がふりそそいだ北西方向に逃げた教職員もかなりいることが予想される。中には、子どもたちと避難した教職員もいる。その人々に、今何らかの医療的なケアがあるのか?と柴口さんにたずねると、「福島県民は、みな同じ境遇ですよ」という答えが返ってきた。しかし、聞くところによると兼務発令された教職員の中には、定期健康診断すら受ける余裕がなかった人もいるという。ここまでくると教職員の「生きる権利」すら危ぶまれる状況と言わざるをえない。

マスコミが学校現場の実態をほとんど報道しない中、生きる権利、働く権利を学校現場で築く以外に子どもたちも救えないということを再度かみしめたい。(湯本雅典・インタビューは5月2日に収録)

柴口インタビュー動画(YouTube)

「福島の教員を翻弄する兼務発令の実態」東京FMタイムライン・2012年5月2日放送(wmaファイル)


Created by staff01. Last modified on 2012-05-07 10:50:59 Copyright: Default

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