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LNJ Logo 未来をつくるのはだれか?〜不起立への思い(山田肇)
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News Item 0413yamada
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*以下は、卒業式で「君が代不起立」をし戒告処分を受け、研修で転向を迫られた大阪の教員・山田肇さんが、4月10日の離任式で教職員に配布したビラです。山田さん「誓約書」に署名しなかったため、合格が決まっていた「再任用」を取り消されました。以下、本人の了解をえて、紹介します。(編集部)

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未来をつくるのはだれか?

          2012.4.10 山田 肇

 入学式や始業式が過ぎ、新しく子ども達との出会いがまた始まり、活気と忙しさの毎日を過ごされている教職員のみなさん!僕も3月末の定年退職後、再任用でまた4月から働く願いを持っていました。だが、それは夢まぼろしと消え、卒業式の『君が代』のわずか50秒、座ったことを理由として、合格していた再任用を取り消されてしまいました。このことは、僕個人のクビがつながらなかったことをこえて、これからの大阪の教育に大きくかかわることだと考え、筆をとりました。

白濱先生らの反省と決意から、戦後の教育がはじまった!

 4月5日放送のMBSテレビのドラマ『ブラックボード―時代とたたかった教師達』を見られたでしょうか? 主人公の白濱先生は、戦争中、子ども達を前にして「この聖戦に勝つしか、日本は未來はない」と語り、自分も招集を受けフィリピンの戦場で片腕を失いましたが、敗戦後、帰国しました。だが、教え子は戦死し、あるいは失明し、あるいは今も心で戦争している兵士のままでした。そして、とまどい悩みながら再び教壇に立とうとする白濱先生に、教え子の一人は「子ども達を戦場に送りこんだ先生に、教える資格がない。」と言います。それに対して、白濱先生は「先生はまちがっていた。聖戦など、どこにもない。人を殺し、腕をもがれ、命乞いした、このぶざまな姿を黒板の前にさらすことでしか、あやまることも答えることもできない。」と言って、黒板に未来と書き、「みんな生きろ。そして、未来をつくれ。」と言います。

「教え子を戦場に送り出した」白濱先生らのこの反省から戦後の教育は出発しました。そして、戦後の先輩教師は「教え子を戦場に送るな」というかたい決意で、子ども達の「未来をつくる」ために闘いました。だが、その闘いは、子ども達を侵略戦争の戦場に送り出した大本の天皇制や、また、その道具立てであった『日の丸』『君が代』にまでは至りませんでした。しかし、その責任を戦後の先輩教師に負わせても何も解決しません。いまだ『日の丸』『君が代』があり、学校現場に持ちこまれていることは、僕たち現在の教師の責任だと考えてきました。そして、僕は、侵略戦争の血にまみれた『日の丸』『君が代』が卒業式にもちこまれることには反対ですの意思をこめて、『君が代』と同時に静かに座りました。

『誓約書』という『踏み絵』をふまないから、再任用取り消しか?

 3月27日、『戒告処分』を通告されました。しかし、『研修』と「今後、卒業式、入学式の国歌斉唱の職務命令に従う」(『誓約書』)という文書の署名・捺印をせずに、その場を出ました。『誓約書』に署名すれば、卒業式の『君が代』で座ったことが間違いだったと認めることになります。非は、卒業式に『日の丸』『君が代』をもちこみ、それを強制する校長―教育委員会にあると考えているのに、『誓約書』は、僕に「考えを変えろ、転向せよ」と言っていると思い、署名・捺印をしませんでした。

3月29日、再任用に合格していたにもかかわらず、『再任用取り消し』通知を受けました。「勤務実績は良好でない」からだそうです。『君が代』で座った、この一点で、このことを唯一の理由として、大阪府教育委員会は、「勤務実績が良好」から「良好でない」へと判断を急転直下させました。

 そして、僕と同じく、『戒告処分』を受けたが、その後『誓約書』を出された高校の先生(1名の方をのぞいて)は、再任用が取り消されませんでした。ということは、『誓約書』を出すか、出さないか、この『踏み絵』で再任用の可否を決めたようです。新聞報道によれば、『誓約書』は「任意」のようです。「法律に従うのが教育公務員」だとする彼らが、法律にもとづかない「任意」の『誓約書』で再任用の可否を決めたことになります。これは、大きな問題です。

 3月30日、大阪府人事委員会に「戒告処分」と「再任用取り消し」に対する不服申立書とその理由書を提出してきました。この申し立てが受理されることを願っています。

命令や処分で教育が成りたつか?

 白濱先生は、子ども達に「未来をつくれ」と言いました。未来をつくるのは、子ども達であり、教師であり、また労働者市民の力です。そして、子ども達の未来をつくる教育は、一人一人の自立した教師の考えや活動と、それをつなぎ合わせた協同の力で成りたつものだと思います。教師が「何が正しくて、何がまちがっているのか」を考えず、命令や処分をふりかざす校長や教育委員会のロボットのごとく動かざるをえなくなってしまったら、いったい、教育と子ども達の未来はどうなってしまうのでしょう?

そう考えて、僕はこれからやるべきことをやります。みなさんのご理解とご支援をお願いします。


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