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とんでもない!郵政13694人の非正規切り〜第一回裁判開かれる

昨年9月末に、それまでの慣行を無視して65歳以上の郵政非正規職員13694人が、一方的に解雇された。これに怒った有志5人が提訴。初めての裁判が、2 月9日、東京地裁620号法廷で開かれた。24の傍聴席に約60人、小さな法廷は「立ち見」であふれかえり、午後1時10分の開廷を待った。職員が退場を促すが、「たくさん来ていることを裁判長に見せたい」と立ち見の傍聴者は出ていかない。そこに裁判長が登場。目をシロクロさせ、「立っている人は外に出てください」。立ち見の人「もっと大きな法廷でやってください」と言い残して退場した。裁判では、解雇された丹羽良子さん・深尾忠典さんが堂々とした陳述を行い、同じ仕事をしながら、低賃金・不安定を強いられている非正規の実態を強く訴えた。(M)

ーー●丹羽さん(写真左)の陳述ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2012年2月9日

意 見 陳 述

東京地方裁判所民事第11部 御中

丹羽良子
〈経過〉
 私は、2011年9月末日、郵便事業会社佐野支店を解雇されました。この時、全国で13,694名の65歳以上の非正規社員(期間雇用社員)が、同時に解雇されました。
 私は、2004年、佐野郵便局(当時)に、非正規社員、所謂ゆうメイトとして入社し、昨年9月に解雇されるまで7年半の間、働いてきました。
 今回の解雇は、期間雇用社員就業規則10条2項によるものとされていますが、この規則は私の入社時には存在せず、民営化時に導入された際にも周知はなされませんでした。
〈解雇による影響―生活の問題〉
 私は、前職の解雇により生活の糧を奪われ、郵便局に入社しましたが、入社時の時給は700円台であり、当初の賃金は月額概ね、8万円から15万円の間で、入社後も長い間、生活は成り立たず、毎月、生活費を貯金から補てんしていました。ただでさえ少ない賃金月額にこのように大きな開きがあるのは、すべて、会社の都合によるものです。
 郵政非正規社員は、正規社員と同等の業務をこなしながら、賃金は数分の一という低待遇に押し込められ、勤務時間等の労働条件も支店が決定し、その上、6か月ごとに契約更新を繰り返すという不安定な条件下での労働を余儀なくされてきました。
 本来的に、同じ仕事をしながら「正規」「非正規」という名前の違いだけで賃金に数倍もの差があり、「期間満了」という言葉による解雇に怯えながら働くということが、許されてよいはずはありません。  
〈解雇による影響―社員の労働強化〉
 約14,000人もの熟練非正規社員が一斉に雇止めされたことにより、越谷支店や豊中支店をはじめ、郵政職場は大混乱に陥りました。
この異常事態につき国会で質問がなされ、支店には、総務省・労基署・郵政本社監査部の調査が入りました。
   私の仕事は、6人の非正規社員で担っていましたが、その6人のうち4人が今回、解雇されました。その結果、全業務に通暁している者は一人しか残らず、新規に採用された者も定着せず、残った一人に、2週間休み無しの勤務などの多大な負担がかかりました。
私の仕事は、1年365日、必ず誰かが行わなくてはならない業務であり、4人が解雇されれば、必ず4人の補充が必要です。人数は同じだけ必要なのですから、今回解雇によって会社が得る利点は、時給の差額分の取得、この1点にしかあり得ません。私達を解雇した後、佐野支店は私の職種をハローワークで募集していました。
 65歳雇止め後、どうにも業務が回らず、解雇した非正規社員を再雇用した例も存在します。しかし、時給は解雇前より引き下げられ、この雇用は永続的なものではありません。
〈解雇による影響―お客様へのご迷惑〉
 65歳解雇による影響は被解雇者の生活苦や現場社員の労働強化に留まるものではありません。今回解雇による人手不足・職場の混乱の影響は、業務レベルの低下を招き、社員への労働強化となり、そのしわ寄せは、最終的には、利用者である国民に及んでいるのです。
〈たび重なる、非正規社員攻撃〉
会社による非正規社員攻撃は、今回が初めてではありません。 2010年の小包部門の日通との統合にあたり、会社は、私達非正規社員に、賃金の大幅削減を、解雇をちらつかせながら強要してきたのです。これは、事実上の退職強要とも言い得る暴挙です。
この時は、政局の変化もあり、この件は白紙に戻されました。しかし、今回、会社は、就業規則の「65歳定年制」を理由として、再び、解雇を強行してきたのです。
前回の大幅な労働条件削減による解雇攻撃と今回の解雇を併せ考えれば、会社が、我々非正規社員を「生きて生活する者」としては見ておらず、「いつでも取り換え可能な部品」として見ているということは明らかです。

〈解雇は、郵政経営陣の失敗の、非正規社員への転嫁〉
日本郵政は、今回解雇の理由として、郵便事業会社の赤字を挙げていますが、この赤字の大半は、郵便事業会社の小包部門と日通との統合の失敗によるものであり、この失敗の責任は郵政経営陣にあり、労働者にはありません。この解雇の本質は、郵政経営陣が、統合失敗のつけを、最も弱い立場にある非正規社員に転嫁してきたことにあります。

〈要請〉
 裁判所におかれましては、今回解雇が、就業規則を理由としながら、実態は、郵政経営陣の失策による赤字の補てんのために行われている点にご注目いただき、解雇によって引き起こされた被解雇者・現場社員・お客様への多大な影響をご精査いただき、就業規則無効と、私達の職場復帰をご認定下さいますようお願いいたします。

ーー●深尾さん(写真左から二番目)の陳述ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  陳述書

東京地方裁判所民事11部 御中
                             2012年2月9日

原告 深尾 忠典

私は二点について陳述いたします。
一つはいわゆる「65歳問題」あるいは「定年問題」が私の入社した平成18年から雇い止めされました平成23年9月までの間に職場ではどのように運用されていたのかについてです。
他の一点は25万人が働く郵便事業会社はいくつもの構造的問題を抱えていますが、その病理現象も述べたいと思います。

〔1〕 六十五歳問題について

私が採用されたのは平成18年で民営化の1年前です。当時は「定年」はなく それもこの会社を選択した一つの理由でした。同じく原告の向山は採用時「体の続く限り働いてください。」と言われ、採用は67歳でした。職場には当然のごとく70歳を超えた方が元気に働いておりました。
会社は平成19年に民営化されたときに就業規則で65歳を定年としたと後になって言っていますが、当時職場で配布された就業規則の抜粋にはそのことは明示されていません。何も触れられなければ当然のごとく定年はないとの理解がなされたというのが実態です。会社が「定年」を言ってきたのは平成22年秋です。「実は定年は65歳と決まっており実施を延長していたのです。」という言い方だったと思います。
職場では大騒ぎになりました。ここの収入だけで生活している人もたくさんおり退職金も年金もなしで放り出されることが 現実になったからです。 
加えて申し述べたいのは、その説明も上司は納得させるという姿勢はなく単なる通知として処理しているようでした。私の民間会社での経験から言えば、上司はなだめたりすかしたりしてでも納得を取り付けようとするものですが、そんな姿勢は微塵もありませんでした。
私は雇い止め時、コールセンターに所属しておりました。
会社からはリーダーに指名され、顧客とのトラブルが発生した時などは他のスタッフに代わり対応しておりました。また英語しか話せない外国人などから電話がきたり 受付の窓口に来たときはその都度呼び出されました。会社査定(スキル評価)は六段階の一番上でした。
会社が期待する業務遂行能力でいえば、経験の蓄積を要するクレーム対応は、年齢で上達こそすれ決して能力が落ちるものではありません。

〔2〕 郵便事業会社の構造的問題と病理

平成22年、郵便事業会社は監督官庁である総務省から「業務改善命令」をうけました。小包である「ゆうパック」が滞留し、約束どおりに配達できない失態を招きました。しかも失態はこれにおさまらず、本社の経営陣がマスコミに「現場に問題があった」と事実でない釈明をしたのです。現場で悪戦苦闘した現場のスタッフは怒りました。結果本社にも問題があったと認めました。コールセンターの絡みでいえばお客様から「送った魚が腐る。どうするのだ」などと苦情が当然のごとくはいりました。しかし不思議なことに会社から「顧客にこのように説明しろ」などという指示は一切なかったので、4日目に私は会社に書面で抗議しました。上司を出せという電話を受け山井担当課長につなぎましたが 電話には出ませんでした。 当事者不在の会社なのです。
失態はこれに止まらず、全国で1万3千人余のベテランスッタフを解雇した結果、たとえば私の千葉支店の隣接の船橋支店では郵便物を配りきれず、ゆうメールを廃棄したり、三六協定を超えて仕事をさせ二重帳簿で時間管理をしていることが暴露されました。
これらの事態を招くには構造的問題があります。

1.社員の評価が、何を会社にしたかといういわば業績中心主義ではなく、属性主義というかミスを犯したか犯してないかの評価になっている点です。そのため、たとえば配達区域ごとに責任者がいますが、配達区域がわからないクレ−ムには誰も電話に出ません。触らぬ神にたたりなしの姿勢です。

2.つぎに私のつたない民間会社(外資系石油会社)での経験で言えば、他社の動向は最大の関心事でした。セールスマンは他社の価格政策や、増販政策などに変化があれば逐一報告し、当社の政策に反映したものでした。ところが郵便事業会社はどうでしょうか?目先の経費をおさえるために配達員を社員から下請けに変更するばかりで、クロネコと競争する気力すら見られません。

3.さらに特徴的なのは、何事も本社や関東支社からの指示を待つのみで、職場で問題点を話し合い新たな合意形成を図るという、会社という組織体ではかなり一般的な過程がこの会社には見られません。

私がコールセンターの仕事のあり方をめぐり問題提起したところ「注意。上司の指示に従え」と威圧的な書面が出てきました。 期間雇用社員が問題提起をするなど許せないという態度です。 以上のとおり およそ一民間会社としてその存立の基盤が脆弱で図体だけが巨大になりマーケットの要請や顧客の期待にこたえられていません。
ベテランの期間雇用社員を差別して切り捨てることを改め、職場での問題提起を尊重することが、開かれた会社としての変革のきっかけをつかむこととなると思います。
裁判所におかれては、それらを踏まえて、是非、公正な審理を期待するものであります。
以上


Created by staff01. Last modified on 2012-02-10 15:57:41 Copyright: Default

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