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LNJ Logo 韓進(ハンジン)重工業クレーン闘争 キム・ジンスク委員インタビュー
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韓国社会で広く注目された、韓進(ハンジン)重工業の大量整理解雇撤回闘争。309日間の長期にわたり、高架クレーン上の「篭城」を決行し、広く市民にアピールすることによって、勝利和解を勝ち取ったキム・ジンスク氏(民主労総プサン本部指導委員、疲労のため病院に入院中)が、レイバーネット日本報道部のインタビューに応じた。

(2011年12月4日 プサン市内の病院にて)

--- わたしたちは、85号クレーン闘争のあった場所に行ったのですが、すでにクレーンはなく、何もない状態でした。通行人や現場作業員の何人かにクレーンのあった場所について聞いたのですが、わからないという回答でした。

いままでクレーンでの闘争を何回かしましたけれども、今回の場合は309日間という長期間にわたりました。「85号クレーン」はすでに解体して、会社側は何も残らないようにしました。今回、わたしが実際に85号クレーンにあがってみたら、とても古く、40年も前につくられたもので、長期間使われたものなので、がたがた揺れるような状態のものでした。老朽化したという理由もあり、クレーンは会社側によって、完全に解体されてしまいました。


(85号クレーンがあった現場、プサン市内。すでにクレーンはない)


(同上)

--- 現在の健康状態は?

クレーンに上がって、慣れるまでに2ヶ月くらいかかりました。地面におりたときも、いつも揺れているような気持ちがしました。いまは、頭やめまいはよくなりましたけれども、長期間せまいところにいましたので、外出するときも、腰の痛みや筋肉痛がひどく、なかなか治らないような状態です。また、クレーンのうえでおかゆばかりを食べていましたので、それが原因で胃の調子もよくない状態です。ですが、命に差し支えるほどの状態ではありません。

--- 長期にわたる闘争のなかで、一番苦労したことは?

クレーンに上がって174日目、6月27日が一番つらい時期でした。日本でいう「行政代執行」(強制退去執行)というものがなされて、組合員たちがみんな引きずりおろされました。一人クレーンに残ったものとしては、心理的な孤立感が大きく、それ以外にも、水や食事など生活必需品がクレーンの上にあがってこなかったので、身体的にも心理的にもとてもつらい時期でした。あのとき、いま横にいる仲間がいろいろ支援してくださったのですが、彼女に対しても、会社側に雇われた人たち(用役)がいろいろ悪口をいったり、支援しないように妨害行為をしてきたのです。

--- クレーンの上からの支援者とのコミュニケーション(意思疎通)は?

いま(インタビュー中)、すぐ横にいる仲間が支援してくれたのですが、6月27日以降、2ヶ月くらいはとても怖かったです。電気も切られて、意思疎通が全然できなかったのです。その2ヶ月間は、本当に命が脅かされるような状況でとても大変でした。そういう状態で会社から雇われた用役者が、クレーンからわたしを無理矢理降ろそうとしたり、クレーン闘争を支える死守隊が4人くらいいたのですが、その人たちについて会社側は、脅迫状態をつくり、「特攻隊」という人たちを送り込んで降ろそうとしたのです。あのときはとても孤立感を覚えて大変な状況でした。

--- 今回の会社側との暫定合意(和解)については満足していますか?

完全な満足とはいえません。しかし、一年後には組合員が復職できるようにしましたし、勤務継続を認められるようになりました。整理解雇も撤回されましたし、会社側から2000万ウォンくらいの慰労金も受け取る事になりました。100パーセントの満足とはいえないのですが、それなりの成果はあったのではないか、と判断しています。

--- 勝利の要因は?

つらいことだけだったら、わたしも長い時間、闘うことはできなかったと思うのですけれども、157日目に第一次「希望のバス」が実行されたのです。つらい時期だったのですが、光が見えました。今回の闘いも、わたし一人の闘いではなく、組合員と「希望のバス」の人たち、またツィッター(Twitter)を通して、労組に属さない多くの市民の人たちが支援してくれました。そういう人たちと一緒に闘ったこと、みんなで一緒に闘った闘争だったのです。そのことを通し、感動も受けましたし、それこそまさに「奇跡」だったといえるのではないか、と、思っています。

2003年、クレーンにあがった労働委員長が死亡し、その一週間あとにまた、もう一人の友人がクレーンの下でまた死亡しました。そういうことがあり、「85号クレーン」というのはとても象徴的なものになりました。多くの人が心配し、今度はこういう悲しいことが起こらないようにしようという意識が高まりました。ある意味では、わたしのおかれた条件というのは実は恵まれていた、といえるかもしれません。手を尽くしていろいろなよい方法を探し、今度のような結果になったと思います。わたしも、30年くらい組合活動をして来たのですが、今回ほど、支援者との一体感を感じたことはなかったです。光州(カンジュ)という、韓国の都市からもたくさんの人たちが来て、野宿しながらわたしを支援してくれました。

--- 日本でも「希望のバス」についての映画が上映され、関心が高まっています。

「希望のバス」についての映画をつくったオ・ソヨン監督もこの病院に来られました。日本の大阪からも、なかまユニオンのひとたちが第4次「希望のバス」にのってこられ、また、つい一週間前にもこの病院に来られました。実は、第6次希望バスを出す予定でした。そのため飛行機もとっていたのです。その前に解決し、こなくてもよい状況になったのです。

--- クレーンから降りて、今後したいことは?

クレーンを降りたら、一週間以内には回復して、自由の身になってあちこち歩き回りたいと思っていたのですけれども、実は、それが無理で、いまは自由に歩けない状態ですので、今年中に何かをやろうというのは無理だと思います。来年からは、いままでやってきたように、様々な労働者に会ったり、現場を訪ねたり、いままでやってきたことを続けてやりたいと思っています。

実際のところ、健康状態がまだ回復していないし、歩けるぐらいの状態ではないのです。韓国では、1997年の「IMF経済危機」のとき、労働者の状況は悪くなり、そのとき整理解雇を多数受け、正規社員より非正規社員の人々がすごく増えるようになりました。その中で、闘っても勝ったことはあまりなかったですし、労働者たちだけが犠牲を強要されるという状況だったのです。あのときは、まだ、労働者たちも当たり前のようにそれを受け入れる空気もありましたが、今回、韓進(ハンジン)重工業の場合は、会社は黒字を出しているにも関わらず、役員たちが自分たちのみ利益をもっていくという状況に対して、わたしたちはたいへん腹立たしい思いをもっていました。社会的な雰囲気も、一方的に労働者に犠牲を強いるのはよくないという空気もありました。

--- 日本の場合、80年代以降、真に労働者の権利のためにたたかう労働組合は少数派になってしまい、そのため、非正規や女性、若者、個人加盟ユニオンなど、既存の労働組合とは違う形で、新しい労働運動が起こるようになりました。苦しい状況のなか闘っている日本の労働者や労働組合に対するメッセージをお願いします。

韓国の場合は、非正規労働の問題についても、日本の法律を学ぶという側面があり、日本の影響をとても強く受けていると思います。労働の問題も、資本側の問題も含めて、強く日本から影響を受けていると思います。日本のみなさんも、ぜひがんばって闘っていただければ、と思います。つい最近でも、ニューヨークのウォール街で「占拠運動」が起こっていますけれども、一国内だけで闘うのではなく、労働者の闘争側もグローバル化して、みんなと一緒に闘わなければ、資本のグローバリゼーションの壁を超える事はできないのではないか、と思っています。今回の韓進(ハンジン)重工業での闘争も、実はフィリピンに工場を建てようとする計画があり、そのような理由から、整理解雇という問題が起こったのです。労働問題は、一国だけの問題ではなく、実にグローバル化していますので、みんなと一緒に闘っていかなくては、という考えを持つにいたりました。また、労働運動は、いまはまだ、日本も苦しい状況もあると思いますが、みなさんもぜひ自信を持って闘っていただければ、と思います。例えば、今度も韓国で韓米FTAの問題が起こり、世論調査をしてみますと、はじめは半々という結果がでたのですが、つい最近聞いた情報によれば、反対の世論がすごく大きくなり、それは、人々が生活の苦しみというものを肌で感じている、ということです。日本の労働運動に関わっている方々は、本当にいまこそがんばって、また大衆に対する信頼をもって闘っていってほしい、と思います。

--- 今日はおつかれのところ、大変ありがとうございました。日本に闘争のことと、メッセージを伝えたいと思います。

聞き手&写真:木村ジョウ(レイバーネット日本報道部ライター)、通訳:パク・ジョンイ、ビデオ撮影:NDS 金稔万


Created by vein2. Last modified on 2011-12-26 19:45:59 Copyright: Default

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