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LNJ Logo 原子力の終焉か人類の終焉か、その岐路に立っている(天笠啓祐)
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投稿者 : 杉並区 工藤

日本の反核・原水爆禁止運動の発祥の地が、私の住んでいる杉並であったということは、私の祖母や両親からよく聞いていました。
福島原発事故が未曾有の災害となって、放射能が放出されています。
大変、憂慮しています。
福島原発事故についての天笠啓祐さんのとても貴重な論説がありますので、ご紹介します。

http://www.keshiba-shinjo.net/content/view/324/60/

http://toshoshimbun.jp/books_newspaper/week_description.php?shinbunno=3008
<http://toshoshimbun.jp/books_newspaper/week_description.php?shinbunno=3008&
syosekino=3621> &syosekino=3621


紹介:福島原発事故に関する情報と論説/人災の核惨事 天笠啓祐(市民バイオテクノロジー情報室代表)


緊急寄稿/東日本大震災と福島第一原発事故をめぐって


人災の核惨事
原子力の終焉か人類の終焉か、その岐路に立っている

天笠啓祐

原子力の歴史は、事故の歴史である

3月11日、宮城県沖を震源として発生した巨大地震と津波により、岩手県、宮城県、
福島県を中心に多くの都県で空前の被害が発生した。その自然災害が福島第一原発の
コントロールの要である電気系統を破壊し、日本で初めてとなる大規模な避難をとも
なう核惨事をもたらした。事態はまだ、最悪の事態を回避できるか否か瀬戸際の状態
であり、現場では必死の作業が続いている。

事故は原子炉4基で同時に起きるという空前の規模となり、そのすべてで燃料棒が大
きく破損し、大量の放射性物質を環境中に放出し続けている。まさに「福島の核惨
事」と表現し得る事態となった。

この核惨事は、過去の原発の事故が警告し続けてきたことを生かさなかった、起きる
べくして起きた事故といえる。電力会社は「温暖化対策」の名のもとに原発建設にま
い進しただけでなく、「オール電化」を推進して電力需要の拡大を図り、政府がそれ
を後押しすることで、原発に依存する社会を作ってきた。その意味では、政府や電力
会社が招いた人災である。原発の歴史は、広島・長崎に投下された原爆開発から始
まった。それとともに事故の歴史も始まった。その被爆国・日本で大規模な核惨事が
起きたことに言葉もない。

原子力の歴史は、事故の歴史である。繰り返される事故こそ、原子力がもつ問題点を
浮かび上がらせてきた。原発や原子力にかかわる施設は、放射能という生命と相いれ
ない物質を抱えるため「絶対的な安全」が求められてきた。そのため、間違っても事
故が起きないように設計されているはずだった。しかし、「多重防護」といわれる、
何重にも施した安全性の仕組みをかいくぐって、事故は起き続けてきた。今回も同様
である。その要因の一つが、安全よりも経済を優先する体質である。

1999年9月30日に起きたJCO事故では、日常的にバケツを用いてウランを大量に沈殿槽
に入れることによって、効率アップをはかっていた。リストラによって大幅な人員削
減が行なわれており、それがずさんな管理につながっていたことが、事故の背景に
あった。

1988年1月13日、福島第一原発6号機で火災事故が発生した。火災は、発電用タービン
建屋の空調機室で起き、40分間燃えつづけた。タービン建屋と原子炉とは隣り合わせ
である。一次冷却水が両者を結びつけている。にもかかわらず、火災がつづき、消火
活動が行われている間も、原子炉は休まず運転されつづけたのである。安全よりも運
転の継続が優先された。この積み重ねが、今回の核惨事を招いたといえる。

電力会社は事故のたびに、隠ぺい、ねつ造、改ざんを繰り返してきた。今回もテレビ
等で発表される内容はすべて政府や東電によってコントロールされ、災害規模を小さ
く見せることに腐心していることから、市民の間でも疑問が広がった。とくにニュー
ヨーク・タイムズなど外国のジャーナリズムは、日本政府への不信をあらわにしてい
る。

事故が起きる前には、かならず予兆がある。今回も4年前に起きた柏崎原発事故の教
訓が生かされなかった。2007年7月16日、世界最大規模をもつ柏崎原発を、至近距離
で中越沖地震が直撃した。地震直後、稼働中のすべての原発が自動停止した。しかし
直後に、 3号機に隣接する変圧器で火災が発生し、一面黒煙がたなびく異様な状態と
なった。この火災に対して、自動消火システムが機能しなかった。しかも消火栓は不
備であり、化学消防車も配備されていなかったため、消火活動は遅々として進まな
かった。原発敷地内には地割れが起き、道路が波打ち、消火活動などに大きな支障が
生じた。地震では通常の事故対策ができなくなることを示した事故だった。また、す
べての原発の燃料貯蔵プールから冷却水が飛び散り、海を汚染していた。燃料貯蔵
プールでの冷却水対策が必要であることを示した事故でもあった。これらのことが今
回、事前に生かされることはなかった。

安全設計の要に位置するのが電気系統である。その電気系統が役に立たなかったの
が、1979年3月28日に発生したスリーマイル島原発事故である。事故が起きた時、ア
ラームはけたたましく鳴りつづけ、ズラッと並んだ運転台のアラーム・ランプは、ま
るでクリスマスツリーのように点滅し、何が起きたか分からない状況だった。コン
ピュータが、事故発生後1時間後に打ち出した情報は、実に事故後14分後の情報だっ
た。46分の遅れは決定的だった。しかも「?」や嘘の情報も多数送り出したため、オ
ペレーターは情報との対応に振り回され、結果的に事故を大きくしたのである。今回
の事故でも、地震や津波により電気系統が使えない状況に陥り、多重防護が意味を
失った。電気系統は原発のアキレス腱であり、何が起きても守られていなければいけ
ないところだった。

終わらせるのが難しい原子力事故。チェルノブイリ原発事故では、消防隊の文字通り
死をかけた必死の活動で、やっと火を消すことができた。JCO事故も、企業戦士が突
撃隊をくみ、間一髪最悪の事態を免れている。今回も、現場の作業員、消防隊、自衛
隊など、多くの犠牲の上に最悪の事態になることだけは避けようと努力し続けてい
る。事故は、最後には多くの人に犠牲を求めることになる。

これからは、食品や飲料水を汚染して、被害は全国化する。いま、原子力を終焉させ
るのか、人類の終焉を手をこまねいてみているのか、その岐路に立っているといえ
る。

(市民バイオテクノロジー情報室代表)

(図書新聞第3008号、2011年4月2日)




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