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LNJ Logo 「TPPでは生きられない!座談会」報告〜自由貿易反対は「生存権かけた闘い」
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黒鉄好です。

遅くなってしまいましたが、去る2月26日、明治大学リバティータワー内にて行われた「TPPでは生きられない!座談会」(主催:TPPに反対する人々の運動)に参加しましたので、報告します。

集会は13時開始、17時終了。私は諸事情で途中、14時から16時までの2時間のみの参加でしたが、それでも会場の熱気はじゅうぶん伝わってきました。ざっと数えたところ、参加者は400人程度はいたと思います。通路まで人があふれていました。

すでに、最初のプログラムである中野剛志・京都大学助教の話は終わっていたので報告はできませんが、中野氏は現役の経産官僚で、京都大学へは出向扱いになっています。今や経済界のご用聞きと堕した経産省の中で、TPPに反対している異色の官僚です。昨年12月16日には、自民党「環太平洋経済連携協定(TPP)参加の即時撤回を求める会」の会合に出席、「TPP参加国で日本の輸出先になり得るのは米国市場だけ」「仮に参加しても、米国がドル安に誘導すれば日本の輸出競争力が相殺され、輸出は増えない」「中国、韓国が入らないTPPは事実上、日米の自由貿易協定(FTA)であり、アジア太平洋地域の貿易の基本ルールにはならない」「TPPに参加しても日本の輸出は増えない。外交、防衛の観点から、農業を差し出すようなものだ」「交渉参加国に日本と利害が一致する国がないため、有利な交渉は絶対にできない」などとしてTPP反対を訴えてきました。この日の座談会でも、こうした観点からの発言だったものと想像しています。発言を聞いた方からご報告いただけるとよいと思います。

韓国からの特別報告では、韓国全国農民会総連盟政策局長の郭吉子さんが、TPPほど極端ではないものの、やはり自由貿易協定のひとつである韓米FTAに反対する闘いを紹介しました。韓米FTAは、2007年に韓米両政府が署名しながら、米国産牛肉の輸入再開を米国が韓国に強硬に求めたことから、「BSE牛肉の輸入強要だ」として韓国内で反対論が噴出し、今も批准に至っていません。2008年には、高校生を中心に若者たちが「BSE牛肉の輸入反対」を訴えてキャンドルデモなどの反対闘争を行ったことをご記憶の方も多いと思います。

「韓国ではTPPはまだ問題になっていないが、極端な輸出至上主義政策が採られている。韓国政府が進めているのは無差別な自由化であり、米国式新自由主義の受け入れ、例外なき自由化に特徴がある。総じて公共サービスを解体して企業の利益を図るものである」と、郭さんは韓国政府の新自由主義的貿易自由化政策を批判。「韓米FTA交渉で韓国は米国からの一方的な要求を受け入れた。韓国からの提訴を制限する条項を含むなど不平等な内容になっている。例外品目は最小限とされ、それ以外はすべて関税が撤廃になる。協定が発効すれば農業そのものが崩壊するだろう」と、FTA協定の問題を指摘しました。

「韓国では、農民が農業をやめて就職しようとしても難しいが、政府はそうした農民の実態を調べてもいない。そうした農民の就職難は連鎖被害と呼ばれている」と政府の無策を指摘。「韓国の農業生産額は40兆ウォンだが、韓米FTAによる自由化は2兆ウォンの損失を与える。貿易自由化は大人と小学生に競争させて、小学生に勝てというようなものだ」と郭さんは韓米FTAを批判しました。

郭さんの話は、FTAの問題点から、次第に農業を巡る国際情勢と反FTA闘争に移りました。

「全世界が食糧危機を迎えようとしている。これから食糧を巡る戦争が各地で発生するだろう。それは生存を脅かすものだ。食糧安保が危機に陥れば、被害を受けるのは庶民である」「1994年のGATT・ウルグアイラウンド農業合意で多くの農民が農村を離れた。1980年代からWTO反対運動を闘う中で全国農民会総連盟の組織は生まれた。WTOの本質が明らかになるにつれて反対闘争がつくり出された。韓米FTA反対闘争では、1年の3分の1は農民が地方からソウルに集まっている。FTAに賛成する政治家への落選運動も行う」。

そして、興味深かったのがこの話。「FTAは韓国の映画産業にも大きな打撃を与えるということで、映画界と協力して反FTAの映像を制作した。政府から圧力がかかり、音声が流せなくなったが、それでも画像だけは何とか放映した」

FTAで映画産業が打撃を受けるというのはわかりにくい話なので、もう少し背景を説明してほしかったのですが、郭さんからこれ以上の背景説明はありませんでした。ただ、日本の市民運動がようやく取り組み始めた映像による情報発信を、韓国では先行して実施していたことを知りました。

まとめにあたり、郭さんは「自由貿易は農民の生産する権利を奪い、自己決定権を剥奪するもの。新自由主義で生産基盤が崩壊し、貧困・飢餓が拡大している。国際連帯で闘いたい」と述べました。そして、最後にこう述べました。「自由貿易反対は、生存権をかけた闘いだ」と。

何でもかんでも自由競争とマネーゲームという名の投機に委ねるギャンブル資本主義、カジノ資本主義が人間の生存する基盤そのものを大きく崩壊に追い込んでいる実態がよくわかる報告だったと思います。人間の生命さえもてあそぶ投機マネーに、今ほど国際的な規制が求められているときはないと思います。

この他は、集会参加者で発言したい人が事務局に事前登録して順に発言するリレートーク方式で進みました。発言した人は農業者が多かったのですが、飲食店経営者などの姿もありました。印象に残った発言をいくつかご紹介します。

・産業社会の中でみんな苦しんでおり、経済成長至上主義という社会のあり方がそもそもおかしい。グローバリゼーションの対極にあるローカリゼーションにしか未来はない。この会場には若者の姿が少ないが、なぜ若者がこれほど苦しまなければならないのか、若者にこそ知ってほしい。(東京・オーガニック料理店店主)

・日本がTPPに参加すれば、BSEまみれの牛肉、ポストハーベスト農産物がどんどん入ってくる。遺伝子組み換え作物を「組み替え」と表示する当たり前のやり方が貿易障壁であり、不当だとするアメリカ基準に合わせなければならなくなる。もちろん消費者も反対だ。連合はTPPに賛成だが、食の安全の立場からフード連合は反対している。(日本消費者連盟事務局長)

・日本だけが反対しても限界がある。アジアの人々とどうつながるかが大事。(農業者)

・酪農家は拘束時間も長く、自分の仕事で手一杯。TPPに反対したくても闘う時間もない人がたくさんいる。(酪農家)

・最近は学生の意識がどんどん変わってきている。エネルギーや環境の問題になると目を輝かせる学生が多い。(東京農業大学教授)

・デモは民衆から主張を発信する場であり、政治家は黙って聞け。日本を動かすのは普通の国民であるべきだ。(農業者)

・鳥インフルエンザが恐ろしい勢いで拡大した背景には大規模化があり、大規模化の背景には「国際競争力」がある。このままでは農業どころか人類も滅亡してしまう。(養鶏農家)

私は時間の都合により16時で退席しましたが、集会は17時まで。その後、参加者は経団連までキャンドルデモをしました。なお、黒鉄好のTPPに対する基本的考え方については、「地域と労働運動」誌125号掲載の「日本社会を滅亡に導くTPP」をご覧ください(http://www.geocities.jp/aichi200410/110225tpp.html に掲載しています)。

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黒鉄 好 aichi200410@yahoo.co.jp

首都圏なかまユニオンサイト
http://www3.ocn.ne.jp/~nakama06/

安全問題研究会サイト
http://www.geocities.jp/aichi200410/

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