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LNJ Logo 明石歩道橋事故の検察審査会議決を尼崎事故へ!
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黒鉄好@安全問題研究会です。

先日取り上げた、明石歩道橋事故を巡る「起訴議決」が、尼崎事故遺族・被害者に大きな希望を与えています。しかし、その一方で、起訴議決制度は大きな問題点もはらんでいるように思います。

今日は、尼崎事故被害者を勇気づけた明石歩道橋事故を巡る起訴議決制度のその後の動きを、この制度の持つ問題点と合わせて考えます。ブログからの転載です。

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http://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/0002671024.shtml(神戸新聞)より

明石歩道橋事故遺族、「百点満点の議決」

 「再発防止につながる百点満点の議決」。市民で構成する検察審査会が、4度にわたり不起訴処分とした検察の処分を覆した。明石市の歩道橋事故で、榊(さかき)和晄(かずあき)・元明石署副署長(62)について、全国初の「起訴議決」が公表された27日、遺族らは審査会の判断を評価し、公開の法廷での原因究明に期待を寄せた。

 公表を知った遺族会代表の下村誠治さん(51)=神戸市垂水区=は早速、神戸地裁へ。正門近くの掲示板に張り出された14枚の議決要旨を見つめ、何度もうなずいた。

 事故で次男智仁ちゃん=当時(2)=を失った。会見に応じた下村さんは「事故から8年半が過ぎ、法律に助けられた形で思いを遂げることができた」と語り、検察審査会が2度「起訴すべき」と判断すれば、起訴できるようになった法改正をあらためて評価した。

 同席した弁護士は「神戸地検が重視した当日の過失だけでなく、警備計画段階までさかのぼって落ち度がなかったかを吟味している。市民の常識からすれば当たり前の判断」と語った。また、業務上過失致死傷罪の公訴時効(5年)についても「元地域官と共犯に当たるという判断で時効にはかからない。たとえ共犯かどうかを争うことになっても、それが真相解明につながる」と述べた。

 全国初の起訴議決。下村さんは被害者参加制度の活用に意欲を見せ「有罪か無罪かが問題ではない。過去の裁判で使われていない捜査資料を閲覧できる可能性もある。元副署長は、知っていることをすべて話してほしい」と強調した。

 検察審査会をめぐっては、尼崎JR脱線事故で不起訴処分となったJR西日本の歴代3社長についても審査が続く。下村さんは「大事故ではトップの人が話してくれないと遺族は納得できない。私たちが厚い扉を破った。脱線事故の遺族とも連携したい」と述べた。

(飯田 憲、若林幹夫)
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http://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/0002672403.shtml(神戸新聞)より

「歴代社長の起訴に期待」 尼崎脱線事故遺族ら

 明石歩道橋事故をめぐる検察審査会の「起訴議決」について、尼崎JR脱線事故でJR西日本の井手正敬氏(74)ら歴代3社長の起訴を神戸第1検察審査会に求めている遺族らは「当然の判断」と受け止めた。検察ではなく、市民の判断による起訴が現実となり「(井手氏らの起訴も)期待できる」との声も聞かれた。

 同審査会は、井手氏ら3人を起訴すべきかどうか再審査しており、「起訴議決」をすれば、3人は強制的に起訴される。27日には遺族らが、起訴を求める意見書を提出した。

 妻と妹を亡くした浅野弥三一さん(67)=宝塚市=は今回の起訴議決について「勇気ある判断」とあらためて評価。その上で「(議決は)過失の共犯関係を認めている。裁判など今後の展開を注視したい」と語った。

 「なぜ事故が起き、防げなかったのかを明らかにしたいというのは被害者共通の思い」と話すのは、長男を亡くした三田市の木下広史さん(51)。これまで公訴提起の権限は検察のみに委ねられており「検察が不起訴にした事件で、被害者は何もできなかった」と指摘。

 しかし今回、市民判断で初めて検察以外が公訴提起の権限を行使する。「法廷で脱線事故の真相を解明してほしい。新制度で『起訴』という結果が出た意義は大きい」と強調した。

(三島大一郎)
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明石歩道橋事故を巡る検察審査会の「起訴相当」議決が、いろいろな波紋を呼び始めた。当然ながら、尼崎事故遺族らはこの動きを歓迎している。

今回の「起訴議決」の大きな意義は、検察審査員らが単に関係者の法的責任の有無だけに着目するのではなく、事故の真相究明のために法廷の場を生かそうとする積極的な意識が見られることだ。極端な言い方をすれば、再発防止のための真相究明につながるなら無罪になっても構わないというくらいの意気込みで制度の運用を図ろうとしているように見える。このあたりが、法律論だけで事件事故を審査する検察官との違いであり、「市民感覚」の反映といえるかもしれない。いずれにしても、有罪立証の見込みが立たなければ起訴しない代わりに、起訴したからには100%有罪を目指すという、ある意味で硬直した起訴制度のあり方が大きく変わる可能性を秘めていると言えるだろう。

ただ、「市民感覚」が反映する起訴議決制度の将来に、当ブログが一定の危惧を持っていることも事実である。今回の明石歩道橋事故やJR尼崎事故のように、この制度が社会的強者(権力、大企業)に向けられている限りにおいては問題は生じないであろうが、恐れているのはこの制度が物理的、法律的防御力を持たない一般の被疑者に向けられたときである。極端な言い方をすれば、私怨を抱いている相手を社会的に「抹殺」するために告訴を繰り返した者が、2回の起訴議決を勝ち取り、その上、法廷でも裁判員による量刑判断が行われるとなれば、起訴から判決までの全てが法律のプロ抜きで行われる「市民裁判」の体系が形作られることになりかねないと思うからだ。

もちろん、現実にはそのような極端な事態がそうそう起こるとは思えないし、起訴議決に11人の検察審査員中8人以上の賛成というきわめて高いハードルを課したのも、こうした「濫用」を戒めるためのものに違いない。しかし、その可能性は決してゼロとは言えないのであり、もしその事態が現実のものとなった場合、当ブログは起訴議決制度に対し、反対に回るであろうことをここに明らかにしておきたい。

しかし、ともかくも今は、検察による公訴権の独占に阻まれ、硬直的で画一的な運用が行われてきた結果、有罪の確証が得られない事件は法廷での真相解明の機会すら得られずに来たこれまでの刑事訴訟のあり方が変わり始めたことに積極的な意義付けを与える必要があるように思う。後に続くJR尼崎事故に関し、歴代3社長の「逃げ得」を許さないためにも、明石歩道橋事故の議決を大いに生かしていかなければならない。

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黒鉄 好 aichi200410@yahoo.co.jp

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