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日本航空「会社更生法適用」に関する声明
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黒鉄好@安全問題研究会です。

遅くなりましたが、1月19日に行われた日本航空の「会社更生法」適用について、安全問題研究会が声明を発表しました。

以下のURLからも読めますが、全文を掲載します。印刷に適したPDF版をご希望の方は、安全問題研究会サイトにあります。

http://www.geocities.jp/aichi200410/100125jal-seimei.html

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日本航空の「会社更生法適用」に関する声明
〜日本航空破たんの原因は政府・財界・自民党だ〜

 経営危機が続いていた日本航空再建問題は、同社に会社更生法を適用し、「倒産」させることで政府、企業再生支援機構及び主力取引銀行との間で合意が成立した。これを受け、2010年1月19日、同社に対する会社更生法の適用が決定された。2兆3221億円の負債額は、金融機関を除けば戦後最大となる。

 当研究会の見るところ、かつて半官半民のナショナルフラッグとして日本の空に君臨した日本航空が倒産に至る過程において、歴史的転機が2回あった。ひとつはいうまでもなく、日本航空の安全への不信を呼び起こし、利用客離れを決定的にした1985年の御巣鷹へのジャンボ機墜落事故であり、もうひとつは採算性の悪い地方路線を多く抱え込むことによって経営悪化に拍車をかけることになった2002年の日本エアシステム(JAS)との経営統合である。

 日本航空の経営破たんの背景には、政府による航空行政の失敗がある。その最たるものが無駄な空港建設である。2009年末現在、日本には98の空港が存在するが、面積が日本の約22倍のオーストラリアの空港数が616、約46倍の面積を持つロシアの空港数が147であるのと比べても、日本の突出ぶりがわかる。農民の土地を暴力的に強制収用して建設された成田空港、希少生物であるオオタカの森を破壊してまで建設が強行された静岡空港などは、空港の設置それ自体を認めることができない。

 これほど多くの空港が建設された背景には、建設利権に群がった旧自民党政権と建設業界などのグローバル資本である。国土交通省は、彼らの利権を確保するため、無駄な空港建設に突き進んできた。その結果、日本航空は採算の見込めない地方空港に強制的に就航させられた。日本航空の巨大な債務は政府と財界によって作られ、押しつけられたものである。建設業界、自民党、国土交通省の責任を追及しなければならない。

 2005年、日本航空ではエンジン部品や車輪の脱落、滑走路誤進入といった運行トラブルが相次いで発生したが、このような安全の危機が進行していたさなかにも、日本航空本社では反社長派の役員らが社長退陣を要求するなどの見苦しい内紛が続いた。こうした経営陣の危機感・当事者意識の欠如が今回の日航破たんの背景にあったことは明らかである。会社更生法適用によって、現経営陣は退陣を迫られるものとみられるが、安全対策もそっちのけで権力闘争と自己保身に明け暮れた無能な経営陣の退陣は当然である。

 今回の法的整理にあたって、政府が現役社員・退職者の年金の減額を強制しようとしていることに、当研究会は強く抗議する。日本航空の破たんは、すでに明らかにしたように、建設利権に群がった建設業界と自民党、無駄な空港づくりに突き進んだ国土交通省、安全危機のさなかに権力闘争と自己保身に明け暮れた日本航空幹部らの共同責任である。労働者に責任がないなかで、政府が現役社員・退職者各3分の2以上の同意を隠れ蓑に年金減額を強行しようとしているが、退職者も含め、労働者がみずから掛金を支払ってきた企業年金の一方的減額は、国鉄分割民営化の時ですら行われなかった暴挙であり、詐欺以外の何ものでもない。

 政府・企業再生支援機構は、日本航空全社員の3割に当たる1万5000人の人員削減を強行しようとしているが、分割民営化に当たって国鉄時代から3割の人員が減らされたJR東日本では、早くも民営化翌年の1988年は東中野駅事故が起き、乗客が死亡したほか、2005年には羽越線事故が引き起こされた。JR6社のうち、人員削減率が43%と最も大きかったJR西日本では、信楽高原鉄道事故(1991年)、尼崎脱線事故(2005年)によって、すでに150人近い乗客が死亡した。政府・企業再生支援機構が日本航空で同じような人員削減を強行しようとするならば、必ずや悲劇的結末を招くであろう。

 御巣鷹事故の遺族らでつくる「8・12連絡会」が1月12日、前原誠司・国土交通相に対して提出した要望書は、「再建による合理化とリストラで安全問題が置き去りにされ、航空機事故の再発につながることを連絡会として最も心配している。安全確保に必要な人員と財源について、経営再建にあたる裁判所にも伝わる形で示していただきたい」との決意が示されている。当研究会は、政府が日本航空労働者の首切りを強行するならば、御巣鷹事故遺族と連携して最後まで闘い抜くことを表明する。

 当研究会は、御巣鷹事故25周年を迎えるに当たり、ありもしない「急減圧」があったとうそぶき、「圧力隔壁崩壊説」をでっち上げることによって真の事故原因を覆い隠した政府・国土交通省を糾弾し、事故原因の再調査を要求する。それは、日本航空に借金を押しつけて破たんさせ、労働者にその責任を転嫁することで逃げ切りを図ろうとする者たちとの闘いでもある。当研究会が、25年前、御巣鷹に散った520名の無念を忘れることはない。

  2010年1月25日
  安全問題研究会

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黒鉄 好 aichi200410@yahoo.co.jp

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