●映画「アイ・コンタクト」
聞こえないってどういうこと
あきらめないってどんなこと

昔みた日本映画「名もなく貧しく美しく」のなかで、電車と電車の窓ガラスごしに手話をしている聾夫婦のシーンがあった。二人の愛情の深さが伝わってくる名場面だった。
実は、このような聾者のためのオリンピックがあるなんて恥ずかしながら知らなかった。競技の参加資格は聴覚レベルが55デシベル以上で、競技中の補聴器は禁止されている。
このデフ(聾)リンピックの女子サッカー日本代表チームに密着し、彼女たちの生い立ちなどの証言と、彼女たちが一丸となって4カ国のチームと戦う様子を撮った中村和彦監督のドキュメンタリー「アイ・コンタクト」をみた。とてもよかった。日ごろ健聴者の世界に浸っている者にとって、両親ともどもあっけらかんと悩みや葛藤まで話(手話)してくれる聾者の人生は、新鮮な驚きの連続だった。
たとえばトップシーン。若い女性に、耳の「きこえる人の印象は?」と尋ねる。彼女は、健聴者は「顔をみて話さない」と答える。「私がみると『あまりみないで』といわれる」と。何げないこんなシーンからも教えられる。確かに健聴者同士はあまり相手の目をみない。目と目をみて話すのは愛しあう男女ぐらいだ。が、聾者にとって目をみてコミュニケーションを図ることがいかに大切か映画をみてわかった。タイトルの意味も理解できた。まさに�猝椶�物を言う�畧こΔ任△襦F辰縫汽奪�ーの場合、どんな時でも落ち込んで下なんかみていられない。常に顔を上げていなければ意思が伝わらないのだ。
映画の後半は圧巻。世界の強豪を相手に戦うさまがドキュメントされている。長身の大人にまるで子どもが挑んでいるようだ。ロシアとの試合では10対0なのに「まだまだ」と声を張り上げ、必死にボールを追いかける。悔しい。それが負け犬として慣れていた人生に喝を食らわすこととなる。さわやかで生きる勇気を与えてくれる。(木下昌明/「サンデー毎日」2010年9月12日号)
*映画「アイ・コンタクト」は9月18日から東京・ポレポレ東中野でロードショー
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Last modified on 2010-09-14 13:14:39
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